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73鱗目:お泊まり会!龍娘!

「と、いうわけで。明日から創立記念日を入れた4連休になりますが、皆さんハメを外しすぎないようにして下さいね。それじゃあ解散!」


 SHRが終わり、代永先生がそう言って教室を出ていくとクラスメイト達は盛り上がり始め、教室はあっという間にまるで夏休み前の様な賑やかな雰囲気に包まれる。


「んんーー!おわったぁ!」


 連休前っていうのもあって今日はちょっとハードだった………けど!家に帰ってパパっと宿題を全部片付けさえすれば休み中は自由だー!


「お疲れ鈴香。気を抜きたいのは分かるが翼が棚に当たりかけてるから気をつけろよ」


「おっと危ない、ありがとう隆継。で、とりあえずこれで明日から4連休となる訳ですが、2人は何す────」


「すずやーん!4連休やでー!」


「……」


「……」


「…………わぁー、びっくりだぁー」


 僕が伸びをしながら2人に連休中何かやるのか聞こうとしていた所で、バンッと大きい音を立てて扉を開けて教室にとらちゃんが入ってくる。

 そしてそんなとらちゃんにやっぱり来たと行った顔で2人が無言になってるのを見た僕は、気を使ってとらちゃんにリアクションを取ってあげる。


「すずやんに気を使われた!そしてさなっちとたかくんはとうとうリアクションすら取ってくれなくなった!!」


 いやだって……


「いつも通りなら」


「今日もくるだろうなぁって」


「予想出来てたもの」


「そんなぁー……あでっ!痛いっ!りゅーくんに拳骨されたぁー!」


「あんなに勢いよく扉を開けるバカが居るかバカ。すまん、虎白がまた迷惑かけた」


「ううん大丈夫、いつもの事だし。それに多分クラスの皆ももう慣れちゃってるから」


 何となくとらちゃんが来るであろう事が予測出来てた僕達がとらちゃんに3人息ピッタリでそう返すと、とらちゃんはぷくっと頬を膨らます。

 そしていつの間にかとらちゃんの後ろにむーさんが居て、頬を膨らましたとらちゃんに拳骨を落としてからそう謝ってくる。

 もはや恒例行事だ。


「そういやウチのクラスは山みたいに宿題出たんやけど、すずやん達のクラスはどれくらい出たん?」


「授業担当の先生はとらちゃんのクラスと同じだし多分僕達も同じ量だよ。だから沢山遊ぶ為にも帰ったら宿題やろうなー?隆継ー」


「…………というわけで、帰ったら俺は鈴香によって宿題をさせられることになっているんだ」


「たかくん頑張ってーや!でもウチも早いとこ宿題やらんとあかんなぁ……そや!せっかく連休なんやし、すずやん家で宿題処理の勉強会兼お泊まり会やらん!?」


「あら、いいじゃない。それなら朝早くからも出来るし、早く終わればその分沢山遊べるからアタシも賛成よ」


 おぉ、ナイスアイデーア。それなら僕もー……って────


「お泊まり会?!僕の家で!?」


「おぉ、すずやんが今までにないくらい驚いとる」


「いやっ!だって!」


 僕の事情知ってる2人ならともかく、流石にとらちゃんはだめじゃない?!それに僕が男だってバレるものがあるかもだし!


