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87鱗目:文化祭!龍娘!

「でもよかったよ、天霧さんが元気みたいで」


「あはははは……ご心配お掛けしました」


 朝のSHRが終わり、詰めかけてきたクラスメイト達をあらかた捌き終えた僕は、様子を見に来てくれていたむーさんにそう言って頭を下げる。


「いやいや、こっちも人の家を爆破するとかいう訳分からん迷惑をかけたんだ、こっちが謝らないといけないくらいだよ。というか謝らせてくれ」


「それだけはキツく言っといてくれると助かるよ」


 正直、躊躇せず爆破を決行するとらちゃんの行動力だけは本当に恐ろしい……あ。


「そういや、1限目ってなんだっけ?心做しか皆ソワソワしてるみたいだけど……」


 むーさんと話していた僕はふとクラスの雰囲気が浮き足立っているのが気になり、首を傾げながら隆継に何故なのかと聞いてみる。


「あぁそうか、鈴香は休んでたから知らないよな」


 え?何かあったの?まさか僕のせいで先生が退職とか……


「今日はね鈴、1日かけて文化祭での出し物を決めたりとかするそうよ」


「文化祭?」


「そう、文化祭」


「…………文化祭かぁ……ねぇひとついい?」


「なに?」


 僕はそう言うとふむふむと言わんばかりに大きく頷いてから、皆へとこう言い放った。


「文化祭って、なに?」


 ーーーーーーーーーーー


 文化祭とは、学園祭、学校祭等とも呼ばれる生徒達の日常活動による成果を発表する場である。

 というのは建前で、その実は年に一度はっちゃけた生徒達により校内外が飾り付けられ、生徒により多彩な出し物が催されるお祭りである。

 勿論我が校もその例に漏れず開催日である10月末の3日間、学年での出し物とクラス、そして部活での出し物が催される。


「という訳で、学年の出し物の案を出し合う前にまずはクラスの出し物を決めようと思いますが、何か提案がある人は手をあげてください!」


 バッ!


 うおぉっ?!ほぼ全員が手を挙げた!


「ふむふむ、それじゃあ先頭からどうぞ!反対がある場合は遠慮なく!」


 そして流れるように始まったぁ!?


「うちの委員長ってテンポがいいわよねぇ」


「良すぎて逆に不安になるくらいだけどな。なぁ鈴香」


「う、うん……テンポ良すぎてちょっとびっくりした。というか、どんな提案が出るか聞いとかなきゃね。どんなのがいいか僕知らないし」


 丁度僕がそう言ったタイミングで意見を黒板に書く準備が整ったのか、改めて委員長が合図を出すと次々と提案が上がり始めた。


「お化け屋敷とかどうでしょう!」


 最初っからハードなのが……いや、運営側だから大丈夫か、うん。大丈夫なはず。


「プチ縁日!掬い系とか射的とか!屋台を幾つか作って!」


 おー屋台!いいよね屋台!またお祭りで回りたい。


「劇!」


 劇かぁ……赤ずきんちゃんとか?


「迷路!」


 おぉ迷路、ダンボール箱とか組み合わせて作るのかな?


「手品ショーなんてどう?」


 手品!あれってどうやってるのかなぁ。1回やってみたい。


「休憩室」


 「「「「「「「「「「却下!」」」」」」」」」」


「たこ焼きとか焼きそばみたいな食べ物屋は?」


 あ、美味しそう。それなら僕も料理作れるし手伝えそう。


「教室を全部使った等身大人生ゲーム」


 おー、それは面白そうだ。でも人が詰まりそう。


「カジノ、勝った人にはお菓子をあげたりして」


 カジノ?カジノって〜……なんだ?


「スイーツ店!可愛いお菓子とかいーっぱいあるやつ!」


 おぉ!それはいいね!甘いのいっぱーい!


