リア充、爆発しろ!爆発してしまった
僕の名前は、ケイ。
現在、高校1年生、16歳。
僕の日常つまり学校生活は、常に周囲に美少女や女子が10人いて、まとわりつかれたり、くっつかれたり、キスされたり、一緒に勉強したり、一緒に遊んだり。
つまり、僕は、人もうらやむ<リア充>です。
僕も、その美少女たちが大好きです。
どんな子たちか、紹介しますね。
1 ミヤビ クラスでいちばん低身長。校内一の呼び声高い超絶美少女。
細身。胸は、ない。ショートヘア。
わがままで、傍若無人。
僕の最愛の女子。つまり、本妻。
2 ハルヨ クラスで2番目に低身長。校内トップの優等生。
太ってる。胸は、あまりない。ショートボブ。
おとなしい。まじめ。
目立たない彼女だが、僕は前から注目していた。
3 フブキ クラスで3番目に低身長。
中肉。胸は、ほどほどにある。ショートボブ。
おとなしそうだが、根性がある。
幼なじみ。僕は親しくしたくないけど、彼女のほうから近づいてくる。
4 オウミ クラスで4番目に低身長。
中肉。巨乳。セミロングヘア。
気が強く、男子みたいな。
小学生以来の知り合い。僕の視線は常に胸に行く。
5 トシエ クラス委員長。よく見ると、美形。
中肉。巨乳。ショートボブ。
委員長に自ら立候補した変わり者。
話をしたことがないが、なぜか僕の視界にいつもいる。
6 トモヨ クラスでは、ミヤビを抜いていちばんの美少女と噂される。
細身。巨乳。セミロングヘア。
成績も優秀で、友人が多く、高貴な令嬢のような振る舞い。
しかし僕の眼中にはまるで入らない。僕の視界に常にいるような気がする。
7 チエリ クラスで3番目に美少女といわれている。
細身、巨乳。ショートヘア。
快活で人気が高く、男子からの注目はトップクラス。
僕も、注目している。
8 ユキミ 中肉中背。普通の顔。
胸は、ほどほど。成績中くらい、あまり活発でない。
ごく普通の女子なのに、僕は、ひと目惚れした。
9 ヨシコ 中肉中背。ちょっと田舎っぼったい顔。
胸は、あまりない。社交的で友人は多い。
人の輪の中心にいつもいるので、しぜん注目している。
10 ルカナ 中肉中背だが、爆乳。
ロングヘア。美少女なこともあって、男子たちから常に卑猥な目を向けられている。
僕も、その点では大変お世話になっているが、話をしたことはない。
いつも僕のそばにくっつくようなようすでいる。
僕は、半分無自覚的にハーレムの中心にいました。
クラスの男子たちからは、殺すぞ、てめえ!みたいな視線を常に感じていました。
他の女子たちからは、スケコマシ!ドン・ファン!と散々ののしられていました。
そんなリア充の僕と、その10名の女子たちの上に、ある日、トンデモな災難が降りかかりました。
それは、高1の1学期の7月。夏休みを前にした最後の授業日の昼休みのことです。
お昼のチャイムが鳴ると、僕の周囲にあっという間にその10人が集まってきて、お食事会となりました。
「ケイくん♡はい、アーン」
パクッ
「ケイくん♡あたしのも食べて~♡」
パクッ
いつもの日常です。最初は、わ?と思いましたが、最近は慣れてしまいなんとも思わなくなっていました。
ちょっと離れた場所では、男子たちがいっせいに親指を下にし、怒った顔をしていました。
女子たちは、盛んに僕への悪口を叫んでいました。
「うん?」
ふと空に明るく輝くものを見ました。
それは、まっすぐにこの教室に向かってきて、そして教室の中に入ると
バアアアーンッ!
