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14話

 その後も監視カメラの映像を見たがおかしな場所と呼べるものは見当たらなかった。


「何も見当たりませんね」

「そうだな。やっぱり何かをしたとすれば停電が起きた間だけだろう」

「それは難しいですね」


 オレたちが悩んでいるとドアが再び『ガチャ』と開き、バイトの女の子が入ってきた。


「お疲れ様です。何か大変そうですね」


 バイトが終わったらしく、帰り支度をしながら聞いてきた。


「刑事さんたちも来てたみたいですけど何かあったんですか?」

「あなたは知らないんですか?」

「ええ、私ここ一週間はテスト勉強でバイトに入れてなかったから」


 勝手に事件のことを話すわけにはいかない。ただ事件解決に少しでも役立つ話があるのなら聞いておきたい。この子の名前は『藤沢』。ネームプレートにそう書いてある。


「15日にちょっとした事件があって、その日の映像を見てたんですよ」


 深くは語らず、ぎりぎりを攻めることにした。


「15日ですか? 私その日シフト入ってたんですよ」

「本当ですか?」

「ええ、時間は学校終わってから20時までだったけど」


 渡会さんと三田さんの前にシフトに入っていたのか。


「藤沢さん、何かその日おかしなことってありました?」

「おかしなことね……一つだけあったかな。関係あるか分からないよ?」

「構わないから、教えてくれるかな」

「えっとね、在庫品が置かれている部屋があるんだけど、帰る前にその部屋をチェックしようと思ったら、ブルーシートが置かれてたんだよね。いつもならそんなものは無いはずなのに」

「それは本当なんですか?」

「うん、その前日にも同じ場所を見たけどそんなものは置かれてなかったもん」

「そのことは警察には?」

「行ってないよ。だって、さっきも言ったけどその日からバイトに来てないし、それに警察に話を聞かれることなんてなかったから」


 この子は事件を解決する上で重要な子かもしれない。田辺さんが使えない以上この子の話を聞く価値は大いにある。特に『ブルーシート』、これは田辺さんの遺体を巻いていたものだ。まさか、こんな重要なものが子の子から出てくるとは思いもよらなかった。


「他にも質問してもいいかな?」

「私が答えられる範囲であれば」

「渡会さんと三田さんのこと教えてくれるかな」


 藤沢さんは少し考えるそぶりをしてすぐに答えてくれた。


「渡会さんはね、頭が良い人でした。どうやったら商品が売れやすくなるとかいつも考えてましたね。三田さんはとても優しい方でした。新人だった私に仕事を優しく教えてくれたり、停電が起きた時にもすぐに動いてブレーカーを上げに行ってくれましたね」

「停電?」

「うん、さっきも停電があったけど夜にも停電になる時があって、その時はいつも三田さんがやってくれてました。暗いからなかなかあの部屋に行くのが大変で『僕が行くよ』と言っていつも率先してやってくたんですよ」

「さっき、店長から停電が夜にも起きたことが1週間に1回あるって言ってたんだけど、その時全部藤沢さんが担当した日だった?」

「月に2回ぐらいはそうでしたけど、最近はなってませんね」

「それっていつぐらいのときか分かる?」

「確か2か月前ぐらいからで、私がシフトを代わってもらったことが一度会ってからぴたりと無くなりましたね」


 今まで藤沢さんの時に起こっていた停電が違う日に移ったということか。


「そのシフト誰に代わってもらったか覚えてます?」

「たしか……渡会さんだったと思います」


 これは後で店長に確認をとる必要が出て来たな。


「役に立ちました?」


 藤沢さんがニコニコしながら聞いてきた。まさか殺人事件の調査に来ていると思ってないから気楽そうだ。


「ありがとう。すごく助かった」

「お役に立てたなら良かったです」

「私からも質問していいですか?」


 涼香が手を挙げて藤沢さんの方を見ると「どうぞ」と優しそうに聞き入れた。


「渡会さんと三田さんって仲良かった?」

「昔は仲良かったと思いますよ。ただ……」

「ただ……?」

「最近は三田さんが渡会さんに怯えているような感じがするんですよね。前まではそんなことはなかったのに?」

「何か三田さんが悪いことをしちゃったとか?」


 オレが考えこもうとしているときに涼香が質問してくれる。おかげで会話が切れなくて助かる。


「ううん、それはないかな。さっきも言ったけど三田さんは優しいし。賞味期限切れの弁当とかも私がやらなきゃいけない仕事なのに代わりにやってくれてますから。三田さんが渡会さんに対して悪いことをしたとは思えないかな」


 三田さんが藤沢さんに優しくするのは下心があるからでは? と一瞬脳に過ったが、たぶんそれはないだろう。三田さんは田辺さんのことを好きだったはずだから。


「そっか、いろいろ教えてくれてありがとう」

「いえ、これぐらいなら大した手間では」

「最後に1つだけ質問してもいいかな?」

「どうぞどうぞ」


 お礼を言われて機嫌が良さそうだったのでせっかくだからもう一つだけ聞くことにした。


「停電中何かおかしなことあったりした?」

「停電中ですか?」


 思い当たることがないのか先程よりも長く考え込む。


「停電中というよりは、電気が落ちた直後に『ガタッ』みたいな音が夜の時だけ聞こえてきたことはありましたね。たぶん鼠とかだとは思うんですけど……これは関係ないことですね」


 停電直後に音が鳴ったか……


「それにしても大変ですね、1年間も停電が起きちゃったら、私なら夜にそんなことが起きたらビクビクしちゃいます」

「私も最初の頃はビックリしちゃったけど、今はもう慣れちゃったかな。それと夜に停電が起き始めたのは『半年前』からだよ」

「え……、1年前からじゃなくて?」

「夕方とかはそれぐらいからだけど、夜の方は半年前からだと思うけど、ただ私が知らないだけかもしれないけどね」


 あと1つピースがあれば何かがひらめくような違和感が頭に残る


「ごめんなさい、そろそろ帰らないと」

「すみません、付き合わせてしまって」

「私が最初に首を突っ込んだんですから大丈夫ですよ」

「今日はありがとうございました。たぶんあまた警察から話は聞かれると思うので頑張ってください」

「それは、大変そうだ……」


 警察と聞いて苦笑いしながら藤沢さんは帰っていった。


「涼香、店長に夜に停電が起きた日と、その時間誰がシフトに入っていたか聞いてきてもらってもいいか?」

「了解です」


 涼香が店長の元へ行っている間、オレはブレーカーを見に行った。





 夜停電が起きた日シフトに入っていたのは全て三田さんであり、2か月前からは渡会さんも一緒であることが分かった。それに加え、事件を最後に夜に停電は起きていない。




 そして、ブレーカーにはセロハンテープの切れ端が付着していた。

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