プロローグ
お前は後悔する。
下に見るような言葉があいつが最後に言った言葉だった。
無性に腹が立ち口先から言葉が出る。お前がしてきたこと以上に最悪なことなんてある筈がねえ。
私は自由だ。そして息詰まるようなカスを抜けた外の世界もまた自由なんだ。
そう思っていたこともあった。
確かに自由だった。他者の心に土足で踏み込み存在を踏みにじる自由がな。
この世はあいつ同様にクソだった。
無責任な言葉が雨のように降り注ぎ、軽率な暴力が遊びのように始まる。
何がお前をそう言わせる。罰が当たると思わないのか。
まあ、無いから言っているんだろうけどよ。救いようのない愚かな奴らだ。
だが本にあるような内容を鵜呑みにした私もまた同類なのかもしれない。
「」
ぽつんと一言呟く。身体は血に塗れ白と青の装束を無造作に汚していた。
星見は両手に掴んでいた頭部を地面に下ろす。放された頭部は力なく地に伏せ指1つ動かなかった。
一息ついた後ある方向に目を向ける。幾つもの死体の中で怯えと殺意に満ちた顔が二つあった。
二人は地面に座り込む一人はナイフをこちらに向け一人はもう一人の袖を掴み身を隠していた。
「来るなっ汚い魔人めっ!!」
ナイフを持った男が凄む。ナイフを持った手は僅かながらに震えていた。
「言葉を考える暇があんならそのちっぽけなナイフを振ったらどうだ。」
人差し指を下から上になぞる。すると地面から岩が棘のように生えナイフを持っていた男の頬から頭を貫き天井に突き刺さる。男はナイフを下ろし人形のように全身の力が抜け落ちる。
後ろにいた女性は最初は困惑の表情を見せていたがその後悲痛な叫びをあげた。
「人間風情が。少しは言うだけの気概を見せろよ。」
星見は泣きつく人の元に近づき首を掴み上げる。顔は恐怖の表情で崩れていた。
「同程度の人間に伝え傷を舐め合え人間。私はお前らを絶対許さない。てめえらが嘲笑った些細な数秒を永遠の苦痛に変えてやる。」
そういうと投げ壁に叩きつける。女性は首を掴まれた痛みで咳き込む。
睨みつける視線が星見に向けられたが星見が軽く見つめるとすぐに目を背けた。
ふんと一息ついた後ゆっくり歩を進め外を出る。
辺りは深い闇に包まれていたが心地よい光が落ち影を描いた。
「いい空だ。」
空を見上げ星見は呟く。空は無数の星で満たされていた。
見れば見る程に壮大な景色に脳が理解に溺れる。
意識が吸い込まれ遠のく感覚を覚えた。
深呼吸をしゆっくり血に塗れた手を伸ばす。
「傲慢にいつでも照らしておくれ。星よ。その光は私の最高の癒しだ。」
伸ばした手を力強く握りしめ静かに腕を下ろす。
「それに比べ何でうちの星はこんなにもくすんでるんだろうな。」
拳を握りしめぼやく。星の輝きに魅入られているばかりに星見の目にはこの世の闇が目に映っていた。
胸中に淀みを混ぜつつ星見は闇に消えた。