てな感じで弾けました。
瞬間、集まった机の上の弁当箱やお茶が吹っ飛び、そして僕と10人の女子たちも吹き飛ばされました。僕は、何が起こったのかよく分からず、すぐに意識を失いました。
やがて、僕は意識を取り戻しました。
しかし、なぜだか体が宙に浮いてるような。
下を見下ろすと、グラウンドに点々と人間の身体…、いや、それはひしゃげたりもげたりして、散乱する肉の塊になっていました。不思議と、血は見当たりません。
その肉の塊のうち、なにやら顔のような模様が現れているものが11個ありました。
上からようく見ると…
「ううう…、オエー!オエー!オエエエー!!!」
僕は、思わず先ほど食べたものを吐きました。いや、正確には吐きそうになっただけで、リアルに吐いてはいなかったんですが。
その11個の塊は、生首でした。
そしてその模様は、僕と10人の女子たちの顔でした。
僕は、自分と10人の女子全員が、即死したことを知りました。
僕は、幽体離脱していたのです。
ふと、教室のほうを見ると、同級生の男子たちが窓からグラウンドを見て騒いでいます。女子たちは、泣いてたり、気絶している人も見えます。
やがて、先生が教室に駆けつけてきました。
「何があったんですか?」
先生の問いに、男子のひとりが
「リア充が、爆発しましたッ!」
と叫び、先生はキョトン。
僕は自分が死んでるのに、なぜだか、その男子と先生のやり取りにくすっと笑っちゃいました。
僕は、他の死んだ女子たちの幽体も近くにいるかなあ?と周りを見回しましたが、誰も居ません。
どうやら一足先に成仏したようです。
僕もそろそろ成仏したいなあ、と思いました。あの男子が言うとおり、僕はリア充でした。この世に何の未練もありません。童貞もすでにだいぶ前に卒業し、しかも複数の女子たちと体を重ねました。抱きたかった女子が何人かいたけど、ま、いいか、と思いました。
やがて、上からなにやら光が降りてきて、僕を包みました。
僕は、見下ろす世界に別れを告げました。
「さようならーっ!お達者でーっ!お肉は…で買うんだよーっ!」
……………
「ほぎゃ!ほぎゃ!ほぎゃ!ほぎゃ!」
なぜだか、酷く泣いている自分。
「ウエーン!ウエーン!ウエーン!ウエーン!」
またまた、泣いている自分。
夢でも見ているのだろうか?いや、自分は死んだはず。死んでたら、夢も見ない。
ハッと気づいたら、僕は、家の外の寒風吹きすさぶ中に、上半身裸のパンツ1枚で立っていた。
「うわー?寒い!死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ―ッ!」
僕は、後ろのドアを激しくたたいた。
「うっるせえなー、クソガキ!」
ドアが開いて、いかついおっさんが出てきて、僕の顔をげんこつで殴ってきた。
「痛ッ!何すんだ、おっさん!」
「おっさんとは何だ?おやじに向かって」
とさらにおっさんに殴られた。
しかし、殴られて興奮したおかげで、少し体が温かくなった。
「おまえさん、外に出すのはマズいよ?近所の目もあるし」
と中からおばさんの声がした。
「しょうがねえな、くそガキ、運のいいやつだ」
僕は、家の中に入れられた。
「今晩、食事、抜きな?」
おっさんが、叫んだ。
しかし、先ほど昼食を食べたばかりな感じがして、それほど腹は減っていない。
ふと、壁の鏡を見た。
そこには、小学生時代の僕に激似の子供の男子が映っていた。
「え?あれ?これ…自分?」
身体のあちらこちらに傷がある。
僕は、自分がどうやら別の世界に転生していたことに気づいた。
しかし、その世界は、いわゆる異世界ではなく、元の世界にうり二つの世界、並行世界のようだった。
テレビも携帯電話もある。
ただ家庭環境は、最悪だった。家に監禁されていて、親から虐待されている。食事も少ししか与えられない。
家の中には、僕の勉強道具もランドセルもなかった。学校には通っていない。どうやら、僕は無戸籍の子供のようだった。年齢はよく分からないが、仮に12歳にしておいた。
しかし、幸い、前世の記憶は完ぺきだ。この事態を解決する方法を、僕は知っている。
翌日、僕は、上半身裸のパンツ1枚の姿のまま、すきをみて手にしたお金をもってその家を脱出し、公衆電話ボックスの電話帳で情報を入手し、駅を探して電車に乗り、児童相談所におもむいたのであった。