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66鱗目:涼しさを求めて、龍娘!

 お盆も過ぎて夏休みもいよいよ残り半月程になった日の朝、皆より一足早く起きた僕はリビングで水を飲みながらテレビで今日の天気や気温を見ていた。


『今日の気温は今年の夏でも一番の暑さで、気象庁からも長時間の外出は危険との発表が────』


 うへぇ、今日ってそんなに温度高くなるのか。

 正直エアコンつけると体冷えて寒くなるからあんまりつけたくないんだけど……これは皆の為にももうつけとこうかなぁ…………ん?


「あれ?エアコンつかない?」


 もしかして…………


 ーーーーーーーーーー


「えー?!エアコン壊れてるの!?」


「うん。ごめんねさーちゃん」


「あ、いや、壊れたのは鈴が悪いわけじゃないもの。謝る必要はないわ」


 隆継やちー姉ちゃんに続いてリビングに涼みに来たであろうさーちゃんに僕が手を合わせて謝ると、さーちゃんは僕の頭を撫でながらそう言ってくれる。


「サナ、新築のエアコンが壊れてるとかいう意味がわからない事態に驚くのは分かるが大声出さないでくれ。ストレスがマッハで溜まってしまう」


「こんなに暑いと苛立つのは分かるけど、少なくとも肌着とパンツだけのあんたの姿よりかは何倍もマシよ。

 鈴を見習いなさい鈴を、元はあんたと同じ男なのにこんなにしっかりしてる」


「あはははは……」


 肌着とパンツだけで床に寝転んでいる隆継に冷めた目を向けてさーちゃんはそう言うと、椅子に座ってから机にぺたんと倒れ伏す。


 でも僕も去年まで暑い日は家であんな感じだったからなぁ…………ちょっとだけさーちゃんの評価が胸に痛い。

 というか服装関連は未だにちー姉ちゃんの管理下だしね。


「ただいまー……ってさなかちゃんもリビングに来てたのね」


「あ、千紗さんおかえりなさい。アタシもちょっと涼みに来たんですけど、エアコン壊れてるみたいで」


「そうなんだよねー。本当たまったもんじゃないよ。ねー鈴ちゃーん」


「うわっととと、いきなりは危ないよちー姉ちゃん。それで修理どうだって?」


 さーちゃんにそう言いながらぐでーんと僕へ倒れ込んでくるちー姉ちゃんを僕は翼で受け止めて、ちー姉ちゃんがリビングを出てた理由である電話の結果を聞いてみる。


「そうそう、修理早くても明日になるんだって」


 「「えぇー!!」」


 あらららら……そりゃきつい。

 隆継なんて今ですら若干水溜まり出来てるくらい汗かいてるのに……大丈夫かなぁ。


「嘘だろおい。短くても明日までこの暑さの中過ごすのか?」


「それは……流石に勘弁願いたいわ…………」


「ちょっと、これはねぇ……」


 流石にこのまま修理まで我慢って訳にするのはまずそうだなぁ……何か、何か涼しくなるような事……


「うーん…………ん?」


 ぐでーんとなってる皆を見て僕が顎に手を当てて涼しくなるような事を考えていると、ふと皆の視線が僕に向けられていることに気がつく。


「え、えーっと……皆?どうかした?僕に何か?」


「いや、鈴ちゃんに何かあったって訳じゃないんだけど……」


「鈴ってこんなに暑いのに……」


「顔色ひとつ変えない所か汗一滴もかいてねぇなぁって……」


 あ、なんかやな予感。


 「鈴ちゃん!」「鈴香!」「鈴!」


「逃げる!」


 「「「逃がさない!」」」


「みゅにゃあぁぁぁー!!!!」


 嫌な予感を感じた僕はくるりと身を翻し3人から逃げようとしたものの、逃げ出すのが少し遅く、僕は3人に飛び付かれて床に押し倒される。

 そしてそのまま3人は僕の翼やら腕やらに抱きついて来たものの、思ったよりも冷たくなかったからだろうか、なんだか微妙な雰囲気になってしまう。


「なんか……悪かったな鈴香」


「ごめん鈴。アタシちょっと暑さでやばいかもしれない」


「う、ううん。気にしないで二人共。暑いんだから仕方ないよ、うん。」


「鈴ちゃんが暑さにすっごい強いのかなぁ」


 「「なるほどぉー」」


 皆だいぶ参ってるなぁ………何か涼めるような事でもあれば……ん?


