89鱗目:幕開け!龍娘!
いよいよ文化祭、スタートです!
「んむっ」
……ぷにぷになのがほっぺたに…………
「みぃー」
「起こしに来てくれたの……?こまはいい子だね〜」
「みゃー」
顔をぺちぺちと叩いてくるこまの頭を撫でてやりながら、くしくしと目を擦りつつ起き上がった僕はいつも通り拘束具を外して翼を広げて伸びをする。
「さむっ」
ここ最近冷え込んで来たなぁ……文化祭が終わったらちー姉ちゃんと毛布とか買いに行くのもいいかもなぁ。
「さて、着替えないとね」
「みー」
「んー?もっと撫でてって?仕方ないなぁ〜♪」
へにゃーっと顔を緩ませ、僕はこまの頭や背中を撫でてやりながら、器用に尻尾を動かしてクローゼットから着替えを取り出す。
「僕着替えないといけないから、こまは先にリビングに行ってご飯貰っておいで」
「みぃー」
ご飯って聞いた途端、はしゃいだ様子でトテトテ歩いていくの可愛いなぁ……さて。
「いい加減着替えなきゃね、寒いけど。」
とりあえずパジャマを脱いでー…………寒いから脱ぎたくないなぁ……
そんな事を思いながらも、渋々ともこもこパジャマを脱いだ僕は、尻尾にかけた服を机の上に置いて着替え始める。
「ん〜……しょっと」
うへぇー……やっぱりこのタイツのピチってした感覚慣れないや……でもこの裏起毛?っていうやつのおかげかすっごい暖かいんだよなぁ。
尻尾の付け根の所に当たってて変な感じだけど。
とりあえず、翼に当たらないようにシャツを着てからスカートに尻尾を通してから履いて、後は上からブレザーを羽織ればー。
「着替えかんりょーっと」
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「おはよう鈴ちゃん、ちゃんと着替えられたみたいだね」
「おはようちー姉ちゃん。どう?変な所ない?」
着替え終わってリビングに来た僕がそう言ってちー姉ちゃんの前で背中を見せたりすると、ちー姉ちゃんは少し触ったりした後に満足そうに頷く。
「うん、バッチリだね。尻尾と翼も問題無く動かせるみたいだし、それに上手い具合にブレザーで翼と尻尾の穴も隠れてるしね。はいチーズ」
パシャリ
「もー、また写真撮って」
「だって似合ってるんだもの〜。私としてはもうちょっとスカートの丈が短くていい気がするけどねー」
「それは本当に勘弁して欲しい」
冬服まで夏服と同じ悲劇は辿らずとも良い。それに寒いのは勘弁してほしい。
10月も後半となった今日、いよいよ制服も夏服から冬服へと衣替えが行われ、僕は全体的に黒くなった生地の厚い制服に身を包んでいた。
「おはよう鈴……あら、似合ってるじゃない冬服」
「えへへ〜、ありがとさーちゃん。冬服って思ってたよりも暖かいねー」
「おいーっす……お、冬服か。2人とも似合ってるぞー」
「あ!隆継学ランになってるー!」
「全くアンタはいつも簡単にそんなこと言って。でもまぁ、ありがとうね」
「お、おう」
「ふふふ、さっ早い所朝ごはん作って皆で食べちゃおう……ってん?」
何かに気がついたちー姉ちゃんが視線を落とすと、そこにはじーっとこちらを見てくるこまが居た。
「みゃう」
「んー?こまも似合ってるって?よしよし、ありがとねー」
「んみゃうー」
「猫を撫でる鈴ちゃん……可愛いなぁ……尊いぁ……」
「なぁサナ、前々から思ってたんだが」
「えぇ、あんたの言いたい事は分かるわ。鈴ってやっぱり色々と人じゃないわよね」
「だな」
「うりうりー」
「みぃー」
よし!それじゃあ今日から始まる文化祭、がんばるぞー!
こうして文化祭初日の朝はいつもより少し賑やかに過ぎていくのだった。
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「ね、ねぇ……ほんとに今日一日これ着てなくちゃダメなの?」
「そりゃそうよ、この日の為に皆で作ったんだから」
「そうだよー!このお店に合う天霧さんの衣装考えるの大変だったんだから!」
だ、だからって……
「こんなフリフリでフワフワしてる様な服着れるかぁ!」
登校後、クラスの女子にすぐさま女子更衣室へと連行された僕は悪魔やお化けなど様々なコスプレをしているクラスの女子達を前にそう叫ぶのだった。
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「とか何とか言いつつ、ちゃんと着てやる所が鈴香のいい所でもあり甘い所だよなぁ」
「笑うなら笑えぇ」
「いやいや、お前としては複雑かもしれんがすっげぇ似合ってるぞ。可愛くて」
「うあぁぁぅぅ……」
隆継にそう言われ、真っ白な生地に沢山のレースやフリルがあしらってある。
そんな天使をモチーフとした仮装に身を包んだ僕は、これまた天使の羽みたいな被せ物を被せた翼を垂らしながら机に突っ伏してしまう。
「そもそも尻尾が生えた天使なんて居ないでしょ」
「確かにそんな天使は聞かないなぁ。名前とか聞かれたらどう答えるんだ?」
「スズエル」
「尽く手抜きだなおい」
だって半秒クオリティだもん。
「なんならカエルでもいいよ」
「それは両生類、それにドラゴンは分類するなら爬虫類だ。というかお前は爬虫類以前に哺乳類だがな」
「本当に僕は哺乳類なのだろうか」
ゲームに出てくる魔物とかそんな感じな気がする。
「少なくとも生物学的には哺乳類だな」
「その心は?」
「へそがある、あとついでにちく────っでぇ!?何すんだよ!」
「それ以上は言うでないぞ隆継、今回は相手が僕で誰にも聞かれてないからよかったけど」
「まぁ、うん、これは安易だったわ。すまん」
「分かればよろしい」
「にしてもハロウィン仮装喫茶とはなぁ」
「面白い案を考えつくよねぇ」
「だなぁ」
そう言った僕と隆継が改めて教室を見ると、そこには吸血鬼や案山子など、可愛いから面白いまで様々な仮装をしたクラスメイト達がいた。
そう、僕達一年三組の出し物はハロウィンの仮装をしたクラスメイト達が接客をする、時期的にもピッタリなハロウィン喫茶なのだ。
「でもまぁ、正直僕だけ2日目3日目で別の衣装があるのは勘弁して欲しかったなぁ」
「一部完全にネタに走らされてる男子の衣装よりマシだと思っとけ」
「既に半分死にかけの僕の男部分が更に死の間際になるけどね」
「まだ生きてたのか男の部分」
「失礼な、尻尾でビンタするよ」
「すまんかった」
「全く、僕のどこをどう感じたら女の子と思えるのか……とと、そろそろみたいだね。さっ、僕達も働くよ隆継」
「いやもうどこをどう見たとしても感じてもどう足掻いてもお前は女の子────っと、あいよ。さっさと終わらせよう」
そうして僕達の騒がしい文化祭が幕を開けたのだった。
読者の皆様、いつも「ドラゴンガール」を読んでいただき誠にありがとうございます!
いよいよ始まりました文化祭編、少し長めのお話となりますが楽しんで貰えるなら幸いです!
そしてこの度「ドラゴンガール」のブクマが1100件を突破しました!本当にありがとうございます!1000件突破もつい最近だったのに……嬉しい限りです!
体調を崩したりもしましたが、これからも皆様を楽しませられるよう、自分自信も楽しんで書いていきます!
これからもどうか「ドラゴンガール」をよろしくお願いします!




