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第119話 妹に紹介することになりました 1

「すみません。あの後相談しましたが、昨日のお話はお断りさせていただくことにしました」


 翌朝、学校に登校した俺は早速輿水先生の下へ行きアリシア捕縛への協力を断った。


「……そうですか、それは残念です」


 場所に異能やオカルトとは無関係な人間が多い教員室を選んだおかげか、輿水先生は大人しく引き下がってくれる。


「それでは失礼します」

「はい。もしまた考えが変わったようでしたら遠慮せず話してください」

「……考えておきます」


 そう言って一礼してから職員室を出た俺は大きくため息をつく。

 京里に余計な負担をかけさせたくないのと自分のみにヘイトが向くようにするため、京里に「任せておけ」とメッセージを送ってああして報告に行ったわけだがこれはこれで堪えるな……。


「あれ、修じゃん。職員室にいるなんて珍しい。なんか悪いことでもしたの?」

「してねーよ。というかお前こそ叱られに来たんじゃねーのか?」

「違いますー。喉渇いたからジュース買いに来ただけですー」


 そう言って廉太郎は缶コーラを俺に見せつけると、早速フタを開けて飲み始めた。


「なるほど。叱られるようなことはまだバレてないんだな」

「クソ、全然信用してない」

「それよりもうすぐHR始まるぞ。教室に戻ろうぜ」

「へいへい」


 そう言って俺と廉太郎は他愛のない雑談をしながら教室へ向かおうとする。

 と、その時。


「あれ。あんな先生、この学校にいたっけ?」

「ん、どした?」

「ほら、あそこ。うちの学校にあんな先生いなかったでしょ?」


 廉太郎はコーラを飲むのを止めて、職員室前で学年主任と談笑しているスーツ姿の男女数名を指差す。

 一瞬教育実習生かと思ったが、何人かはこの学校の学年主任よりも年上っぽいのでこの俺の考えは外れているのだろう。

 そうなるとあの人たちは一体……。


「あ、そっか。社会科見学で一緒に来る中学の先生か」


 そこで廉太郎は納得したように頷く。


「ん? 何で社会科見学に中学の先生が?」

「修。昨日の先生の話、覚えてないの? 今年は■■中学の2年生と合同で社会科見学をするって先生が言ってたじゃん」


 廉太郎に言われて俺はようやく思い出す。

 ああ、そうだ。今年は偶然にもうちの学校と■■中学の見学先が被って何やかんやあって合同で見学をさせることになったんだっけ。

 確か名目上は「高校生に責任感を持たせ、中学生には将来のことについてより深く考えてもらうため」だったか。

 まあその場で適当に決めたことなんだろうけれど。


「集団行動させられるだけでも面倒なのに、中学生の面倒まで見なくちゃならないのか……」

「そうだ、おれ当日風邪引いて休むかもしれないからその時は頑張ってくれよ」

「おい。うちの班はただでさえアリシアがいなくて1人1人の負担がやべえんだから当日絶対に休むんじゃないぞ」

「わ、わかった、わかったって!」


 俺は堂々とサボり宣言をした廉太郎の両肩を掴み、絶対に逃がさないと若干の圧をかけながらそう告げる。

 廉太郎は冷や汗をかきながらサボらないことを宣言したのでこちらも大人しく引き下がった。


(……にしても■■中学の2年生――佳那たちと学校の行事で一緒になるのか。これ、何か仕掛けでもあるんじゃないか?)


