93鱗目:三日目に備えて
「んじゃあ皆?すずやんには申し訳あらへんけど……文化祭2日目、おつかれー!」
「「「おつかれー!」」」
鈴香達の暮らす街の一角、ちょっとだけお洒落なカフェの一角で鈴香を除く虎白達いつものメンバーはカチャンとコップを合わせる。
「いやー、たかやんとさなっちのクラスだいぶ売り上げ凄いみたいやなー」
「そうね、もう一日中暇なタイミングが無いわ」
「だな、こればっかりは昼過ぎくらいに文化祭が終わるのに助かってる」
「ははは、苦労しとるなぁ」
「まぁ3組には天霧さん居るからね、お客さんの目当ても天霧さんが大半でしょ」
「そうそう。他のクラスからクレーム来るレベルだったから鈴を外に出してやったくらいよ」
「クレーム来てたのか……いや、来ててもおかしくはないか。うん」
そんな風に文化祭の売り上げ等の話しを盛り上がりながら暫く話していると、さてと言って虎白が話だけでなく雰囲気も切り替える。
「いよいよ明日が文化祭三日目や、皆明日来るお客さん達がどんなお客さんか分かっとるな?」
「学校が日頃からお世話になっている団体や組織」
「教育機関のお偉い様方、そして……」
「先輩達の就職先等の外部企業や一部官僚」
「そや、それらの事から考えられる事はただ1つ。そして今回第17回鈴会議の題材でもある────」
「すずやんの文化祭を絶対に守る、その為の作戦会議や!」
バンと机を叩いて立ち上がった虎白がそう言うと、同じタイミングでカラランと来客が来た事を知らせる音が鳴る。
そしてふと虎白達が入口の方へと目をやるとそこには────
「いらっしゃいませー」
「ここがちー姉ちゃんの言ってたお店?」
「そうだよー、今日は沢山楽しませて貰ったからね。帰り道にケーキでもって思ってね」
「わー!ちー姉ちゃんありがとー!」
大きな翼と長い尻尾を持つ、可愛らしい容姿が特徴的な女の子。そう、彼等の今話している当の本人である天霧鈴香がいたのだった。
ガタン!
「どうしてすずやんがここに!?家と真逆やん!」
「しらねぇよ!それよりもどーすんだこの状況!」
「しらないわよ!そう言うのはアンタの方がいい案思いつくでしょ!」
「まぁまて、思わず隠れたが……何かバレたら不味いのか?俺らはここでお茶してただけだし」
「いや、そのだな……」
「こういう風に鈴に黙ってお茶とかしてたのがバレると……」
「「バレると……?」」
「「気にしてないフリするけど尻尾とかがすっごいしゅんとなっちゃってて罪悪感がやばい」」
「「あぁぁー……」」
しかし頭をひっこめ、焦った様子でヒソヒソとそう話していた4人が、大丈夫だろうかと頭をあげた時、丁度こちらを向いていた龍娘と目が合った。
「「「「あっ」」」」
「……え?皆……?」
「えーっと、そのー…………」
「こ、これはだな鈴香」
「そう!あれなんよ!」
「「他人の空似!」」
「そっかー他人の空似かー、はっはっはっ、そうだよね、用事あるからって先に帰った皆がここにいる訳…………ってなる訳ないでしょーがー!」
「「ごめんなさいー!」」
この後、鈴会議はバレなかったが珍しく鈴香が拗ねたりして機嫌を取るのに苦労したが、それはまた別のお話。




