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1、ちょっと、心の準備が…?

新しい話を書き始めました。先行き未決定。

 色々と世の中に事件はあるにせよ、まあまず穏やかな日常だ。僕の前の席には八木がいて、黒縁眼鏡のニキビ面を僕に向けている。で、八木が言った。

「なあ、今日、『ふれん堂』寄ってかね?」

「いいけど。なんか、目当てでもあんの?」

「あるんだよ~」

 八木の顔が必要以上に嬉しそうな顔になる。

「『美少女歌唱SWATセイレーン』のフィギュアの新シリーズが出るんだよ~。見ていきたいよな?」

「いつも思うんだけど、SWATなのに歌うのはどうなんだ?」

 僕はいつも通り、そんな他愛ないオタク話しを八木としていた。そんな昼休みに、異変は訪れた。


 昼休み中は他クラスに生徒が来るのは別におかしくはない。けど、その二人は最初からおかしかったのだ。

「――本当にこのクラスにいるの?」

「ちっさいけど反応があったんだから、多分そうだよ」

 入ってきたのは見たことのない女生徒二人だ。

 一人はポニーテールで、一人はショートカットに眼鏡。妙なのはポニーテールの方が、何かスピードガンみたいなものを見ながら歩きまわってる事だ。しかも、妙に真剣な顔で。

 二人は教室の中をぐるぐると歩き回った挙句、僕と八木の席まで来て立ち止まった。眼鏡の方が口を開く。

「どっち?」

 ポニーテールがスピードガンを、僕と八木に交互に向ける。

「こっち」

 ポニーテールの向けたスピードガンが僕の方に寄せられ、その時に最大のピピピという電子音を鳴らした。

 二人は顔を見合わせると、僕の方を見つめた。


 よく見ると、二人とも中々の美少女だ。ポニーテールの方は大きなツリ目で勝気な感じ。眼鏡の方は細い顎の端正な美人だ。

「……これ?」

 ポニーテールがあからさまに幻滅したような顔になった。眼鏡の方は、美人が故に余計に冷たく見える目つきで僕を見てる。

 な、なんだというんだ。唐突に人を捕まえて、これとは失礼じゃないか。

 ――とか思ったが、口にするほどの勇気はない僕は、ヘラヘラと笑ってみせた。

「あ、あの~……僕が何か?」

「――キミ、部活は?」

 ポニーテールが僕に訊ねた。

「僕は…特撮部ですけど…」

 答えた瞬間に、二人が怪訝な顔になる。眼鏡が口を開く。

「特撮部って……何をする部活なの?」

 その途端に、前の席にいた八木が得意げに口を開く。

「あー、特撮研究部、略して特撮部ですね。そこは特撮ヒーローを研究し、熱く語り合う部活なのですが! なんと現在は幽霊部員の二年生四人を除くと実質部員はこいつだけ、という部活ですねえ」

その答えを聞いて、ポニーテールが明らかに失望した様子で首をうなだれた。


「嘘でしょ……」

「待って、何かきっと別の長所があるのかもしれないわ。貴方、成績は?」

 眼鏡がとりなすように、次の質問を僕に向ける。

「う~んと、下から三分の一くらいのところ…かな」

 眼鏡の表情が明らかに冷たいまま固まった。何か、凄く期待を裏切ったらしいがーーそんなの僕の責任じゃない。一体、なんだってんだ。僕は二人に声を上げた。

「あの! 君たち、何なの?」

 沈黙。と、うなだれていたポニーテールが、突然顔を上げた。

「ちょっと一緒に来て!」

 そう言うなり、僕の手を取る。え、ちょっと女子と手を握るなんてーーとか思う間もなく、ポニーテールは僕の手を引っ張って歩きだした。

 凄い力でどんどん引っ張られ、僕はクラスの外に出る。


「ちょ、ちょっと! 一体、何処に連れてくの? 僕、何もしてませんけど?」

 そう言った途端、なんか嫌な想像が頭を巡った。なんか、この子たちが不良グループで、この子たちの妹分に僕が手を出したとか勘違いされて、ヤクザまがいの兄貴分が僕を探してるとか。

「――いやいやいや、僕はこう見えても、見たまんまのごく普通の平凡なオタクですけど? 女の子と喋ったりとか、クラスの仕事の必要事項でもない限りしませんけど!」

「マジ、さいてー」

 口ではそう言いながらも、ポニーテールは僕の手を強く握ったまま離さない。ぐんぐん引っ張った挙句、ポニーテールは目的地に僕を連れ込もうとした。

「ほ、保健室?」


 え、こんな昼間から? 美少女二人に、この後、僕は何されるの? ちょっと、心の準備が……。と、妙な妄想が駆け巡りかけたが、そこは慌てて理性を取り戻した。セーフ。

 と、保健室の中には、保険医の先生がいた。

白川博子先生。白衣を着て丸眼鏡をかけた、ブラウンのストレート髪をロングにした美人だ。黒のミニスカートから、長い脚が伸びていてスタイルがよく、いつも男子生徒の視線の的になっている。僕も実は隠れファンだ。

「ちょっと、先生!」

 まだ手を握ったまま、ポニーテールが白川先生に向かって声を上げた。


「あら、どうしたの?」

「スキャナーが探し出したのが、こいつなんだよ!」

「あら、そうなの」

 白川先生はちょっと驚いた顔を見せると、席を立って僕の方に近寄ってきた。その美しい顔を近づけると、僕をしげしげと見る。

「君、一年生?」

「あ……1年C組、桃井新平です」

 ようやく手を放された右手で、僕は頭をかきながら自己紹介した。そんなに見つめられると、赤くなっちゃう。

「ねえ、このコじゃダメでしょ」

 ポニーテールが腰に手を当てて、不機嫌な声を出す。僕は、そんなに悪しざまに言われなきゃいけない立場なのか?


「このコ、なんか特撮部とかいう部なんだよ? 細くてオタクっぽくて、いかにも運動神経なさそうじゃん。ムリだよ」

「けどぉ、よく見たら結構カワイイじゃない」

 白川先生が、僕を見ながら笑顔で言う。そうなんです。結構、可愛いんです。昔からよく言われます。

「先生、この際、容姿は関係ないんじゃ? 大事なのは戦えるかどうかですし」

 眼鏡の子が冷静にツッコミを入れる。そうそう、容姿は関係ないーーって、戦えるって何だ?

 と、疑問に思った瞬間、何か遠くで工事か何かしてる音がした。しかし僕以外の三人は、険しい顔になっている。


「まさかーーアングラム? こんなタイミングで?」

「行きましょ!」

 そう言うと、ポニーテールと眼鏡が駆け出す。

 あれ? 僕はこの場合、どうすればーー

 と、思ってると、白川先生が僕の肩に手をかけた。

「じゃあ、桃井くんも行きましょうか」

 その丸眼鏡の奥の笑みを信じていいかどうか判らなかったが、右腕にあたる先生の胸の感触で、僕はそれどころではなかった。



『僕ピン』メモ

桃井新平ももいしんぺい…名浪高校一年C組。特撮オタクで特撮研究部員。父親はサラリーマンで母はパートタイマー。二歳下の妹の佳子けいこは、兄を気持ち悪がっている。


白川博子…名浪高校の保険医。


八木直行…一年C組。新平の友人。美少女アニメ、美少女ゲーム、美少女漫画のオタク。悪い奴ではない。


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