 偶々見学先が同じになり、折角だからと合同での見学にしようなんて展開、普通起こるだろうか? もしかしたら今回の件は輿水先生、ひいてはアリシアたちが所属していた組織が何らかの狙いがあってこうなるように仕向けたのではないかと思わず勘ぐってしまう。

 ……ひとまず警戒しておくに越したことはないか。


「おーい、突然立ち止まってボーッとしてどうした?」

「いや。早く家に帰ってのんびりしたいなと思っただけだよ」


 俺は廉太郎に適当に返事をすると、改めて教室に向かって歩き出した。


◇◇◇


「改めてとはなりますが、来週水曜日の社会科見学は■■中学と合同で○○県立大学の海洋調査船に乗船させてもらい、設備などを見学させてもらうことになっています。全員、将来後輩になる中学生の見本となるよう心掛けてください。それでは各班に分かれて作業を開始してください」


 社会科見学に向けた午後のLHRで輿水先生は俺たちを見回してそう語るとプリントを配り始める。

 今日のLHRはルートマップの作成や書き取りなどの班行動での役割を決めることが目的だ。

 しかしその前に俺たちの班はしなくてはならないことがある。


「……あー、アリシアの代わりの班長、誰かやりたい人いる?」


 俺は意を決してそう口にすると京里以外全員一斉にこちらから目を逸らす。

 そんな班のメンバーの反応を見て、俺は「まあ、そうなるだろうな」と思いながら視線をプリントに向けた。

 今回の合同社会科見学で班長は中学生たちの引率もすることになっている。

 向こうの先生も目を光らせてはいるだろうが、それでも面倒な仕事が加わるということは変わらない。実際俺も班長なんか絶対にやりたくないし。

 アリシアならその辺について上手いことやってくれたのだろうが、いない者を頼っても仕方がないか。

 

「……林間学校の時のようにくじ引きで決めるのはどうだ?」


 と、そこで小林がそう提案してきた。

 確かに完全に運に任せるというのもありかもしれない、しれないが……。


「でも小林くん、今回の班長の仕事は林間学校と違ってやることが多いし責任もあるから選ぶならちゃんと決めた方がいいんじゃ……」

「む、それもそうか……」


 上島さんがそう言うと小林は押し黙ってしまう。

 確かにこれが自分たちだけならくじ引きで適当に役割を決めてしまってもいいのだろうが、完全初対面の中学生の面倒も見なくてはならないとなるとちゃんと決めるべきだ。

 

「そうなるとこの4人の中から全員をまとめられる者を班長にしなくてはならないというわけだが」

「あれ? ナチュラルにおれのこと省かれてない?」

「……お前に誰かの面倒を見ることなんてできないだろ」

「うん、他人の世話とか死んでもしないけど」


 小林の問いかけに廉太郎はあっけらかんと答えて周囲を呆れさせる。

 廉太郎が班長は論外として、人をまとめるカリスマを持っていて班長に相応しい人間と言ったら……。


「あの、私がやりましょうか?」

「みゃーちゃん、いいの? 色々と大変そうだけど……」

「大丈夫。こういうのは慣れてるから」


◇◇◇


「……」


◇◇◇


 手を上げた京里に上島さんは心配そうに声をかけるが、彼女は自信満々にそう返す。

 事実、京里は本家のあの老人たち相手に言い返したりと度胸もあるし、人間的魅力があり、クラスメイトから慕われたりとカリスマ性も持っている。そんな彼女が班長になればトラブルなく社会科見学を終えられるだろう。問題は京里に負担をかけてしまうということだが、彼女が大丈夫だと言うならここは任せてしまっても――。


「え? 修が班長やった方がよくない? 今回いっしょに回る中学生に修の妹さんがいるし」


 と、そこで意外な人物が京里を班長にすることに異を唱える。

 問題の発言主――浅間廉太郎はいつものようにとらえどころのない笑みを浮かべながら配られたプリントを俺たちに見せながらある部分を指差す。

 そこにはどういうわけかそれまで誰も気づいていなかった一緒に回る中学の班と生徒の名前が羅列されていて、俺たちの班と一緒に船を回る班の名簿には『伊織佳那』としっかりと明記されていたのだった。


 いや、本当に何で気づかなかった?

『クラスメイトは異世界で勇者になったけど、俺だけ現代日本に置き去りにされました』のweb連載がニコニコ漫画様とカドコミ(コミックウォーカー)様にてスタートしました。

ぜひご一読ください。


https://manga.nicovideo.jp/watch/mg851288

https://comic-walker.com/detail/KC_005821_S/episodes/KC_0058210000200011_E

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