56鱗目:ゲーム!龍娘!
「おーい鈴香ー」
「んー?なーにー隆継ー」
翼や尻尾を伸ばせる程広くて柔らかいソファーに少し沈み込んでスマホを弄っていた僕は、尻尾を持ち上げて先っぽをぴこぴこと振り隆継にここに居る事を教える。
「テレビ使ってもいいかー?」
「テレビー?」
んー、特に見たい番組もないし譲ってもいいかな?
「いいよー。その代わりチョコ氷アイス1つ取ってー」
「あいよー」
隆継がそう言うと返事をするとリビングの奥から冷凍庫を開ける音が聞こえてきて、それを聞いた僕が両手を上げてアイスを待っていると───
「ぴぅっ?!もー!隆継!」
してやられた!
首筋にアイスを当てられて、変な声を出して翼を広げながらビクッとしてしまう。
「はっはっはっ!悪かった悪かった。ほらアイス」
「全くもう……あむっ。ん〜♪」
やっぱりこれ美味し〜♪
入ってる氷のつぶつぶがシャリシャリしてていいんだよねー。しかも氷のおかげでチョコ系アイスの宿命たる喉の乾きが起きない。
ソファーに座り直しココ最近のお気に入りであるアイスをスプーンで食べながら、僕は目の前でテレビの画面を切り替える隆継を眺める。
そういや隆継がテレビでゲームしてるのは知ってたけど、実際にやってる所はあんまり見た事ないなぁ。
「ん?どうした鈴香」
「いやー、改めて隆継がゲームしてる所ってあんまり見た事ないなぁって」
基本的に僕は皆の部屋には入らない事もあり、部屋で何をしているか、どんな物を持ってるかはあまり知らない。
千紗お姉ちゃんのお部屋なんかすごい事になってそうだが、なんだか怖いので絶対に行かない。
「言われてみれば………そうだ、よかったら一緒にやってみるか?」
「いいの?」
「おう、勿論だ!何かやってみたいのとかあるか?」
そうだなぁ……ゲームに何があるか自体よく知らないけど………あ、そうだ!
「あれ!あれやってみたいっ!この間CMであってたズバッ!とかズシャァ!とかいって人吹っ飛んでたやつ!えーっと確か超乱闘スマ……スマ?」
「スラッシュペアレンツだからスマじゃなくてスラだな。あれ操作は難しいけど面白いんだよなぁ。んじゃコントローラー取ってくるからちょっと待ってな」
「はーい!」
この間CMで好評発売中と言ってたゲームを僕が身振り手振りで表すと、隆継はどのゲームか分かってくれたようで、部屋からそのゲームを持ってきてくれる。
「────って感じだ、分かったか?」
「多分……大丈夫!」
少し難しそうだけどやってみれば何とかなるでしょ!
「うしっ、ならやるか!コンボとかはまだ分かんないだろうから、やりたいキャラでやりたいようにやるといいぞ」
「よーし!頑張るぞー!」
やり方と操作を隆継に教えて貰った僕は尻尾でソファーをぽふぽふと叩きつつ、隆継が対戦モードという所を押して画面が切り替わり使うキャラを選び始める。
沢山あるなぁ……あっ!左上のさっき教えてもらう時に使ったやつだ!これにしようかなぁ……でも右下のも可愛いなぁ。
隆継もやりたいキャラでやるといいって言ってたし、せっかくだしこれにしてみよ。
「おっ、そのキャラ選んだか。じゃあ俺はこいつにしよう。最初暫く手出ししないから、その間にキャラ動かしてモーション確認してみな」
「うん、分かった」
そう話している内に開始の合図とともにキャラクターが登場すると、僕は隆継に言われた通りキャラを軽く動かしてみる。
「おっ?おぉー……おおぉー!速い!隆継このキャラすっごい足速い!」
あ、でもすぐ止まる。これならそのまま外に落ちるとかはなさそう。
「それがそのキャラの特徴だな。代わりに吹っ飛ばされやすいから気をつけろよ。それじゃあ俺も動くからなー?」
「う、うん!よっ!はっ!」
「お、なかなかやる……なっ!と!」
吹っ飛んで外にでちゃった!えっとえっと!
「鈴香!ジャンプジャンプ!」
「いーよっと!せーふ!わっ!なんか技出た!」
「うおっと!」
「あっあっあっ!」
隆継がわざと相性の悪いキャラを使ってくれてるのだろうか、なかなか白熱している勝負に思わず手に力が入る。
「あっぶねぇ!このっ!」
「あっ!隆継酷い!それっ!」
「なかなかやるなって、どうしたどうした?!」
「わっ、わかんないっ!なんか勝手に操作が……あぁぁ!」
自分の操作していたキャラがいきなり右に走り出し、僕はどうしたのかと慌てて手元のコントローラーを見て短く叫び声をあげる。
「ご……ごめん隆継……」
力込めちゃった……
「あー……いや、うん。仕方ねぇよ、うん」
僕が力を込めてしまった事で手の形に凹んで壊れてしまったコントローラーを見て、僕と隆継の間になんとも言えない気不味い雰囲気が流れる。
「ま、まぁ!もう後4つコントローラーあるし!別のゲームやるか!」
「う、うん!えっ?4つ!?多っ!」
ま、まぁとりあえず……これは今日の晩御飯少し豪華にすることで許してもらおう。うん。
この雰囲気を良くしようと気を使ってくれる隆継を見て、僕は心の中で手を合わせて感謝するのだった。
その後、パズルゲームで隆継相手に10連勝したのはまた別の話。




