05 お前の弱点は優しすぎるところだってよくいわれる(前編)
タックルするように女の子を抱きかかえて原っぱを転がる。
火炎放射器の炎が直撃したのか。斜め後ろの草が燃えあがる。
腕の中の女の子が歯を鳴らして震えていた。
「大丈夫? ケガはない?」
女の子は小さくなんどもうなずいた。
そりゃ怖かったよね。
というか、どうしてこんな森の中、しかも盛大に燃えている中に子どもがいるんだよ。
思う先から金属口から吐き出される炎のゴウゴウという音が迫った。
火炎放射器男がしつこく投射していた。しかもこの短時間に燃料を交換してきたみたいな炎の勢いだ。
くそお、とおれは女の子を抱えてさらに原っぱを転がる。
安全なところなんてない。
だけど、せめてここなら。
「絶対に動かないで。ここにいて」
いいね、と念押しをして男に振り向いた。
男がしっかりとおれに火炎放射器の放射口を向ける。
できるだけ女の子から離れたところへ。それだけを思って地面を蹴る。
おれの走ったあとに男が投射した炎のラインがのびる。
男の笑い声が聞こえた。おれを追い回すことに無上の喜びを感じているんだろう。
どんな事情があるにせよ、被害者ヅラがうまいやつらこそ、マウントを取るのが上手いし、嬉しい。
吐き気がするよね。
口の端をゆがめて、そろそろか、とおれは足を止めた。
直後、男に向って突進する。
不意をつかれた男が笑いを消して火炎放射器を振り回す。
肩や髪に炎がかすめるのもそのまま、おれは勢いよく男の腹部を蹴りあげた。
男が大きくよろける。肩から燃料タンクをずり落としながらも、なんとか体勢を整えようとしたところを、もう一発叩きこむ。
悲鳴をあげて男は顔から地面に倒れた。
「……まったくさ。手間かけさせないでよね」
おれは男の顔近くにしゃがんだ。
ポケットからシリンジを取り出す。ライフル銃と同じ成分の麻酔が入っている。
ライフル銃は放り投げちゃったし。まあ、こういうことがあるかもって準備しておいたんだけど。
男がシリンジ針を見て目を見開いた。首を大きく2、3回振る。
「だったら馬鹿なことやんないで」
吐き捨てて男の肩にシリンジ針をぷっさそうとした。
そのときだ。
女の子の声が響いた。
「おとうさんっ」
手を止める。目をしばたたく。
……おとうさん。誰が?
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