令息との会話
うーん、小説書くのって難しいね!
あとタイトルに悩んでるよ!今のタイトルちょっと気に食わないよ!
「…王都からこんな遠くまで来てくれたところすまね、申し訳ないが、お、私には婚約者は必要ないんだ。あなたも望んだ婚約じゃねえ…ではないだろう。だからどうか、こんにゃ、婚約破棄をしてくれ」
…聞き間違えたか?とてつもなく噛みまくっている中に、婚約破棄という言葉が聞こえた気が。
ニコニコと反応せずにいると、令息がもう一度口を開いた。
「頼む、婚約破棄してくれ」
「は?ふざけるなよ?」
気づけば、そう口にしていた。
「え、いや、あのっ、えっ???」
(き、聞いてたキャラと違え……それに、この声…!)
「あ…しまっ」
(やってしまった…ムカつき過ぎたあまり、声を発してしまった…!僕としたことが、人生最大の失態!)
いやしかし、令息が違和感に気づかないようなただのアホだったならーー
「もしかして…君、」
頼む!!
信じていないけどこういうときだけ、神よ!奇跡を起こしてくれ!!
「男?」
………まあ、そうだよなーーー
結局のところ、神はいなかった。
そしてその言葉を聞いたと同時に、僕の世界は左右に揺れて暗転した。
つまるところ、エイヴェリーは体調不良と過度なストレスで倒れたのである。
………
ーー酷く喉が乾く…
目を開けると、見たことのない部屋のベッドに寝かされていた。
薄目でも、部屋に光が差し込んでいることが分かったので、倒れてから朝まで寝ていたのだと推測される。
力を入れても体が思うように動かず、目だけを動かして辺りを伺った。
部屋は一面中白とピンクに囲まれているようで、僕が寝ているベッドもフリフリのレースがあしらわれている天蓋付きのものだ。
いわゆる少女趣味の部屋といったところか。
僕が女だったとしても、果たして16歳でこの部屋に喜ぶような女子はいるのだろうか。
そして僕の服装は来た時のドレスではなく、白いネグリジェになっていた。
…男だとバレたからだろう。流石に白いズボンも履いていた。
目が覚めたはいいが動けもしないので、そのまま横になっていると、出迎えのときと同じメイドがガラスでできた吸い飲みを持って部屋に入ってきた。
この人がネグリジェに着替えさせたのだろうか。知らない奴に肌を触られるのは嫌いだが、あのドレスを着たままよりはマシだ。そう思うことにした。
メイドは、エイヴェリーの頭の下に手を入れると、頭を少し起こして水が飲みやすい状態にした。
そして口に吸い飲みを充てがうと、ゆっくりと傾け水を飲ませた。
エイヴェリーは咽せることなく、こくこくと喉を鳴らして水を飲んだ。
喉が渇いているときの水は甘露の味がするというのは、あながち間違いでもないな。
喉が潤ったエイヴェリーがそんなことを考えているとメイドが
「無事に目覚めたようで安心いたしました。お腹が空いているでしょう。今食べられる朝食をお持ち致します」
と言い残し、部屋を出ていった。
その姿を目だけで追い、覚醒し始めた頭で考える。
昔から、僕は人は嫌いだし必要ないといって専属のメイドを付き従わせてはいなかったが、こうも知らないところに1人だと、少しくらいは連れてきても良かったかもと思うな。
…別に寂しい訳ではない。親しみ慣れていないとメイドでも誰でも気まずいものは気まずいだろ。うん。
少しは体も動くようになってきたので、上体を起こしベッドの上で大人しく食事を待つ。
暫く待っていると、部屋の外から何やら話し声が聞こえてきた。かなり遠くよく聞き取れないが、先程のメイドが
「いけません、エレク様!」
と叫んだと同時に勢いよく扉が開き、ガチャガチャと盆の上の食器をぶつけながら、誰かが入ってきた。問題の令息だ。
メイドが急いで追いかけるも
「大事な話があるから、2人きりにして!説教なら後で聞く!!」
と、足で乱暴に扉を閉めた。
おいおい。両手が塞がっているとはいえ、足で閉めるとは。それでも貴族の息子か?
やはり僕の中でのこいつの印象は、バカで非常識だということが確定した。
令息は僕のベッドの横にある椅子に座ると
「…あの、体調大丈夫?」
と、おずおずと聞いてきた。
「…勢いの割には、随分とお行儀の良い質問じゃないか」
「ハハッ、大丈夫そうで安心した!」
嫌味を言ったのにもかかわらず、急に威勢が良くなったのにムカつき口を閉ざす。
そうすると、令息は持ってきたスープをスプーンで掬い、エイヴェリーの口元に持ってきた。…何やってるんだ。このバカ。
「…流石に自分で食べれる」
「あ、そっか。俺、体調不良になったことないから、どんな感じか分かんないんだ。ごめん」
…やっぱりバカなんだな、こいつ。
それにしても、とスープを口に運びながら令息を観察する。初対面ではあまり顔を見ていなかったが
ふわふわと癖のある紫苑色の髪に、丸くふっくらとしている薔薇色の頬。ガラス玉の様に大きな瞳は、星空を溶かし込んだ様な見事な瑠璃色である。声は鈴を鳴らしたように高く可憐だ。
何より、獣のような瞳孔が印象的だ。
可愛らしいといえるであろう令息の姿は、美少年というよりかは美少女の方がしっくりくる。
男なのに可愛く、女みたいだなんて、部類は違うが僕みたいなものだろうか。
そうやって観察していると、暫く沈黙が続いた。
それに耐えきれなかったのか、令息が口を開いた。
「そういえば、色々あって自己紹介してなかったか。俺の名前はエレク、エレク・ヘーゼル」
「…エイヴェリー・ホワイトだ」
「うん、名前と噂は耳にした!すごい美人で天才だって。噂通り、いや噂以上だ!」
…居心地が悪い。
返事をせずにスープを食べていると、エレクがまた口を開いた。
「でも、なんだってお前さん、女の子なんて嘘ついてたん」
「ブフッーーーー!おまっ、お、お前…!!」
「あっー!食べてるときにごめんな!でも、どうしても聞いておきたくてさ」
「こっちにも色々事情があるんだ」
「そっか、そうだよな。ごめん」
…なんだこいつ、死ぬほど素直で正直だな。
「…だが、結果的に騙していたのは謝る」
「や、こっちも助かったんだぜ?親が勝手に決めた婚約だったけど。何も悪くない、才があって綺麗な女性を振るなんてこと、気分わりーから」
そうだ。
こいつ、初対面でこの僕に婚約破棄を頼んできたムカつくやつだった。
別に僕も婚約したい訳ではないけどあっちに振られるのは何かムカつく。
「なんだって婚約破棄したいんだ?…別に僕が婚約したい訳ではないが」
「うーん、そりゃあまあ。こっちにもいろいろ理由があるんだよ」
…教えてはくれないのか。まあ、こっちも事情を話した訳じゃないから?…別にいいが。
またしても沈黙が続く。
エレクは急に立ち上がって
「ごめんな、病み上がりなのに長話して。細かい話は後でするからとりあえず今はゆっくり休んで!」
「あっ、待て…」
僕がそう言い終わる前にエレクは部屋を出て行ってしまった。どれだけ足速いんだ、あいつ。
皿も空になり、腹が満たされたからか眠気が襲ってくる。
…引っかかるところはあるが、とりあえず話は後にするか。
そうして、僕は眠りについたーー
また明日から仕事だ!頑張ろう!夏休みのみんなは、宿題なんてやらずに小説を読もう!