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令嬢の姉たち

まだ令息は出てこないよ!

ほんの序章だよ!氷山の一角だよ!

「お前の婚約者が決まった。ここから離れた辺境伯の令息だ。同じ学園に行くそうだが、あちらの家に一度挨拶に行ってきなさい」

「――――はあ……………は?」




書斎の机や本棚がガタガタと揺れた。


「ちょっと待って下さい、父上。僕が辺境伯の、令息と、婚約?」

「ああ、そうだ。辺境伯は病気がちで、これからが心配だと息子の婚約者を探していてな。お前も年頃だし、丁度良いと意見が合致したんだ」

「…だからって何故僕が!姉上達でいいでしょう!無駄に歳食ってこの家に寄生してる奴らがゴロゴロいるじゃないで」

「ーあら、いつからそんな大口叩けるまでになったのかしら?フフ」

「…ルシア姉上様、何故ここに…」


 末のエイヴェリーにとっては1番上の姉で、母のようでもあるホワイト家の長女、ルシア・カークランド。

 彼女は、既に結婚してこの家を出てっているが、姉妹の顔を見に、度々帰省してきているのだ。


 彼女の結婚相手は、平民でありながら騎士団団長まで昇り詰めた、エドワード・カークランド。

 彼はルシアに一目惚れし、婚約を認めてもらうべく、団長の座を勝ち取った。


 ルシアはその一生懸命さに惹かれ、身分の差はあれど、騎士団団長の地位は揺るぎないものであるとし、半ば強引に婚約を成立させ、結婚までに至った。

 まさにロマンス小説のような2人である。


「姉上、先程の話は…」

「良かったわね、既婚者の私しか聞いていないわよ。さっきの発言、他の子に聞かれていたら殺されるわね。特にユリエナとか、クスクス」

(良かった、命拾いした…。いや待て、この姉はなんでもかんでも姉妹に言い触らす人じゃなかったか?)

「それにしてもお父様、確かにこの子の言うことは最もよ。他の子だっているのに、なんだって…わざわざこの子を」

「姉達は嫁ぎ先の目星が立っているし、辺境伯の令息は、頭が良いとは言えないそうだ。辺境伯はもう病床に臥しているし、例えエイヴェリーでも問題はないだろう」

「…それって」




「「「要は厄介払いってこと?」」」


 ギャハハハハ、と品の無い笑い方をするのは、三女であるユリエナ。姉上様と呼ぶのも、鳥肌が立つ。

 いつも僕のことを貶してくる悪女だ。ちょーっと歌が上手くて、王宮の専属歌手見習いだからって。

 僕の方がチェリロレン弾くの上手いし、気に触るが、僕の方が男にモテる。

 

「それにしたって酷いんじゃなぁい?ベリーちゃん、可愛くって、才能も段違いなのにぃ」

「…その呼び方はやめて下さい、ハルーシャ姉上様」

「もう、ハルルって呼んでって言ってるでしょお?」


 このおっとりとした喋り方は、四女のハルーシャ姉上様だ。

 いつもポヤポヤしていて、貴族の男共に異様にチヤホヤされている。…浮気相手にはこのくらいのバカさがもってこいだからな。


「エイヴェリーは、その才能と、反比例した性格の分、どう扱っていいのか分からなかったのでしょう。我らがお父様も」


 この理性的な雰囲気を醸し出している人は、次女のシルビア姉上様だが、実のところ、重度の筋肉オタクである。

 腹筋や上腕二頭筋が人気だけれど、三角筋が至高だと思うのですよ。などとのたまう変態だ。

 ていうか、ナチュラルに僕の性格貶しているし。


 ルシア姉上様以外の3人は、全員、僕の通う予定の国立シグニアス学園に通っているが、今は春休みの最中であるため、全員家に帰ってきている。


「まあまあ。お父様、変な人だけど策士だから。きっと色々考えてのことよ、フフッ。さてと、お土産に買ってきたお茶が冷めちゃうわよ。エイヴェリーのお菓子もあることだし、早く食べなきゃ」


 今は、姉妹で恒例、お茶会の途中なのだ。季節の花々が咲き乱れている庭園で、話に花を咲かせる。

 今の時期は、白いマーガレットや青いアネモネが可憐に顔を覗かせている。

 最も、今は亡き母の好きだった薔薇は、季節を問わず、年中、魔法で満開なのだが。

 ルシア姉上様が話を遮り、皆に茶を勧める。

 各々、僕の作ったシャンテェ・トリクェ(果実酒に浸した小麦のスポンジの間に、甘酸っぱい旬の果物と、滑らかなクリームを挟んだもの)を口に運ぶ。


 僕はトリクェを口にはせず、フルーツティーを口に含む。風味豊かで、ストレートでも苦味が少なく、甘いものに合うように作られたものだが、単体でも十分楽しめる。

 さすが、ルシア姉上様が選んだだけあって中々のものだ。これなら僕の菓子にもまあ、相応しい。


 僕は菓子を作るのは好きだが、甘いものは姉達ほど好きではないし、多くは食べない。

 

 というか、この人達、甘いものばっか食べて平気なのか?いつもカロリーがどうとかうるさく鳴いているだろう。女のご都合主義というやつか。


「それにしてもエイヴェリーが、あたしたちを差し置いて、令息と、婚約、ブフッ」

「お父様はどうなるか分かっているのかしらぁ?学園にも入学するしぃ」

「当然分かった上でしょう。…お相手はきちんと筋肉が付いている方でしょうか」

「まあ、やってみなきゃ分からないかもね、エイヴェリーは線も細くて、華奢だし。フフ」


…こいつら、他人事だと思いやがって!!!もう菓子は作ってやらないようにしよう。


「さすがに声は誤魔化せないでしょ。今までは高かったからいいけど。相手への挨拶なんかはどうするのさ。これまでみたく笑って済ませる気?それとも声作る?」

「事情で喋れない設定にしてぇ、筆談とかぁ?」

「相手の方、王都の方にはあまり来ないようですね。

有名ではないようです」

「そうね、私も聞いたことないし。そんな人に、王太子妃候補、とまで噂されているこの子を差し上げていいのかしら。クスクス」


 「ハハッ」

 「「フフッ」」

 「クスクスクス」


 僕は王太子妃になんか絶対にならないし、当然、ど田舎の頭の悪い令息と婚約できるわけもない。

 何故か今は奇跡的にバレてはいないが、僕はーー


 「だってこの子、なんたって、」












「「「男なのに」」」







次、令息出てきたらいいね!レベルだよ!

それと、令嬢を期待していたみんな!ごめんね!

そして…あのタグがないということは…

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