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7.セクシーなの? キュートなの?

空はとんでもない曇り。歩く道はゴミだらけで、すれ違う歩行者は軒並み絶妙に臭い。

 ポップな音楽は流れてないし、車もそんなに通っていないていうか見かけない。信号機の変わる音も聞こえなければ、楽しげな会話を誰もしていない。私たち含め。

 大きなビルはあるけれど倒壊済み。大きな建物を見かけるけれど、どれもこれもボロボロで照明はついていない。

(……なんでカレンさんはこんな所に住んでいるんだろう?)

 ここに来てまだ数日しか経っていないが、正直私が今まで見てきた中で最悪の地域だ。

 臭い、汚い、暗い、怖い、意味わかんない。兎にも角にも不快になる要素しかない。

 カレンさんが住んでいなければ全力ダッシュでさよならバイバイしているところだ。

「ねえカレンさ──」

「お、カレン! この前の続きしねえか?」

 私がカレンさんに話しかけようとすると、前から歩いてきたおっさんが邪魔をしてきた。

 さっきから三人に一人のおっさんにカレンさんは話しかけられている。私が思っているよりもカレンさんの交流関係は広いらしい。ていうかこの街、おっさんが多すぎる。

「今は無理かなー。買い物行かなきゃだから」

「じゃあまた暇な時にな!」

 下品に笑いながら通り過ぎていくおっさん。意外と臭くなかった。

「……むぅ」

「え? なんで不機嫌なの?」

「へ? いえ別に……」

 私の不満が顔に出ていたらしく、カレンさんに心配されてしまった。

 不満というか、嫉妬というか。せっかく私が話しかけようとしていたのに邪魔されて、そんでもってカレンさんはカレンさんで私よりおっさんを優先したし、なんかムカつく。

 服装はセクシーなのとキュートなのどっちが好きなのかとか、髪型は可愛い系クール系あざとい系もしくはシンプル長髪あるいはギャップ狙いのポニーテールそれともいつも通りのツインテールにしようかなとか。色々迷ってオシャレして気合い入れた私がバカみたいだ。

(髪型ポニーテールに変えたのに何の反応もしてくんないし……)

 ただのおでかけとはいえ、ただの買い物とはいえ、見ようによってはデートなのに。そんな風に意識しているのは私だけなのだろうか。

 あんな事をしておいて、私ばかりに意識させて、なんかズルい。

「あ、着いたよ」

「……なにここ?」

 カレンさんが指差す方を見ると、昔のゾンビ映画とかで見たような、ボロボロになったデパートがあった。

「デパートだよ?」

「……ひええ」

 首を傾げながら私を見るカレンさん。何でそこでちょっと可愛こぶるのか意味わかんない。

 カレンさんのあざと仕草はとりあえず置いといて、私は彼女ではなく自称デパートをもう一度見た。

 どう見ても潰れてる。数十年前に閉店してそのまま誰も管理せず放置された結果ホラースポットになった、みたいな見た目をしている。

「カレンさん。私、お化け屋敷苦手なんです」

「デパートだよ!?」

「元、を忘れてますよ?」

「ひえぇ……2回も言ったのにこの子全く認めない……!」

 空いた口が塞がらず、恐怖で引き攣っていて、ちょっと引いた目で私を見るカレンさん。

(え? 私の方が異常なのこれ?)

 でも、よく考えたら確かに、私の方がおかしいのかもしれない。

 この街に来てから見る建物は軒並みボロボロの廃墟そのもの、カレンさんの住むアパートすら七割廃墟みたいなのものだ。ならば、例え営業中の建物だろうと廃墟同然のボロボロ具合なのは当たり前なのだろう。

「よし! 行きましょうカレンさん!」

「え? なんで急に行く気満々なの?」

 頭にはてなマークを浮かべながら首を傾げ、空いた口が塞がっていないカレンさんの手を取り、私は意気揚々とデパートへと向かった。

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