27.あの子のいない朝
朝、目が覚めるとハッピーがいなかった。
カレンさんは普通に寝ている。イビキが少しうるさい。
私は布団から這い出て、背伸びをする。
「んー……!」
両手を上に上げて、身体全体を伸ばして、一気に力を抜く。
荒れた自分の布団を畳んで、ついでにハッピーの布団も畳む。
目を擦りながら、あくびをして、私は寝室を出た。
真っ直ぐに洗面所に向かう。魔法でクシを出してそれで髪をいじりながら向かう。
着いたらクシをしまって、いつも通り顔を洗う。
「……ふぅ」
スッキリした。次は歯磨きだ。
歯ブラシを魔法で出して、歯磨き粉付けて、磨いて──
終えたらコップに水を注ぎ、それを口元に持っていき、水を口に含む。
少しうるさいくらいグチュグチュ鳴らして、ぺっ。
「……ん」
それと同時に鏡を見て、髪が乱れていないか? 顔はちゃんと締まっているか? それを確認する。
「うーん……まあ、カレンさんならいつもと変わんないって思うかも」
少しむくんでいて、目にクマが出来かけていて不満だが、まあいいかな、と思う。
洗面所を出て私はリビングへ。
リビングに着いたら辺りを見渡す。いつもと変わらない、小汚いリビング。
「……全く。出かけるなら書き置きくらい置いていきなさいよね」
思わず私はため息をつく。ハッピーはいつもこうだ。急に出かけて、急に帰ってくる。それも何も言わずに。
「ココアまだ残ってたかな……」
棚を漁り、私はココアを探す。
「……まだある。やた」
謎のメーカーが作ったココアを手に取る。蓋を開けて、マグカップにテキトーな量を入れる。
お湯を沸かすために、魔法でポットを呼び出し、それに水を入れてスイッチオン。
電気がいらない魔法ポット。とても便利だ。電力が必要ない代わりに私の体力が削られるけど。
ピー、と甲高い音が鳴る。私の好きな温度のお湯が出来た合図だ。
マグカップにお湯を注ぎ、箸でぐるぐる混ぜて、ココアの完成。
「……カレンさんは何時に起こそうかな」
そう呟きながら、私はココアを一口飲んだ。




