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君を待ってる

作者: ナツ

私には好きな人がいる。その人は事故で目を覚ましていない。彼は幼なじみで、私の彼氏だ。彼と話したいのに話せない。笑いたいのに笑えない。出てくるのは涙だけ。こうなったのは私のせい?

「ねぇ、勇希さ!中学の部活、まだ入ってないんでしょ?サッカー部にさ、早く入んなよ」

「うーん、今までは外部でやってたけど、人員が少なくなって、なくなったけど」

「いいと思う!サッカー部!」

「そうかな」

「うん!」

「じゃあ、入ろっかな」

勇希は私が勧めた中学のサッカー部に入った。私は応援の気持ちでサッカー部を勧めた。でも、これが間違いだった。

サッカー部は県大会に出場する事になった。でも、勇希は体調を崩していて、遅刻した。でも、試合に出て最後までやり切った。その帰り道、勇希はトラックにひかれた。

「あ、佳奈ちゃん」

「おばさん、おじさん」

「勇希ね、サッカー部入ってくれて本当に良かった。いつも、笑顔なんだもの。佳奈ちゃんのおかげね。でも、頑張りすぎてたの。これは、休憩しろって事なのかもね」

「おばさん…私のせいで」

「佳奈ちゃんのせいじゃないわよ〜」

おばさんは私の心を安らげてくれた。柔らかく包み込んでくれた。おじさんは

「佳奈が来てくれたぞ、勇希。よかったな」

と勇希に話しかけていた。私は、おばさんとおじさんの優しさに涙した。

勇希が目を覚まさなくなってから、私は毎日、病院に行った。

勇希が目を覚まさなくなってから1年が経って、私は中学2年生になった。いつものように、勇希に

「今日ね、坂本くんが昼休み、教室で歌って、クラス皆で手拍子したんだよ〜、面白かったの〜」

と、その日の出来事を報告していた。早く目を覚まして欲しいなと願っていた。

ある日、クラスメイトの橘さんに

「櫻井さん。一緒に帰らない?」

と聞かれた。私は勇希以外の人と帰るのは初めてだった。私は嬉しくて

「はい!喜んで!!」

と勢いよく返事をした。橘さんも喜んでくれた。そして、下校中に、こんな事を聞かれた。

「ねぇ、やっぱり、藤川君は…もう、目を覚まさないの?」

と。私はこぼれ落ちそうな涙を堪えて

「絶対に目を覚ます。私はそう、信じてる…」

と言った。橘さんは

「そっか。櫻井さん、辛いよね。ずっとそばにいたんだもん。その分、想いもあるし…最愛の彼氏だしね…」

と言ってくれた。今までの私なら同情なんていらないと言っていたかもしれない。でも、今の私は

「ありがとう…分かってくれてありがとう、嬉しい」

と泣きながら言った。橘さんはそっと抱きしめてくれた。そして

「ねぇ、私たち友達にならない?佳奈って呼んでもいい?」

と橘さんが聞いてきた。私は

「もちろん!!私も恵理って呼んでもいい?」

と聞いた。橘さんは

「本当に?嬉しい!!」

と承諾してくれた。

「佳奈!おはよう!!」

と恵理が私に挨拶をしてくれた。私は

「おはよう、恵理。朝から元気だね」

と笑顔で言った。恵理はキョトンとして

「え、普通じゃない?」

と笑っていう。そして

「佳奈がクラすぎるんだよー」

と言ってきた。私は

「朝から弟がうるさすぎて気分悪いの。でも、恵理のおかげで、笑顔になれたよ!ありがとう」

と言った。恵理は嬉しそうに笑う。凄く幸せで楽しい時間だった。でも、勇希のことを忘れることは無かった。勇希が目を覚ましたら、3人で話せるのかなと考えていた。その日の下校の時、私は恵理に

