86鱗目:拾い者、龍娘!
いや〜、今日はいい買い物できてよかった〜。
何よりもお肉半額っていうのがよかったよね、今日はこれで何作ろうかなぁ〜。
いつものスーパーで買い物を済ませ、僕は上機嫌に尻尾の先で持った買い物袋をゆらし、鼻歌を歌いながら家へ向かって歩いていた。
「カレーもいいなぁトンカツもいいなぁ。ロールキャベツにハンバーグ、肉じゃがローストビーフ!どれもこれもいいなぁ〜♪っといけない、早く帰らなきゃ」
まさか仲良くなった戦友おばさん達と立ち話してたら1時間近くも経ってるなんてね。これが真夏だったらお肉全滅だよ。
それに夏は飛んで帰ればよかったけどこの時期の空は寒いからねー、あんまり飛びたくないんだよ。
「にしても、雨も降りそうな天気だし、急いで帰らないと」
僕は真っ黒な雲に被われた空を見てそう言うと、ゆったりとした足取りから小走りになるくらいまで足を速めて歩き始める。
「僕の場合どう足掻いても尻尾と翼はびしょ濡れになるからね、雨だけは本当に────────」
ミィー
「………………ミィー?」
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カラカラカラカラ…………
………………よし、誰もいないね。
「ただいまー」
玄関を覗き込んで近くに誰も居ないであろう事を僕は確認すると、小声でただいまと言ってからそーっと足音を立てないよう家へと上がる。
が、しかし。
「あ、鈴ちゃんおかえりー」
「んぴっ?!」
後ろォ!?
「おおっ!?どうかしたの?でもよかったね雨が降る前に帰って来れて。今丁度洗濯物入れてたんだよー」
どうやら洗濯物を取り込みに行っていたようで、僕は外に居たちー姉ちゃんに気がつくことなく、まんまと後ろを取られてしまった。
「ほ、本当にね〜!助かったよほんと、ありがとちー姉ちゃん!それじゃ僕はちょっとトイレに────」
「鈴ちゃん?そのお洋服の中には何が入ってるのかな?」
「……ぇーっとー…………逃げるっ!」
「逃がさん!」
「ぐえっ?!」
洋服の中に隠しているものがバレ、分が悪くなった僕は逃げようとしたものの、ちー姉ちゃんに服を掴まれ急停止してしまう。
そしてその反動で服の中から隠していた物が飛び出し、その隠していた物はムクリと起き上がると、クシクシと顔を前足で洗い───────
「ミャー」
「…………子猫?」
「はうぅぅぅぅぅ…………」
僕達の方をみて可愛らしい声で鳴いたのだった。
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「それで、雨に濡れたら可哀想だから拾ってきてしまったと」
「…………はい」
だって雨に濡れたら可哀想だもん…………せっかくこんなもふもふわふわなこにゃんこなのに……………
テーブルの上に居る僕の髪と同じ色の毛並みを持つ子猫を挟み、僕は翼や尻尾をしゅんと垂らして目の前に居るさーちゃんと隆継に怒られていた。
「あのねぇ鈴。可哀想だからってそんな簡単に生き物を拾ってきちゃダメなの。それもちゃんと死ぬまで面倒を見る覚悟があってじゃなくて、可哀想だからって理由だけで」
「うぅぅぅ……でもぉ…………」
「鈴香、これはサナの言う通りだぞ。それにお前だってそれが分からない訳じゃないだろ?確かに可哀想ではあるが、今回は大人しく返してこい」
ぐぬぬぬぬ、隆継の癖にぃ〜〜。
「うぅぅうぅ〜……ちぃねぇ〜ちゃ〜ん……」
「うっ……!そ、そうだねぇ〜。今日はもう遅いし1晩くらいならいいんじゃないかな?その後鈴ちゃんが本気で飼いたいならまたお話ししよ?2人もそれでいいね?」
「───!ありがとうちー姉ちゃん!よーし、お前の名前はみゃーすけだ!」
「ミィー」
ちー姉ちゃんにそう言われ僕は満面の笑みを浮かべて子猫を持ち上げると、そのまま暫く子猫を見つめてからぎゅうぅっと抱きしめる。
「千紗さんは鈴に甘いですねぇ……まぁ、鈴もこの間の事があったばっかりだし」
「だな、それに鈴香すっげぇたのしそうだし。ただまぁ…………」
「「もうちょっと名前はちゃんと考えよう?!」」
「は、はーい」
こうして僕に新しい家族が出来ました。