「プラネタリウムなんてどう!?」


 確かに良さそうだけど、どうやって機材を調達するのかなぁ。


「クジ屋さんなんてどう?」


 クジかぁ……まず当たらないからね、アレって。

 それにしても皆よくネタが尽きないなぁ……いやまぁ流石に難しいのが多くはなってきたけど、それでもだよねー。いやー全く皆は凄────


「メイド喫茶なんて────」


「それはダメっ!」


 調子よく皆がどんどん意見を出している中、クラスの男子が出したその案に、呑気に聞いていた僕は思わず脊髄反射で勢い良く立ち上がりながら反対してしまう。


「……あっ」


 やばい、何も考えずに思わずダメだって思って反対しちゃった。


「…………えーっと……天霧さん、なんでメイド喫茶はダメなのかな?」


「えと、その……僕だけの話になっちゃうけど……ほら、メイド喫茶自体は別にいいんだけど、そのー…………メイドとドラゴンの組み合わせはそのー……不味いんじゃないかなー……って」


「そうか?でもメイドにドラゴンで語呂もいいし、例えば委員長の苗字を取ってこう売り出すのもいいんじゃないか?小林さんちのメイドラ────」


「それ以上はアウトー!委員長!これは流そ?!多分女子の皆もあんまりやりたくはないだろうし!ね!?」


 これだけは絶対通しちゃ行けない!僕の勘というかそういうのが全面的に絶対ダメって言ってる!

 今だけだけど女子である事をフルに利用させてもらう!


「うんまぁ、確かにメイド喫茶はあんまりやりたくない人も多数居るみたいだし、これは多数決で決めようか」


 よかった……なんとか即決定ってさせずに済んだ…………


 何とか多数決へと持っていくことが出来た僕はホッと息をつきながら席へと座り、その後の多数決の結果メイド喫茶は却下となった。

 その後丸々1時間あれも違うこれも違うと話し合い、授業の終わりのチャイムがなる頃になってようやく、1年3組の出し物は決まったのだった。

 そしてその日の午後、僕は今────


「天霧ちゃん、校舎前の街灯に連続旗付けて行ってくれない?」


「了解です先輩!」


 飛びながら結びつけていけばいいよね!それに乗ったら折っちゃいそうだし。


「意外とホバリングしながらは難しかったですー」


「凄い、10分かからず終わった……いつもならこれだけで1時間は経つのに」


 ーーーーーーーー


「天霧さん、これ1階まで頼める?」


「任せてっ!」


 ここからなら飛び降りて行くのが早いかな?


「いーよっと!」


「ちょっ!天霧さんここ屋上っ…………無傷で着地してるし……」


 ーーーーーーーー


「天霧さーん!これ校門まで運んでもらっていい?重くて重くて」


「おーけー!」


 そんなに重いのかなー……っと。なんだ、思ってたほど重くないし、むしろ軽いくらいだ。


「持ってくよー」


「助かるよ〜……ってもう行っちゃった…………あ、台車?荷物なら天霧さんがもう持っていったよ……え?さっきの鉄骨全部合わせて200kgくらいある?マジ?」


 ーーーーーーーーーー


「天霧さん」「天霧さん!」「龍娘さん!」「あーさん」「天霧さんー!」「天霧ちゃん」「ドラゴンさん!「鈴香ちゃん!」


「はーい!」


 最っ高に充実しています!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「よしっ!今日も頑張って働くぞー!」


「鈴、働き過ぎ、今日はゆっくりしなさい」


「ほへ?」


 そうかなぁ、別に疲れてもいないしそんな感じは全然しないけど……


「そんな感じはしないって顔してるわね」


「ふみゅっ!?何故バレた……」


「何故って、鈴は顔に……いや、翼と尻尾にすぐ出るもの」


 なん……だと……?!


「とりあえず少し休んでなさい、今日は私達がやっておくから」


 今日もいっぱいお手伝いするぞと気合十分にいた僕は文化祭の準備も2日目にて、早くもさーちゃんからストップをかけられたが顔をブンブンと振って本題に戻す。


「で、でもそんな休む程働いてはないし…………」


「そう言うと思って……虎白ちゃん!」


「はーい!呼ばれて飛び出てトラトラトラー!虎白さんやでー!」


 うおぉっ?!とらちゃんどこからっ!というかその黒子みたいな格好は何!?


 「それはウチのクラスが劇をするからやでー」


 心を読まれた?!


「あの情報は?」


「バッチし仕上がってるでー!」


 情報?仕上がる?


 さーちゃんに名前を呼ばれた途端何処からか出てきたとらちゃんに僕は驚きつつ、僕が2人の会話に首を傾げているとさーちゃんが1つ咳払いをする。


「約4割」


「?」


 4割?値引きかな?


