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12.今日は何してたんですか?

「ただいま……」

 外は真っ暗夜中の午前三時四十二分十六秒。アムルとハッピーの待つ家へと私は帰ってきた。

 おそらく寝ているだろう。そう予測し、小さな声で帰宅を告げ、音が鳴らないよう静かに扉を開け中に入った。

 案の定部屋は真っ暗で、アムルの可愛らしい寝息が聞こえるほど静か。足音立てずにゆっくりと廊下を渡り、リビングへと向かう。

 ゆっくりと、ゆっくりと、ゆっくりと──

「にょわ……!?」

「はぴぃ!?」

 何か柔らかい物を踏み転びそうになる、それと同時に動物の鳴き声みたいな悲鳴が聞こえた。何かしらの生き物を踏んだらしい。

 アムルはしっかりしている子だと思うから寝室で寝ているはず。だとしたら私が踏んだのは迷い込んだ謎の生物、あるいは──

「ふわぁ……寝起きも超ハッピーな魔法少女、ハッピーただいま起きました! グーテンモルゲン! あるいはおはようございます!」

 やはり、私が踏んでしまったのは我が家のハッピー担当、魔法少女ハッピーだった。思いっきり踏まれたのにそれへの不満を一切漏らさず、相変わらずうるさく彼女は目覚めた。

「やっぱりハッピー……夜中なんだから大きな声出さないで。アムルちゃんも起きちゃうかもだし」

「了解です! アムルちゃんの睡眠は妨げません!

睡眠はハッピーへの第一歩ですので!」

「静かに叫んでる……」

 確かに静かに喋っているのに、何故かうるさく聞こえるの何故なのだろうか。

 そんなことは特に気にせず、私はハッピーを連れてリビングへと向かいはじめた。

 ハッピーと共に、足音立てずにゆっくり歩き、寝室の扉が閉まっていることを確認してから電気をつけ、その場に座り一息つく。

 何故かハッピーは私のすぐ隣に座り込み、私の真似なのか一息つきながら寄り添ってきた。

「……なんで廊下で寝てたの?」

「今日のハッピー占いで廊下で寝るとハッピー! と書かれていたので!」

「嫌な占い……」

 あまり真面目に彼女に接すると面倒なので、テキトーに相手をしながら私は片付けを始める。

 持っていた財布をそこら辺に投げ捨て、ポケットの中に入っていたゴミはゴミ箱に投げ入れ、片付け終了。

 投げたゴミはゴミ箱にうまく入らず周りに落ちているし、財布もテキトーに投げたので行方不明になったが、明日アムルがちゃんと片付けてくれるので気にしない。

「カレンさん、今日は何してたんですか?」

「私のことはどうでもいいでしょ……」

 疲れているので、ハッピーからのトークへのお誘いを断り、私は立ち上がって洗面所へと向かう。

「ねえねえカレンさん、何してたんですかー?」

「そろそろ歯磨き粉買わなきゃ……」

 歯ブラシを手に取り歯磨き粉を付ける。もうすぐて無くなりそうなので買わなきゃと呟き、私は歯を磨き始める。

「ねえねえカレンさん、何してたんですかー今日はー?」

 まずは上の歯、次は下、右奥左奥裏側。ちゃんと磨けているのか実感できないが、とりあえず丁寧に磨いている感じを出す。

「カレンさーん。話して聞かせてください! 教えてくださいよー」

 ある程度磨けたな、と思ったら口に溜まった泡を吐き出し、続いてコップを手に取り水を入れ、口内を濯ぐ。

「私はアムルちゃんとハッピーについて語ってました! アムルちゃんって本当にカレンさん好きなんですね! 私とキスしようと誘ったら断られました! カレンさんは今日何してたんですかー?」

 口から水を出し、また含み、今度はうがいをして吐き出す。ティッシュを手に取り口を拭き、使い終えたゴミはゴミ箱に。

 そのまま服を脱ぎ、浴室のドアを開けて中に入る。

「そういえば酷いんですよカレンさん。アムルちゃんとも一緒にお風呂入ろうと思ったらこれも断られたんです! 友達なんだから一緒に入ってもいいと私は思うんですけどね。ところでカレンさんは今日何をしていたんですか?」

「……当たり前のように入ってくるね」

 あえてずっと無視をしていたのに、メンタルハッピーなハッピーはめげず変わらず遠慮なく、私にしつこく話しかけてくる。

 私が浴槽にゆっくり入りお湯に浸かると、それと同時にハッピーも入ってきた。

 狭い。

「それでそれでカレンさん! 今日は──」

「話す気ないから、無駄だから、諦めな」

 無視し続けてもしつこいハッピーに私は言う。これ以上付き纏われる、同じことを聞かれるのはストレスが溜まる。

「えー……まあいいですけど! それがカレンさんのハッピーへの道、所謂ハッピーロードならば仕方がありません!」

「……聞いたこともない単語」

 一人でピーピー騒ぐハッピーを無視し、私は一旦浴槽から出る。

 風呂桶を手に取りお湯を掬って頭から被り、とりあえず一気に汗を流す。そのまま濡れた髪にシャンプーとコンディショナーを同時に手のひらに出しそれを付け、テキトーに泡立て洗う。

 ボディーソープはふわふわのアレに一旦出して泡立てし、なるべく肌を傷つけないように身体に泡をつけていく。

 ある程度洗えたと思ったら再び風呂桶でお湯を掬い、頭から一気にかぶる。ちゃんと確認はしていないけれど、とりあえず泡が全部無くなったと感じるまで被り続けた。

「雑な洗い方ですねー……そんなんじゃ徐々に傷んでいきますよ」

「別に……綺麗に見てもらいたい欲とか無いし、見せる相手もいないし、面倒くさいし」

 ハッピーの指摘に私は反論する。色々言ったが、実際は面倒くさいと言う理由だけだ。

 とりあえず泡が全部流れ落ちたと思うので、私は浴槽には入らずそのまま浴室を後にした。

 タオル入れからタオルを取り出し、水滴だけをテキトーに拭って、洗濯機に使い終えたタオルを投げ捨てる。

 そのまま下着を手に取り着用。パジャマを手に取り着衣。化粧は別にしないしお手入れもダルいからヘアバンドを今日は付けずに撤退。

「あ、私も出ますから待ってくださいよカレンさん!」

「もう寝るから無理〜」

 湿っている髪をテキトーに掻きながら、私は寝室へと向かう。

 寝室に入ると、アムルが相変わらず可愛い寝息を立てながら寝ていた。

 アムルの寝る布団の横に敷かれた布団に入り、ゆっくりと目を閉じる。

 そして、抱き枕代わりにアムルに抱きつき、寝る準備開始。

(……いい匂いするな)

 アムルの匂いを嗅ぎながら、次第に強まる睡魔に身を委ね──

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