表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/126

第87話 決戦が始まりました 2

「本当に大丈夫なんだよな?」

「はい。これも伊織君の治療のおかげです」


 氷の階段を上る最中、俺は自分の後に続いて走る京里を見る。

 『治癒魔法』の効果が本格的に出てきたのか、彼女の顔色は出会った時と比べるとかなり良くなっていた。


「……それと、ごめんなさい。こんなことに巻き込んでしまって」

「気にしなくていいって。俺の方から首を突っ込んだんだからさ」

「そう言ってもらえると助かります。あの、伊織くんはどうして――」


 京里が何かを言いかけたその瞬間、背後から「バキッ」と砕けるような音が聞こえる。


「おい、ウソだろ……!?」


 続いて床から聞こえる何かを叩きつけているような強烈な音。

 視線を落とすと、『氷結魔法』で凍らせた水を砕こうと枝が大暴れしていた。


「手を!」

「は、は い!」


 俺は京里の手を掴むと、最小出力の『風魔法』と跳躍で一気に氷の階段を駆け上がる。

 一方、背後では氷が割れて中から現れた枝が無数の管を伸ばしつつ俺たちに襲いかかろうとしていた。


「っ、らああああああ!」


 俺は京里を抱き寄せると、最小出力の『風魔法』を放ちながら一気に跳躍する。


 軽く数百メートルは飛んだだろうか。

 俺たちは幹の中心部にあるあの亀裂の中へ飛び込むことに成功した。


「はぁ……、はぁ……、くっそキツイな、これ……」


 一瞬視界が暗転しかけたが、何とかそれに耐えると俺は京里へと視線を向ける。


「大丈夫だったか、京里」

「あ、えっと、はい! 私は全然大丈夫です!」

「なら、良かった。それと悪い。急に抱き寄せちまって」

「い、いえ! そっちも全然気になさらなくて結構です!」


 彼女は一瞬顔を赤らめると、それを腕で隠してしまう。


 ……何だかよく分からないが、とりあえず京里は大丈夫なようだな。


「……よし」


 俺は何とか息を整えると、京里と共にあの人影を探し始める。

 とは言っても亀裂内に俺たち以外に人の姿はなし、所々にレールのようなものがあり、それらが四方八方へ伸びているということしか分からない。


 これは自分の足で歩いて探すしかなさそうだ。


「一応確認しておきたいんだが、久遠玄治がどんな戦法を使ってくると思う?」

「……あの人は爆破型の式神でのごり押しを好んでいました。ただこの状況でどんな手を打ってくるのかは正直予想できません」


 まあ、そうなるだろうな。

 なら今の俺たちが優先すべきことは万全の体制を整えるということになるだろう。


 となれば。


(『水魔法』)


 俺がそう念じると宙に緑色に染まった手のひらサイズの水の球が出現した。

 と、同時に激しい頭痛と吐き気が容赦なく俺を襲ってくる。


「ぐぅ……!?」

「伊織君!?」

「だ、大丈夫。大丈夫だから……」


 心配する京里を何とか手で制止すると、俺は覚悟を決めて目の前の緑色の水球を一息で飲み込んだ。


(『ステータス』)


―――

 


伊織修 Lv121 人間

称号【名を冠する者を撃破せし者】

HP36000/36000

MP435/975

SP680

STR190

VIT180

DEX180

AGI195

INT170


エクストラスキル スキル貸与

スキル 鑑定 万能翻訳 空間転移魔法  認識阻害魔法 アイテムボックス 氷結魔法 治癒魔法 風魔法 水魔法 追跡・探知魔法  

身体強化 身体強化(中) ディスペル マジックカウンター 感覚共有

設計 鍛冶技巧


―――


 恐らくだが『水魔法』を使った時点で、MPはほぼ底を突きかけていたはずだ。

 完全回復とまではいかなかったけど、この土壇場でそこから半分近くMPを回復できたのなら上々だろう。


(それに本当に成功するかどうかも分からない賭けみたいなもんだったしな)


 これまで散々『水魔法』を使ってきて、薄々感じていたことがあった。

 このスキル、名前に『水』とあるけど実際は自由に『液体』を生成できるものなのではないのか、と。

 そう考え何度も何度も魔改造ドローンを生成して確信に至った俺は、新たな液体……【この世に存在しない液体】の生成を試みた。

 その産物が先ほどの緑色の水球、【MP回復ポーション】というわけだ。

 


「あの、今のは……?」

「あー、俺専用の万能回復薬みたいなもんかな? それより早くあの人影を見つけようぜ」

「はあ……」


 不安げに俺の顔を見る京里をそう雑に誤魔化してステータスを閉じると、改めて探索を再開する。


(スキルの方は派手なのを何発か使えるようになったけど、疲れは取れないな。これがレベルアップでのMP全回復との差か)


 ……念のために自分にも『治癒魔法』をかけようか。

 そんなことを考えていると、京里が突然前へ駆け出した。


「どうした? あの人影を見つけたのか?」

「いえ、ただ物凄い速さで移動する玉……のようなものが見えて」


 玉? そう聞き返そうした瞬間、背後から何かが大きな音を立てながらこちらに迫っていることに気づく。


(『氷結魔法』!)


 俺は即座に氷の壁を生成し、警戒しながらゆっくりと振り向く。


「京里が見たのもこれか?」

「多分これだと思います」


 確認を取った俺はその玉を見る。

 枝や根が複雑に絡み合い球状になっているように見えるそれは、どうやら内部に相当な量の赤い液体を溜め込んでいるようだ。


(『鑑定』)


――――


対象:根茎型霊力補給術式

効果:強化に必要なエネルギーを樹木内を移動しながら最深部にいる対象の人物へと送り届ける。

ルートはそれぞれ固定のものとなっている。

補足:現在の対象人物は久遠玄治。

また対象は現在『氷結魔法』で移動を止められている。


――――


 ほお、これは良いことを知れたな。

 この『鑑定』結果ならあれをこうしていけば……。


「何か分かりましたか?」

「まあ色々とね。ところで京里、ジェットコースターは得意か?」

「はい?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