「約4割、書類仕事を除く昨日の文化祭の準備で鈴がこなした仕事の量よ」


「えぇっ?!い、いや、流石にそれは嘘でしょ〜。まさかそんなにやってる訳────」


「ウチの情報網で仕入れた確かな筋やで〜。高い所の飾り付け、大きい道具と重い道具の移動、すずやんのお陰で大きい力仕事は全部おわっとるでー」


「という事よ、もう充分に働いたんだから大きい仕事でも来ない限り今日はゆっくりしてなさい」


 た、確かに飾り付けとか門の設営とか、屋台の骨組み全部運び出したりしたような…………それにとらちゃんの情報は本当に正確だし……


「それじゃあすずやん、今日は大人しくしとくんやで?」


「うぅぅ……はーい」


「よろしい。それじゃあ鈴、とりあえず……」


 ガシッ!


「…………へ?」


「大人しくしておきなさいね?」


「なっ!えっ、あっちょっ!皆!?離しっ、あぁぁぁぁぁぁ…………」


 ニコッと笑うさーちゃんの前で僕はいきなりクラスの女子達にガッシリ組み付かれ、叫び声を残して僕は女子更衣室へと女子達に連れ去られたのだった。

 この後、僕が下着だけを残して服を全部脱がされ翼や尻尾、なんなら角や鱗がある場所等全身くまなく女子達に採寸された時の話は語るまい。

 所で話は少し変わるものの、僕の高校の文化祭は3日間に渡って開催される。

 その際、メインの1年生から3年生までの全27クラスと部活動でのそれぞれ出し物と共に、体育館のステージでも学年毎にまたメインに引けを取らない出し物が行われる。

 そして今年の1年生が行う出し物とは────


「やっぱりクイズ大会でしょ!」


「いーやここは参加型のゲームがいいでしょ!」


「参加型って参加されなきゃ意味ねーだろ!」


「まぁまぁ、それよりも創作映画なんてどう?」


「編集とかできるの?というか天霧さんが居るんだし劇とかどうよ!?本格ファンタジーなのが出来るだろ!」


 「「「「「「「「「ぐぬぬぬぬ…………!」」」」」」」」」


 あ、やな予感。


 「「「「「「「「「天霧さんはどれがいい?!」」」」」」」」」


「えぇぇ〜……」


「あはははは……」


 決まりそうにも無いのである。


「というかそもそも僕はこの会議に呼ばれる必要ないと思うんだけど、話を振らないでよ」


「いやいや、天霧さんは我ら1年生のシンボルみたいなものだから、逆にこの場に居るのが当然では?」


 いやいやいやいや、さも当然の様に頷かないでよ学級委員長の皆さんや。


「ごめんね天霧さん、どうしてもって言われて」


「ううん、委員長は気にしないで。それに今日はさーちゃんにも働くなって言われてたから」


 だからお願いされた時は丁度いい暇つぶしになるぞーって思ってたんだけどね、思ったよりもめんどくさいのに首を突っ込んじゃったみたいだ。


 僕は心の中で大きくため息をつくと、改めてかれこれ1時間近くギャイギャイ言い合っている委員長達を見て、今度は心の中ではなくリアルでため息をつく。


 そもそも学生の出し物なんだし劇とか映画とかクオリティを要求されるのじゃなくていいんだよ。なんなら本当にクイズ大会くらいがいい。


「そういや、他の学年の出し物って?」


「えっとね、3年生は例年通りミスコン、2年生は今年はクイズ大会みたいだよ」


 ありゃ、クイズ大会はダブっちゃってたか。というか────


「例年通り?」


「うん、一応3年生は受験生だからね。勉強とクラスの出し物で手一杯なんだよ」


 そりゃそうか、逆に出し物出来るだけ余裕があるのが凄い気が…………違うな、うん。多分ただの気晴らしだこれ。


「それはそうと委員長は何か案とかないの?」


「わ、私?ないない!そんな私の案なんて……」


「ほんとにー?」


 怪しいなぁ……


「うっ……実は…………」


「実は?」


「料理大会なんて……面白いんじゃないかなぁーって…………思ってたりなかったーり……」


「いいじゃん料理大会!」


「ふぇっ!?」


 恥ずかしそうに言う委員長の手をガシッと取り、僕が尻尾を大きく動かしながら目を輝かせて賛成すると委員長は軽く驚いた後、照れたようにモジモジとし始める。


「そ、そうかな……?」


「うん!すっごいいいと思う!」


 特に今の所出てる案の中だったらずば抜けて!それにこれなら、もし僕が参加する事になっても楽しめそうだしね!