 そう思う僕を他所にそのままむーさんまで巻き込んでしまい、僕が口を挟む間もなくお泊まり会が開催される事が決定し────


 ーーーーーーーーーーーーーーー


「おじゃましまーす!すずやん来たでー!」


「早かったねぇ……とりあえずいらっしゃいとらちゃん、それにむーさんも。あんまり面白いのは無いけど楽しんでいってね」


 結果とらちゃんだけだと不安だということもあり、今日から火曜の夕方までむーさんも入れた勉強会兼お泊まり会が開催される事になったのだった。

 ちなみに二人が来るまでに必死に僕が元男である証拠を隠そうとしたものの、そんな物がそもそも無かったのは言ってはいけない。


「もちろんや!沢山遊ぼうなーすずやーん!」


「遊ぶ前に先ずは宿題やらないとねー。むーさんも気まずいかもだけど楽しんでいってね」


 男2人に対して女4人だからね。リラックスは出来ないだろうけど、是非とも楽しんで行って欲しいものだ。


 早速抱きついて来ようとしたとらちゃんを小指1本でおさえながら、僕は少し苦笑いでむーさんへそう言うと2人を家の中へと通す。


「ごめんね天霧さん。虎白の突然の思いつきで毎回迷惑かけて。はいこれいつものお礼、今日の晩御飯の食材にでも使ってね」


「ありがとむーさん!でも別に気にしなくていいのにー……っておぉ!これは立派なキャベツ!それにお肉とかも沢山ある!むーさん助かるよー!」


 これなら今日はあえて鍋とかいいかもしれない。あーでも玉ねぎとかもあるからやっぱり定番のカレーとかも……


「喜んでもらえて良かったよ」


「今日は盛大に腕を振るうからね!」


「それは楽しみだ」


 僕はむーさんから貰った沢山の食材を抱えて何を作ろうかと考えながら、2人と1緒にリビングへと向かう。

 こうして、僕達の2泊3日のお泊まり会が始まった。


 「「つーかーれーたー!」」


 とはいえ先ずは本来の目的である課題の処理が最優先な訳で、風鈴の音が響く座敷で隆継ととらちゃんが疲れ果てた声を上げたのを聞き、僕が時計に目をやる。

 すると壁にかけてある時計の針は6時半を指していた。


 もう勉強始めてから2時間か……時間が経つのって早いなぁ…………さて、そろそろ晩御飯作り始めた方がいい時間だし、それに────


「隆継ととらちゃんも限界みたいだし、ここら辺で今日の勉強は終わろうか。さーちゃん達もそれでいい?」


「この調子なら明日の午前中には終わりそうだし、アタシは終わっても大丈夫よ。鈴と武玄くんはどう?」


「僕もそんな感じ、思ったよりも宿題進んだよー」


「俺もだね、今日はいつもより遥かに宿題が捗ったよ。それもこれも理数特化がいるからだな」


「そうね、ありがとう鈴」


「あうあ〜2人ともやめて〜〜」


 2人の伸ばしてきた腕に頭をわしゃわしゃと撫でられながらそう言われ、僕はキュッと目を閉じたまま照れ臭くて少し耳を赤くする。


 頭を撫でられるのは好きだけど……さーちゃんはともかく、むーさんに撫でられる事ってないからなんか恥ずかしい!というか照れくさい!

 でもお父さんに撫でられるってこんな感じなのかなぁ。


「なぁ朱雀峯さん」


「なにたかくん」


「あの3人ってやっぱり人じゃないわ」


「わかる」


「ちゃんと宿題やってただけで……少なくともさーちゃんとむーさんは間違いなく完璧に寸分の隙もなく人間だよ。さっ、今日は晩御飯沢山作らなきゃだから皆手伝ってね」


 「「「「はーい」」」」


 頭を撫でられている僕を他所に、そんな話をしていた2人に僕がツッコミを入れてから皆にそう言うと、皆は快く返事をしてくれた。


 ーーーーーーーーーー


「うぅ〜〜……目に染みるぅ〜!」


「虎白ちゃんは玉ねぎ相手にノックアウトかー」


「だって目に染みるんですもん!というかすずやんがおかしいんや!なんで顔色ひとつ変えんで玉ねぎ猛スピードで千切りできるん!?」


「ふっふっふっ……僕には日常生活で地味だけどとても役に立ってる瞬膜さんがあるのだー!」


 本当、瞬膜さんまじ最高。


 僕達が料理に取りかかり始めた所で帰ってきたちー姉ちゃんにそう言われ、悔しそうに言うとらちゃんに僕は上機嫌に尻尾を揺らしながらドヤ顔でそう言い返す。


「瞬膜?なにそれ?」


「ほらこれこれ、目に透明な膜が被さっててそれが動いてるでしょ?これのことだよー」


 あ、地味に瞬膜をちゃんと意識して動かしたのって初めてだ。ちゃんと見えてるかな?


