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4話

「私が殺されたのは15日金曜日と先程言いましたが、私の死体が見つかったのは18日の月曜日です」

「時間は分かりますか?」

「日の高さ的に朝だとは思うのですが、正確な時間は分かりません」

「犯人の顔は見ましたか?」

「見たとは思うのですが、殺された衝撃で忘れてしまったらしく、覚えてないです。ただ、私が知っている顔だったとは思います」


 田辺さんの証言を信じるのであれば、田辺さんを殺したのは田辺さんの知人の誰かだろう。


「殺される前、誰かと揉めたってことはありましたか?」

「いえ、全く。自分で言うのもあれなんですが、人から恨みを買われるような覚えはないんですよね」

「他はなにか覚えていることはありませんか?」


 田辺さんは一度考える素振りをしてから、


「いえ、全く覚えていないわ。ごめんなさい、私の依頼なのに全然力になれなくて……」


 と言って頭を下げた。


「お姉さんが悪いんじゃないですよ。そんなショックを受けたら誰でも忘れちゃってもおかしくはないですよ」

「ありがとうね、涼香ちゃん」


 結局田辺さんから得られた情報は殺害日時、遺体発見場所と日時だけだった。これぐらいの情報ならわざわざ聞かなくとも簡単に集めることが出来た。せっかくの被害者という証人の強みが出ていない。はっきり言って聞く必要がなかったな。


 涼香と田辺さんが有益にもならないことを話している横で、オレは身支度を始めた。その様子に気づいた涼香がこちらに声を掛けてきた。


「真也さん、どこか行くんですか?」

「田辺さんが埋められてた山に行ってくる」

「今からですか? いくら近いからとはいえ、もう夕方ですよ」


 確かに涼香の言う通り今から向かえば5時前ぐらいに着くだろう。現場検証という意味では暗くなってくる夕方では不向きだ。だが、オレ自身としては現場に関しては少し確認するぐらいで、目的は他にある。


「大丈夫だ。この時間でもオレが欲しい情報は手に入る」

「本当なんですか? 暗くて何も見えないと思いますけど」


 オレがどんな方法で情報を手に入れようとしているかを話してもいいが、話したところで理解できないだろうし、時間もかかる。


「ついて来れば分かる。だけど、今から現場へ向かうから帰る時間も必然と遅くなる。だから、ついてくるかは涼香が決めればいい。ちゃんと明日にでも得た情報は教えるから無理してついてこなくても大丈夫だ」


 涼香は一瞬考えた後、一緒に行くことを選択した。


「じゃあ、家の人にはちゃんと連絡しておいてくれ。何時に帰れるかはまだ分からないからな」


 遅くなりそうだったら、涼香が反対しようとも無理やり家へ送還すればいいだけだから、ついてくることは止めはしない。


「これ以上遅くなったら、得られるものも得られなくなる。行くなら早く支度して出発するぞ」


     *


 オレたちは田辺さんが埋められてたという山へ着いた。ここまではタクシーで10分ほどで着くことが出来る場所でだった。


 山の方へ近づいてみると、多くの警察官がウロウロしていた。もしかすると殺害現場が近くにあると思って、森の中を探し回っているのかもな。


「とりあえず、近くまで行ってみるか」

「はい」


 最初は田辺さんに現場まで連れて行ってもらおうとしていたのだが、正確な場所を覚えていないらしく案内は出来ないと断られてしまった。本当に使えない依頼人だ。しょうがなく、新米っぽい警察官の後ろをこっそりついて行くことにした。


 封鎖しているところ以外は通行人が通ることが可能らしく、通行人のふりをすることで簡単に尾行することが出来た。


 遺棄現場が山の中と聞いていたから安全に登れるよう色々と準備をしていたが、どうやらその必要はなかったらしい。


「意外と目立つ場所だったんですね」

「そうみたいだな」


 涼香がそう思うのは無理もない。オレも同じことを考えていたからな。遺棄現場が山と聞けば、山奥で人目のつかないところに埋められているものだと普通は考える。だが、山に入って5分も歩かない距離に『KEEP OUT』と書かれたテープで仕切りが作られていた。どうやら田辺さんは山に入ってすぐのところに埋められたようだ。


 これだと、山に埋める利点を活かせていないように思える。遺体を埋めるのは遺体を見つけられないようにする、もしくは、死体発見時刻を遅らせることが目的なはずだ。その利点を捨ててまでこの場所に埋めたのには理由があるのだろうか。


「これじゃ、入れそうにないですね……、入れそうな場所探してみますか?」


 テープで仕切られているのを見て涼香は他に入れる場所があるかを探そうとしていたが、オレはそのテープの中を何の躊躇いもなく入った。


「え、真也さん何してるんですか? 怒られますよ」


 涼香が心配そうに声をあげたが、すぐに怒鳴り声が聞こえた。


「おい、お前たち何をしてるんだ」

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