「えへへ……それじゃあ提案してみるね!」


「うん!応援してるよ!」


 僕に自分の案を褒められ背中を押された委員長はそう言うと、未だギャイギャイ言い合っている委員長達に自分の案を提案し始めた。

 その後反対の意見もあったりしたが僕の口添えもあり、その結果今年の1年生の学年での出し物は料理大会に決定されたのだった。


 ーーーーーーーーーー


 ふ〜んふふ〜んふふふ〜んふふんふふ〜ん♪


 さてさてさて〜会議も終わったし、屋台とかも出始めてるから見回ってみよーっと。


「あ、天霧さん!昨日はありがとね!」


「は〜い♪また困ったら言ってねー」


「天霧さん!昨日は手伝ってくれてありがと!これお礼のクレープの券ね!」


「いいの?!ありがとー!」


 やった!クレープのタダ券ゲット!


「いい事はするもんだねぇ〜♪」


 学年会議の後、出し物の準備をしているクラスの前を通る度に様々なお菓子や券を貰いながら、相変わらず働かさせて貰えない僕は暇つぶしに校舎をぶらぶらしていた。


 まぁ僕は丁度出くわした困り事のお手伝いくらいしかさせて貰えないけれど。


「あ、この飴美味しい」


「災い転じて福となす〜ってね」


「きゃっ!」


「んう?」


 今何か足を引っ掛けたような……あっ。


「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?!」


 廊下の交差点で何かに足をひっかけた感覚がした僕が目線を落とすと、足元で変な体勢になっている金髪の子がそこに居た。

 そして僕がその子に慌てて手を伸ばすと────


「あ、ありがと……じゃなくて、貴女の手なんて借りませんわ!それにワタクシは貴女の敵でしてよ!」


 とりそうになった僕の手を叩き、まるで屈辱と言わんばかりな顔でそう言ってきた。


 敵って……演技かもしれないけどそこまで露骨に拒絶されるのは初めてな気がするなぁ。

 でも凄いなこの子、流石にカツラとかだと思うけどキラッキラな金髪に真っ青な目、それに真っ白な肌、まるで外国人だ。


「えーっと……」


「なんですの?」


「その……コスプレ?すっごく似合ってるね。なんのキャラクター?」


 こういうのをコスプレ?って言うんだよね。隆継から教えて貰ったから確かなはず。


「なっ……!コスプレじゃありませんわ!この髪は地毛ですの!地・毛!それにこの目もカラコンじゃないですの!」


「おー、キャラまで……なり切ってて凄いなぁ…………」


「なりきりじゃありませ・ん・の!ほら!」


 隆継に毒されたなぁと思いながら、僕はそう言って頭を突き出して来るその子の髪の毛を少し引っ張るようにして触ってみる。


「あ、ほんとだ。カツラじゃない」


「ふふん♪ワタクシはおばあ様がフランス人なんですのよ♪だからこそ……本当ならワタクシが学年1番の有名人になるはずでしたのに!」


「えぇ……」


 こ、これってツッコミ入れるべきなのか……?


「ですので!今回の文化祭でワタクシが貴女よりも目立ち!そして真の象徴はワタクシという事をしらしめるのですわ!」


「そ、そう……」


「ふっふっふっ……首を洗って待ってるがいいですわ!おーっほっほっほっ!」


「あっ!せめて名前くらい…………行っちゃった……」


 あの金髪ちゃん、一体誰でなんだったんだろ……


 名前を聞くまもなく高笑いを残して走り去った金髪ちゃんを、僕は両手いっぱいに貰った物を抱えたまま、ポカンとなって固まったのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やべー、すごいポンコツ臭のするお嬢様が出てきた! こんなにライバル視してるけどきっとその内純粋すぎる鈴ちゃんに絆されるんだろうなぁ(棒)
[一言] た、大変だー 鈴香たんにライバルがー(棒) しかもクォーターだなんて、なんて強力な属性持ちなんだー(棒)
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