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10.めんどくさい

「改めまして改めまして! 魔法少女ハッピーです! よろしくお願いします! これで3回目の挨拶です!」

「私は初めてなんだけど……カレンさん、誰ですかこの人」

 ニコニコ笑顔のハッピー、困惑顔のアムル、それを見る私。

 何故かカラスがうるさいお昼の時間帯。私、アムル、ハッピーの三人でテーブルを囲み、改めてハッピーに自己紹介をしてもらっていた。

「ていうか敬語? 使うキャラだと私と被ってる気がするんですけど……色も全体的に白くて、黒い私と対照的で、まるで私が悪役みたいな……」

 アムルが何かをぶつぶつ言っている。私はそれを無視して、ハッピーに問う。

「住むのは別にいいんだけど、何で私の家に……?」

 私がそれを聞いた瞬間、ハッピーは立ち上がり、私の目の前まで顔を持ってきて、大きく口を広げ──

「はい! それはかの有名なあのカレンさんなら私を助けてくれると思ったからです! 金なし家なし当てなしの私を救ってくれるのはあのカレンさんしかいないかと!」

 かなりの早口でハッピーは理由を語った。

「またあのカレンさん……ね」

 思わずため息をつく私。そんなに頼られるほど私は人間が出来ていないのに、名前ばかり有名なのは損だ。ていうか魔法少女の懐事情が悲しすぎる。

 隣に私を頼ってくれたから泊まらせてあげている魔法少女もいるし、ハッピーだけ邪険にするわけにはいかないし。

 私は何も言わず、とりあえず頷いて肯定の意を示した。

「……私の時みたいに襲わないでくださいよ? カレンさん。あれ私がカレンさん大好き人間でラブ状態だったから許されているだけで、普通にヤバいですから」

 殺意を感じるレベルで睨みつけてくるアムル。私は少し体を縮こませ、彼女の目を見てた言う。

「……わかってるって。あの時はムラつきがやばくて……」

「え!? カレンさんと黒子ちゃんってそういう関係なんですか!?」

 アムルが余計な事を言ったせいで、ハッピーが反応してしまった。

 立ち上がりながら驚いた顔で私たちを指で指すハッピー、それと同時にアムルも何故か立ち上がった。

「黒子って誰のこと!? 私にはアムル・エメ・ジェメレンレカ・ジテム・ジタドール・ヴゼムジュビアン・ラフォリアムテージュ・アドレって言う立派な名前があるんだからね!」

「長いのでアムルちゃんって呼びます!」

「それカレンさんが使ってるからダメ!」

 ギャーギャー騒ぎ始める二人。子供らしくて見てて面白いけど、正直うるさいし、しょうもない。

 とりあえず誤解は解いておかなければ、私とアムルはそういう関係ではない事を私はハッピーに伝える。

「そういう関係じゃないよアムルちゃんとは……一回だけちょっと……ね」

「その場で欲求満たすためだけに使った遊びの関係ってことですか?」

「え!? カレンさん……私との関係遊びだったんですか!?」

「ん? 今何がどうなってこうなった?」

 じっ、と私を見つめてくる二人。

 凄い目力だ。特にアムルが。ハッピーはあんま怖くない。

 私は少し恥ずかしくなってきて、思わず彼女たちの視線から顔を逸らすが、瞬時に彼女たちは私の目の前に再び現れた。

 顔を逸らす、現れる、顔を逸らす、現れる。

 どれだけ顔を逸らしてもすぐに目の前にやってくる。逃れられない、彼女たちの視線から逃れられない。

 この状況、女の子二人に遊びの関係だったのかと目で問われるこの状況。一体全体どんな回答をすれば平和に終わるのだろうか。

 思いつかない。故に私は顔を逸らし続ける、無駄だと分かっていても逸らし続ける。

 リビングを三人でぐるぐる回り始めてから数分、私が何度目かの顔逸らしをしようとすると、堪忍袋の尾が切れたのか、アムルが私の顔を両手で勢いよく挟んできた。

「答えてくださいカレンさん……答えないと今ここで! 私の身体を使って! 堕とします!」

 唾がめっちゃくっちゃ飛んでくるほど、顔を近づけて叫ぶアムル。汚い。

「無理矢理はダメだと思うよアムルンルン」

「アムルンルン!? なにそれ!?」

 ハッピーが謎あだ名でアムルを呼ぶと、アムルは私の顔を挟んだ手のひらはそのまま、視線を彼女に移し叫んだ。

「アムルちゃんは駄目って言うから、アムルンルンです!」

「ネーミングセンス皆無! 頭ハッピーなのあんた!?」

「ハッピーですから!」

(……早くおわんないかなこれ)

 叫び続けるアムル、元気よく返事しまくるハッピー。

 しょうもない、うるさい、そろそろほっぺが痛い、の地獄状態だ。

「言っておくけど私まだ賛成してないから! ハッピー女が私たちと住むのは!」

「私と住むとハッピーになれますよ!」

「現在進行形で不幸に見舞われストレスマックスなんだけど!」

「ハッピーじゃないんですか!? では私と一緒に住んで、ハッピーにさせてあげます!」

「うがああああああ!!!!!!」

 本当にいつ終わるんだろうこれ、私はそう思いながら、天井を見上げ呟いた。

「……めんどくさい」

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