「ほんまや!なんか横向きに膜みたいなのがすずやんの目に被さって動いとる!えー!なんやそれ!?すずやんずるい!」


「ずるくありませーん。僕の体の機能でーす。さっ、とにかくまずはカレーをさっさと作っちゃわないと」


 とらちゃんの方を向いてからかうように瞬膜を見せた僕は、ずるいと言ってくるとらちゃんにドヤ顔のままそう言うと再び料理に取り掛かる。


「でもやっぱり瞬膜云々を抜きにしても鈴香の料理のスピードは凄いよな。包丁とかトントントンじゃなくてトトトトトって感じだし」


「あ、隆継とむーさんおかえり。お風呂掃除ありがとね」


「俺らは料理出来ねぇからな、これくらいはやるさ」


 ひゅー、流石隆継ー。

 うちのお風呂って僕の都合上すっごい大きいから毎日洗ってくれるのってすっごい助かるんだよね。隆継に改めて感謝だ。


「俺は一応料理できるけどな」


「よし、1回黙ろうか龍清」


「はいはい、とりあえず2人はアタシ達が料理してる間にお皿とか用意しててくれないかしら?その後は好きにしてていいから」


「あいよー」「わかった」


 お願いしていた風呂掃除から帰ってきた男2人はさーちゃんにそう言われ、僕手作りの水晶食器を取るべく食器棚へと向かう。

 そしてそんな彼らに僕はありがとうとカレーの具を炒めつつ、手を顔の前に持ってきてから目を閉じて軽く頭を下げるのだった。

 この後出来上がったカレーを皆で食べたが、いつもより賑やかな食卓はとても楽しく、カレーは倍美味しく感じた。


『────という訳で次回!未知の生物へと迫る探検隊!乞うご期────』


「あがりー!っと」


「あーん!また最下位やー!すずやん慰めてー!」


「あらら、よーしよーし」


 またとらちゃん負けちゃったかぁ。まぁでもとらちゃん結構顔に出ちゃってたもんなぁ……そこを治さないと勝つのは難しいだろうなぁ。さて────


 ババ抜きの最下位争いで隆継に負けたとらちゃん

 に抱きつかれ、なんとも言えぬ顔で僕はよしよしと頭を撫でてあげる。

 皆で晩御飯を済ませた後、そんな風にテレビ番組をBGMにしてトランプで遊んでいた僕達は、夜遅くにも関わらずワイワイと盛り上がっていた


「さて、それじゃあそろそろお風呂にして寝よっか」


 もう10時半だしね。どうせとらちゃんはお布団入ってからなかなか寝ないと思うし、これくらいの時間で寝るように言っとくのが正解だと思う。


「えー、もう寝るんー?せっかくなんやしもっと遊ぼうよすずやーん」


「だーめ、明日は朝早く起きてから残ってる分の課題終わらせるって言ったでしょ。ほら片付けて片付けて」


「ぶー。すずやんのけちー」


「そうです、僕はけちんぼなのです。だからわがままいう子のご飯を朝昼晩もやしだけにしてやるぞー。勿論、隆継もだからね?明日の朝船漕いだりしたら……」


「な、何言ってんだ鈴香!そんな事、する訳ないだろぉ〜?」


「だよねー」


 言わなかったら絶対遊ぶ気だったな隆継。念の為鎌かけて良かった。


「さ、それじゃあとりあえずお風呂に入りますか」


 「「「「はーい」」」」


 顔を引き攣らせる隆継に笑顔でもう1つ圧力をかけてから、パンパンと手を叩いて僕がそう言うと皆は返事をしてそれぞれお風呂へ入る準備をし始めるのだった。

 しかしながら女子が男子の前でお風呂の用意をする訳にも行かないので、先に寝る部屋分けをしていたのだが……


「んで、とらちゃんは予想出来てたけどさーちゃんもこっちに来るのね」


「鈴はアタシだけ1人で寝ろって言うの?」


「そんな事言うはずないから2人分のお布団を今僕が持ってるわけなんだけどね?」


 ぺたぺたといった女の子らしい軽い足音が3人分響く暗い廊下の中、僕はさーちゃんととらちゃんの後を2人分の布団を抱えて歩いていた。


「それにしても、珍しいくらいすんなりとすずやんが部屋で寝る事許してくれたなぁ」


 まぁお泊まり会やるってなった辺りからどうせ僕の部屋でとらちゃん寝るんだろうなぁって分かってたし、今更さーちゃん1人増えた所で問題ないさ。


「それは虎白ちゃんが言うことが大体いつも突拍子もないからじゃないかしら?分かってさえいれば鈴は大体1つ返事でOKしてくれるわよ」


「ってことは……ウチがそう言うって予想されてたって事?!」


 お、とらちゃんが理解した。


「まぁそうなるねー」


「それって地味に酷くない!?」


「ふふふ、虎白ちゃん気にしない気にしない。ほら鈴の部屋ついたわよ」


「お!ここが時々認識ズレてるガールであるすずやんのお部屋か!はてさて一体どんなお部屋か」


 時々認識ズレてるガールて………さてはさっきの予想されてた仕返しだな?


 イッヒッヒと言わんばかりの顔で僕の部屋へと入っていくとらちゃんを見て、僕はそう思いつつ2人に続いて部屋へと入る。

 そして運んできた二人の分のお布団をよっこらせ置いてどこに引こうかと顔をあげると、さっきまで横にいたとらちゃんがクローゼットを開けようとしていた。


「さーてすずやんは一体どんな服をぉっ?!」


「人の服を勝手に見ようとするのはどうかと思うよとらちゃん。後見たとしても全部ちー姉ちゃんが持ってきたやつだから、分かるのはちー姉ちゃんの趣味だけだよ」


 まぁ服はね、服は。そう服は。


「わっ!わかった!わかったから宙吊りは堪忍してー!」


「仕方ないにゃー」


「びっくりした……でもすずやんの部屋って、置いてあるぬいぐるみがにゃんこうのぬいぐるみしかないのを除けば普通の女の子らしい部屋やねー」


 良かった良かった、変とか言われなくて。でも普通の女の子らしいねぇ…………まぁ、うん、素直に喜べないのは仕方ないよね。


 尻尾で吊り上げたとらちゃんをお布団の上に降ろした僕は、とらちゃんによる部屋の評価を聞き微妙な気持ちになったのだった。

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