 「とらちゃんから電話?もしもし」


『やっほーすずやん!元気しとったー?』


 「うん。僕は元気だけど……」


『何かあったん?』


 「ちょっとクーラーが壊れたみたいでね。僕以外の皆が死にかけてるんだよねぇ」


『あらら……でも逆に丁度よかったかもしれへんな』


 「丁度いい?」


『せや!実はな、今日うち流しそうめんするんよ!それですずやん達もお誘いしよう思て────』


 「「いくっ!」」


 「うわぁっ?!」


 今も抱きついてるちー姉ちゃんと違い、僕が冷えてないのにガッカリしながら離れた二人は、とらちゃんと僕の電話を聞いていたのか食いつく様にそう言ってくる。


『お!二人もそこおるん?なら決まりやな!ウチで待っとるでー!』


 プツッ、プーップーップー……


 「えっ、あ?と、とらちゃん!?」


 き、切られた……


 「えーっと、行く?」


 「「行く!」」


 こうして、僕達はとらちゃんのお家にお邪魔しに行く事になったのだった。


 ーーーーーーーーーー


 まだ来たの2回目だけど、やっぱりでかいなぁ…………


 ピーンポーン


「そしてこの威厳ある門に付けてあるインターホンの違和感よ」


「隆継、そう言うのは突っ込んだらダメだよ」


 まぁ僕も気になっちゃいたけどさ。


「そうよ、アンタもよく言ってるじゃない。突っ込んだら負けだって」


「うんまぁ、そう意味でもあるっちゃあるんだけどな?」


 「というか、私まで来てよかったのかなぁ?」


 「とらちゃんも隆継とさなちゃんしかダメとは言ってないから」


 相も変わらず立派なとらちゃんの家にある門の前で僕達がそんな話していると、違和感バリバリなインターホンからとらちゃんの声が聞こえてくる。


『お、すずやん達来たんね!門の鍵は開けてあるから早いとこ中に入ってきてな!』


「うん、わかった。それじゃあみんな行こっか」


 「「「はーい」」」


 僕が返事をするとインターホンから通信の切れるような音が聞こえ、それを聞いた僕達はとらちゃんに言われた通り門を開けて中へと入り、家へと上がる。


「皆いらっしゃーい!今日は来てくれてありがとうな!」


「せっかくのとらちゃんからのお呼ばれだもん、行かない訳ないよ!」


 それに流しそうめんだっていうからね!あれテレビで見てからやってみたかったんだよー!


 「こんにちはー。今日は鈴ちゃん誘ってくれてありがとうね。これ、差し入れにどうぞー」


 「あ、これはお姉さんご丁寧に。お姉さんも連れてきてくれたんやね!またお話したかったから嬉しいわぁ」


 そんな風にちー姉ちゃんとの挨拶も済ませたとらちゃんに僕は握られた手を振られながら、流しそうめんが楽しみで尻尾を振りつつ目をキラキラさせていた。


「それでもわざわざこの暑い中虎白のわがままで迷惑かけたな。せめて今日は楽しんで行ってくれ」


「おう、そうさせて貰うぜ龍清」


「アンタは態度が大きい。という訳で流しそうめん隆継が一番後ろね」


「ひっでぇ!鈴香に全部食われるじゃん!」


「隆継、それも結構僕に酷くない?」


 ま、まぁさーちゃんも隆継もなんやかんや楽しそうで良かったよ。

 特に隆継は結構無理矢理連れてきたからね。本当に良かった。


「あはははは!やっぱり皆と居ると楽しいなぁ!それじゃあもう用意はしてあるから早速行こうか!皆こっちやでー!」


 とらちゃんはそう言うとサンダルをぺたぺた言わせて玄関から出て、僕達を流しそうめんの用意をしてある場所へと案内してくれる。

 そしてとらちゃんの後を着いて少し歩いていくとそこには、立派な庭の一角にこれまた立派な流しそうめんの舞台が用意がされていた。


 「「「「おぉー!」」」」


 凄い!思ってた通りというか想像通りだ!