「一緒に帰ろう」

と言うため、委員会の仕事帰りに急いで靴箱へ向かった。すると、何だか愚痴のような言葉が聞こえてくる。それは

「ねぇ、本当に佳奈ってウザい。藤川君が目を覚ますか聞きたかっただけなのに、信じてるとか言い出してさ。いや、あんたの意見聞いてないんだけどって感じ。藤川君のこと、結局は何も知らないじゃん。幼なじみだか、彼女だか知らないけど、自分だけ特別みたいな態度が

本当にムカつく」

と私に対する愚痴だった。その声は恵理と同じだった。恐る恐る近づくと、愚痴を言っていたのは恵理本人だった。私はショックで言葉が出なかった。それに気づいた恵理が

「あ…佳奈…」

と愚痴を言っていた時とは違う、優しい声で私の名前を呼んだ。私は

「恵理…。私の事、嫌いだったんだね。友達だと思ってたのは私だけだったんだね。酷いよ…」

と逃げ出した。学校を出て勇希のいる病院に行った。そして、勇希に

「人間関係って難しいね」

と話しかけた。そして

「友達だと思ってた女の子がいたの。でも、その子は私の事を嫌ってた。友達だと思ってたのは私だけだったの。それが、凄い悲しくて逃げてきちゃったの。ねぇ、勇希。いつになったら目を覚ますの?ねぇ、答えてよ、勇希…」

と泣きながら訴えた。

「佳奈、お前がいなきゃ今の俺はいない。佳奈がいつもそばにいてくれたから、逃げずに俺と向き合ってくれたからだよ。その女の子にも向き合わなきゃダメだよ、佳奈。今度は俺が支えるから」

「え、勇希…?」

「そうだよ、佳奈」

「勇希、ずっとずっと会いたかったんだよ。ずっと待ってたんだよ?勇希!」

「え、勇希?どうして返事をしないの?ねぇ、勇希…」

「起きてください、起きてください。橘さん」

と看護師さんの声がする。目が覚めると私は病院にいた。私は、すぐさま看護師さんに

「さっき、勇希が私に話しかけてくれたんです!そばにいたんです!」

と訴えた。看護師さんは

「たしかに、勇希君はそばにいます。でも…目は覚ましていません…。きっと夢でも見ていたのでしょう」

と言ってきた。私は

「そっか…夢か…」

とすぐに現実を受け止めた。私は、夢の中の勇希を信じ、恵理と逃げずに向き合うことにした。

翌日、私は恵理を屋上へ呼び出した。そして

「この前は逃げてごめん。でも、今日は、もう逃げない」

と私は言った。恵理は

「うん」

と少し暗い顔をして言った。私は

「私ね、初めて話した時、誘ってくれて、受け止めてくれて凄く嬉しかったの。こんな友達できたことなかったから。でも、この前、恵理が私の事を愚痴ってて、あ、友達と思ってたのは私だけだったんだ。私の事嫌いなんだって思った。中1そう。私に話しかけてくる女子は、だいたい勇希目当て。私と仲良くなる気なんてさらさらない人ばかりだった。でも、中2なってからは、勇希に話しかける人が多くなって、私は勇希と男子友達としか話さなくなって、女の子と話せなくなった。でも、そんな時だったからこそかもだけど、恵理に救われた。それが嘘だとしても救われたことに変わりはない。ありがとう」

と思いをぶちまけた。恵理は涙を流しながら

「この前は本当にごめん。私、嫌われたかったの。佳奈に。結構前に読んだ漫画に嫌いになったら自分の事を忘れないないでいてくれるでしょっていうセリフがあって。ちょうどその時、佳奈が藤川君のことばかり気にしてたから私の事を忘れちゃうって思ったの。だから、挑戦した。でも、失敗だった。結局、傷つけた。私は佳奈の友達でいたい!藤川君じゃなくて、佳奈が好きだから!」

と言った。こんなくだらない仲直りだけど、中学生の私たちにとっては最高の仲直りだ。

「私も恵理が大好き」

と言って、仲直り。その後、私たちは一緒に行動するようになり、本音を言い合える仲になった。そして、勇希にも、その事を知らせた。瞼を閉じれば、勇希がいつもいる。その勇希と恵理に支えられて毎日を生きている。勇希が目を覚ますのを、ずっと待っている。

