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ギリギリのギリギリでセーフですわ。



王宮の談話室にて。

私、ニコラ・グリードナーは困っていた。


「……えーと、こうしてレオン殿下とお話しできるなんて、とても光栄ですわ〜」


「ああ」


「……えー、殿下は何か、ご趣味などはございますか?」


「寝ることだな」


「そ、そうですか〜。いいですよね、寝るの。気持ちいいですよね〜」


「ああ」


「……」


か、会話が続かねぇ!!!!

ていうか、え、何?この人会話する気ある?

私も初対面の男と話すことなんてねぇよ!!!

人見知り爆発ですが何か!?


目の前におられるこの方は、気だるげな表情がいいと巷で噂の王子様(本物)こと、アルカーラム王国第3王子レオン・アルカーラム殿下。

見目麗しい金髪碧眼、剣術魔術もお手のもの、その聡明さに目を剥れ、我らが愛しのレオン殿下…とは、友人の言葉である。


そんな殿下と辺境伯爵令嬢の私がどうして、レオン殿下と話をしているかというと、話はひと月前まで遡る。





―1ヶ月前、グリードナー辺境伯爵邸宅にて―



「ニコラ、ニコラ!ビックニュースだよ!」


「あら、お父様。ごきげんよう。そしてごきげんよう。」


「ちょっとちょっと!?華麗にスルーしないで!?パパ泣いちゃうかも〜」


「スルーだなんて…私きちんと挨拶したではありませんか」


その日は突然、父から声をかけられた。

こういうテンションの高い父は、厄介事を持ってくるので、挨拶して通り過ぎようとしたのだが失敗してしまった。


「娘の成長を感じられるのは嬉しいけどね?たまに、あれ、うちの子貴族だよね?って心配になるし。」


「失礼な、もう立派な淑女ですわよ?それでご用件は?」


「ちなみに、素のニコラちゃんの本音は?」


「マジで面倒くさい予感しかしないから、このまま部屋に戻っていい?私これから午後のおやつタイムなんだよね〜」


貴族生まれ貴族育ちの私ですが、ここが辺境なのと、母がいないのと、父の放任主義と、領民の悪ガキの影響で言葉遣いが悪い。なんなら教養もマナーもひどい出来。

自分で言うのもなんですが、正直、貴族としてギリセーフ、いや、アウト?いやいや、ギリッギリセーフ、くらいの危うさ。


「うん、淑女なニコラちゃんもお転婆なニコラちゃんも、どっちもいい…!」


「真顔で言うの割とキモい。ですわ。」


泣き真似し始めた父に、またごきげんようと挨拶して踵を返す。部屋に戻ろ。


本気で行ってしまうと気づいた父は、泣き真似をやめ慌てて本題に入った。


「そうじゃなくて!そう、ビックニュース!」


「はいはい、聞くから早く。」


「ニコラも第3王子の話は知ってるよね?」


「…あー、あれですね。なんか、ここに来て魔力覚醒した的な、今、株爆上がり中の王子様?」


「なんでうろ覚え!?国の大事だよ!?」


いやいや、覚えてますよ?これでも貴族なんで?

なんか、魔力ないとかで隣国に預けられていた、もとい厄介払いされていた王子様が齢17歳でまさかの魔力覚醒。

王子としての教養や護身術は身につけていたし、魔力も世界トップレベル。第3王子だけど、母である側妃の身分も申し分ないし、次期王位継承狙えるよね?ってことで、2年前に隣国から引き戻された人でしょ?


「ほーら覚えてる!」


「よかった…流石に忘れないよね…」


「で?その王子がどうしました?ついに婚約でもしました?」


「いや…」


そんな経歴から、第3王子の株はうなぎのぼり。見目もいいときくし、この国に来て2年経って落ち着いたから婚約発表しまーす!って話かな?と思っていたのに。違うの?


「おしい!第3王子の婚約者選定会が決まりました!そして、ニコラ。君も婚約者候補だよ!1ヶ月後に王都行くからね、よろしく!」


「は?え、は?なに、選定?は?」


なんだそれ?え、選定会とは?私も候補とは?


「第3王子、クセ強めらしくてね〜。婚約者決めるのに、とりあえず適齢期の令嬢を何人か見繕って相性で決めるんだってさ。」


「え?いや、たしかに私17歳ですけど。いやいや、お父様?こんな私を王子の前に出せます?王子の御前どころかパーティーすらほぼ行ったことない、貴族としてギリギリの私ですよ?断ってください。」


「ニコラちゃんはおバカだね〜、辺境伯が王家からのお誘い断れるわけないでしょ。ちなみに選ばれたらそのまま王宮での生活が始まります。」


何それ地獄か?