「これはテンション上がるな!」


「えぇ、ちょっとこれはテンション上がるわね。鈴は……聞かなくても分かっちゃうわね」


「はっはっはっ!そんなに尻尾と翼を動かす程喜んでくれるなんて誘った甲斐があったなぁ。なぁ虎白!お友達の二人とお姉さんも今日は来てくれてありがとうな!」


 そう言って素麺の入ったザルを抱え、廊下の奥から出てきたとらちゃんのお父さんである雅紀さんは、嬉しそうに僕達へ笑顔を向けてくる。


「あ、雅紀さん!お久しぶりです!」


「お久しぶりです雅紀さん」


「えっ、二人ともその人知ってんのか?というか見た目完璧にあれだけど大丈夫なのか?ていうかまず誰?」


「うん、まぁね」


 たぶん雅紀さん自己紹介するだろうし黙っとこう。ちー姉ちゃんは誰か知ってそうだけど、隆継の反応が楽しみだ。


「天霧ちゃんはこの間の事もあるからな、精一杯おもてなしさせて貰うで!」


 なんともなかったんだからそんな気を使わなくてもいいのに〜。でもまぁ。


「ありがとうございます!楽しませて貰いますね!」


 別に拒否することでも無いと思った事は言わずに、そう言って僕はニコッと雅紀さんに笑顔を返す。

 すると雅紀さんは満足気に頷いて隆継の方へと向く。


「それでそこの君とは初めてやね、俺は虎白の父の朱雀峰雅紀っちゅうもんや。よろしくな!」


「あ、はい。よろしくです……ってえぇぇぇぇえ?!朱雀峰さんのお父さん!?えぇぇーー!!」


「ぶふっ!ナイスリアクション隆継…………!あダメだっ!あははははははっ!」


 「初めまして。鈴ちゃんの姉兼保護者の天霧千紗です。いつも娘さんには妹がお世話になってます」


 「これはご丁寧に。ごっつぅ美人さんがおる思てたら龍の嬢ちゃんのお姉さんでしたか。こちらこそ娘がいつもお世話になっとります。今日は楽しんでいってくださいな」


 隆継とちー姉ちゃんの方へ向き直した雅紀さんが自己紹介をすると、隆継は僕の思っていた以上の反応を見せてくれてそれを見た僕は大笑いしたのだった。

 そしてそんな隆継とは違い、流石にちー姉ちゃんは大人な対応をしていたのだった。

 ちなみにこの後、僕は食べる方より流す方にハマったのは気にしてはいけない。


 ーーーーーーーーーー


 「いやぁー食べた食べた。何人前食ったかなぁ」


 「あんたは食べ過ぎなのよ。鈴を見習いなさい鈴を。きちんとお手伝いしてたでしょう」


 「あれはほら、流すのが楽しかっただけだから」


 「なんにせよ、皆が楽しそうで私は良かったよー。ちゃんと学生生活を謳歌してるみたいでお姉ちゃんは安心です」


 そんな事を話しながら、お喋りしたり遊んだりで夕暮れ時までお世話になった僕達は、オレンジ色の空気の中ゆっくりと帰路に着いていた。

 そしてふと、僕はひとつの事を思い出す。


「そういや僕の部屋にも確かエアコンあったような?」


 「「「え?」」」


 「確か三浦先生が「鈴香は若干爬虫類の身体特徴があるから、変温体質だった時用につけとくからな」とか何とか言ってつけてた気が……」


 山の近くだし、今まで過ごしやすかったから忘れてたけど。


 そんな僕のぼやきを聞いた3人は、じっと座った目で僕を見てきて……


「鈴〜?」


「鈴香……」


「鈴ちゃーん?」


「あはははは……」


 えーっとー……


「……ごめーんちゃい♪」


 そうあざとく謝るのだった。

 この後、リビングのエアコンの修理が終わるまで皆が僕の部屋に居着いていたのは、言うまでもあるまい。



読書の皆様、今回も「ドラゴンガール」を読んで下さりありがとうございます。

皆様のおかげで投稿開始から2ヶ月が経ちました!

そんな所で申し訳ございませんが、来週1週間はおやすみを頂きます。

色々と理由はありますが、どうか御理解とご協力の程よろしくお願いします。

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