「勇希、今日ね…」

と私が話しかけると、勇希の手の指がピクっと動いた。私は

「勇希?勇希」

と名前を連呼した。そして、医者を呼んだ。医者が

「勇希くん?聞こえる?勇希くん?」

と呼んだ。私が勇希の手を握ると勇希が握り返してくれた。握力は全然なく、私の手の甲に指触れるくらいだった。私は

「先生!今、勇希が手を握り返してくれた!ほら、みて!」

と医者に言った。医者は

「うん、握り返してくれてるね、佳奈ちゃん」

と笑顔で言ってくれた。看護師さんも

「良かったね、佳奈ちゃん」

と言ってくれた。私は勇希に

「勇希!私はここにいるよ!佳奈だよ!さあ、目を開けて!」

と言った。勇希は少しずつ、ゆっくりと目を開いた。看護師さんはすぐに、勇希の両親と私の両親に連絡した。そして、おばさん、おじさん、両親が病院についた。

「勇希!」

とおばさんとおじさんは勇希を抱きしめた。勇希はまだ

一言も喋っていない。でも、2人を抱きしめながら笑ってる。そして、私が

「勇希、お疲れ様。よく頑張ったね。かっこいいよ。おかえりなさい、勇希」

と言って抱きしめると勇希が

「ただいま。ありがとう、佳奈。佳奈がそばにいてくれたおかげ」

と喋った。私の涙が溢れ出た。そして、勇希に

「ずっと待ってて良かった。新しい友達も出来たんだよ、話したいこと、沢山あるんだよ。でもね、変わらないものもあるんだよ。私は今も勇希が大好き」

と告った。勇希は

「俺も、ずっと大好きだよ」

と返事をしてくれた。きっと、いつか別れてしまう。でも、だからこそ、今のこの時を大事にしたい。カレカノでいられる、この時を。

私たちは進級し、中学3年生になった。受験で忙しいけど、恵理との友情、勇希との愛は変わらない。変わるとしたら、クラスや担任、そして、弟が入学してきたこと。新しい日常が始まった。日常が変わっても変わらないものはある。それは、どこにいっても同じ。信じる事は大切。

「ねぇ、勇希」

「あ?なんだよ」

「私さ、勇希を待っててよかった」

「あはは、そっか。俺も佳奈が待っててくれて良かった。ありがとう」

「いえいえ、こちらこそ。高校行ってもよろしくね」

「おう。受験合格おめでとう」

「勇希もね。てか、小五から、こんなに長い間付き合えるってすごくない?」

「まあ、確かに。でも、沢山の試練を乗り越えた俺らなら、一生愛し続けられる自信があるよ」

「うん、私も。でも、高校でイケメン見つけるかも」

「俺も美人見つけるかも」

「でも、勇希が眠ってる間に色んな男子を会ったけど、やっぱり、勇希が1番だったし、変わらないかな」

「俺は普通に沢山可愛い人を見てきたけど、佳奈が一番かな。だから大丈夫」

「言い合ってると照れるね」

「だな」

「聞いてる私も照れるわ」

「あ、ごめん、恵理」

「まあ、仲が良くて何よりだ」

「なんか、橘ってオッサンみたいだな」

「今、なんつった?」

「すいません、なんでもないです」

「初めて話した時は、こんな子だと思わなかったよ」

「私も」

「さ、俺たち3人はまた一緒ということでよろしくな」

「うん!」

「うん」

私は、また、何かあったとしても、ずっと信じて、待ってるよ。会いたいという思いは信じる力になる。信じる力は希望になる。変わらないものを大切に。それは人生で必要なものだから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 愛は人を生きさせるんですね。恋の駆け引きもするもんではないな。 [一言] 最近仕事が忙しくてね。小説、読む時間がなかったんだ。そういえば、私の第一号の短編小説が完成したんだ。是非読んでくれ…
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