「まぁ、でも、きっと選ばれないから、パパと王都見物でもしましょ。」


「それはそれで腹立つな。」


ていうか言い切らなくても。

客観的に見て、私もありえないと思うけど。


「まぁ、王都見物はしたい。お父様、王都には可愛くて美味しいと有名なケーキ屋があるのです。」


「仕方ないなぁ、予約しとくよ。」


やった!!ケーキや楽しみだなぁ〜

あ。


「お父様、ところで第3王子って、なんて名前でしたっけ?」


「え……?」


その時、父は可哀想な子を見る目で私を見たのだった。






そして今日に至る。


王宮に着いて3日。ついに私に順番が回ってきて、談話室に案内された。

高級な紅茶と、面倒くさいオーラを纏ったレオン殿下に迎え入れられ、お話をしている。

ちなみに半日は拘束されるらしい。え、苦行?

泣いたり、怒ったりしながら戻ってきた令嬢ばかりだったのって彼の態度のせいでは???


そういうわけで、私は会話が続かなさすぎて困っている。なんとなく気まずいし。

なんのために私はここに呼ばれたんだ…


「えーと、あ、殿下はもしかして人見知りでいらっしゃいます?」


「は?」


「あ、なんでもないです。人見知りは私でした〜、うふふ。」


地獄か?ここは地獄なのか?

ちらりと従者や執事を見るが、みんな素知らぬフリだ。救ってくれる天使もいねぇ。詰んだ。


いや、待てよ?

相手は面倒くさそうにしていて、私と話したくない。私も面倒くさいし、別に話をしたいわけじゃない。じゃあ、話さなくてもよくないか?


私は美味しい紅茶と茶菓子を頂いて、見目麗しい王子を眺めて帰ればいいのでは?


「あの、殿下。ご提案があります。」


「提案?」


「えー、私の勘違いでなければ、殿下は私と話すことは何もない。早くこの時間が終わらないだろうか。などと思っておられるのでは?」


「……」


何を言ってるんだこいつ。という目だ。

ちょっと怒られそうで心臓縮む。

しかし私はめげない。


「同じく、私も明日行くのケーキ屋で頭がいっぱいな田舎令嬢。そこで、ご提案は、もうお話をしなくてもいいですか?というものなのですが……まずいですかね?」


ぽかんとしたレオン殿下。

グッという音?が後ろからしたので振り向いたら従者のひとりが口を抑え震えていた。横の侍女がペコリと頭を下げてその従者を連れて去っていった。病気かしら?おだいじに〜。


「お前は、」


「あ、はい。」


「俺に媚を売ったりしないんだな。」


「え?あ、いえ、もちろん売ってますよ。媚!ほら、嫌われても仕方がないので、殿下に会話という負担をかけないように、という下心です。」


面倒くさいからだよ。あと、あんたも話す気がなかったじゃねぇか。とは、言えないので心の中でとどめておく。

そして媚を売らないのも選定会としては恐らくまずいので言っておく。


「くくっ、本人に言ってどうするんだ。そもそも、そういうのは媚でも下心でもねぇ。」


この人、口悪いな。

でも確かにぺろっと下心とか言っちゃったわ。

ていうか急に饒舌になったな。何事?


「提案は却下だ。お前の話を聞かせろ。」


「え、あ、はい。私の話と言われても。」


「お前のとこの領地の話でも、明日のケーキの話でもいい。」


「……では、明日のケーキの話で。」


結局、時間が来るまで、ケーキ屋に行く話、領地での生活の話、お父様の話など、私の他愛ない話をした。最後の方はネタがなくなり、私の知ってる童話の話とかしていた。


他人が聞いたら、いったいお前らはなんの話をしてるんだ?って感じだろう。少なくとも婚約者決めをしてる男女が話すことではないな。


「殿下、そろそろ。」


執事の声で、会話は終わる。


「楽しませてもらった。」


「……楽しんでいただけたなら、ようございました。」


ほんと、私の日常話(淑女編)で、楽しんでもらえてよかったです。ちなみに、領地の悪ガキと遊んでたことなどは私の日常話(お転婆編)なので、話してません。話せません。


さて、そんなこんなで王子様と話してみようの会は終わった。いや、ほんと、クセ強めだったわ。そして明日はケーキだ、やっふい。


4日後、結果が出るまでは王都にいないと行けないらしい。つまりあと4日は、王都を満喫できる。めったに来れないし、兄さんや、幼馴染の悪ガキたちにもおみやげ買っていこ〜。









気が向いたら続き書きます

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