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02 アップルパイの約束☆(後編)


 火炎放射器男女のため、ではなかった。

 おれ自身のためだ。


 それくらいウチの社員のスペックは高い。入社直後のすさまじい2年間訓練は軽く宇宙飛行士になれちゃう内容だ。軍事訓練もあって、その気になれば一般人くらい軽く殺害できる。


 そして──。

 一度でも故意に殺害したらどうなるか。

 おれを含めてウチの連中のことだ。自責の念で立ち直れなくなる。だからこそだろう。わざわざ社内規約に「殺人の禁止」がある。


 いい合っている間に現場が近づいていた。

 部長に声をかけようとして苦笑する。

 通話が切れていた。

 ……黙認してくれるらしい。ありがたい。手早くすませねば。


 気を引きしめ左手を見る。ぽっかりと空いた原っぱ。そこに人影──火炎放射器男がいた。


 男は火の粉が降りかかるのも構わず勢いよく木々に炎を向けていた。ススだらけの顔で目をギラギラさせて笑っている。


「……自業自得だって、見殺しにできれば苦労はしないんだけどさ」


 首を振りつつ停車させ、技術開発部の特製強力耐熱スプレーを全身に噴きつけて外に出る。


 強烈な熱風が頬に吹きつけた。ひとつにしばった髪に火の粉が容赦なく降りかかる。


 おおい、とおれは男に向って大きく両手を振った。


「やめろ。火炎放射器をはなせ。それから──」


 言葉の途中で男がおれに火炎放射器を向けた。


「うお、ちょ、待てって」


 もちろん待たなかった。

 男は勢いよくおれへ投射する。白に近い高熱の炎が大きくのびる。膜のような熱を持って風と炎がおれに迫る。それをSUV車とは反対側へ避けるが、男は火炎放射器を振り回しておれを追った。


「……説得は無理か」


 しょうがないなあ。

 背負っていたライフルサイズの銃を手に取る。

 男の顔色が変わった。

 笑みが消えて獣のように吠え、おれに突進してくる。

 逃げるならまだしも接近してこられたらもう止められない。

 

 半眼になる。両肩をすぼめて体重を斜め前にとり、ストックを肩の付け根にしっかりと当てて──男に銃を構える。

 部長の言葉は忘れていない。

 だからこそ。

 迫る炎をそのままに、おれは男へ発砲した。




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