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47鱗目:裏山!龍娘!

「だからこれはだな、ちょっと外に出てくるだけで別に……」


「外に出るだけってこんな朝早くから一体なにを……ん?確か去年も…………あんた高校生にもなってまだ」


「いいだろ別に、好きなんだからさ!」


「んんぅ……二人共どしたの…………こんな……ふぁぁぁ……朝っぱらから……」


 まだ日もでてない朝も早い時間、トイレの帰りになんだか玄関で言い合っているさーちゃんと隆継を見た僕は、眠い目を擦りながら何かあったのかと声をかける。


「あっ鈴、聞いてくれない?」


「なぁーにぃー……」


 聞くのはいいけど……眠い…………


「こいつこの歳にもなってまだ虫取りしようとしてるのよ」


 そう呆れたように言うさーちゃんに、隆継はジトっとした目を向けてムスッとしたような声色で反論をする。


「虫取りで違わなくはないけど、俺が取るのはカブトとクワガタだ。そこら辺の虫と一緒にしてもらっちゃこまる」


「だからそれが子供っぽいって、ねぇ鈴?…………鈴?」


 呆れた様子のさーちゃんが同意を求めるように僕の方を振り向いてくる。

 しかし僕は……


「かぶと……くわがた……!」


 カブトやクワガタを取ると聞いて目をキラキラさせていた。


「取れる?クワガタ取れるの?!」


「おう!この山ならきっとカゴいっぱい取れるぞ!」


「おぉぉぉ!!」


 凄い!そんなに取れるのか!

 今までカブトムシとかクワガタって図鑑でしか見たことなくて憧れてたんだよー!


「鈴香も一緒にくるか?」


「いいの!?」


「もちろんだ!」


「いやったぁ!」


 さっきまでの眠気はどこへ行ったのか、カブトムシと聞いた上に隆継に一緒に行くかと誘われ、テンション高く尻尾をブンブンと振っていた。

 そしてそんな風に盛り上がる僕らを見ていたさーちゃんは……


 「そうだった……鈴は元男なんだった……」


 これはダメね、もう止められないわ。


 とでも言うように一言呟いた後、額に手を当てて首を振るのだった。


 ーーーーーーーーーー


「それじゃあいってきまーす」


「はいはい。楽しんでらっしゃいねー」


 青い長袖のTシャツに濃い緑の半ズボン、そしてニーソックスに運動靴という服装の僕は、1つ結びにした髪の毛を揺らしてさーちゃんへと手を振る。

 そして隆継の後に続いて家の裏にある山へと入る。


「本当にクワガタ取れる?」


「あぁ、まだこんなに暗い時間だからな。仕掛けもあるしきっとわんさか取れるぞ」


 荷物届いたのって一昨日なのに、仕掛けなんていつの間に作ってたんだろう……


 「というか仕掛けかけといてあれだけど、この山お前の山って事で大丈夫なんだよな?」


 「あ、うん。持ち主は日医会だけどそう思ってもらってて間違いないよ」


 隆継とそんな話をしながら懐中電灯の灯りを頼りに暫く山の中を進んでいると、辺りに甘ったるい匂いが立ち込めていることに僕は気がつく。


「もしかしてこの匂い?これが仕掛け?」


「もうわかんのか?ふむ、思ったよりも近くまで来てたか…………」


 すんすんと鼻を鳴らして甘ったるい匂いを嗅いだ僕は、思ったよりも強力だったその匂いにうえぇっとなりながらも匂いの元を見つけようとキョロキョロと辺りを見回す。


「なかなかきつい匂いだねぇ…………甘ったるーい……」


「バナナを酒と砂糖を混ぜた奴に軽く漬け込んだだけなんだがな、この匂いにカブトが釣られてくるのさ。えーっと……たしかここら辺に仕掛け1号が…………」


「あれじゃない?」


「見つけたのか?どれだ?」


「あれだよあれ。あの木にぶら下がってる白いヤツ、それが仕掛けなんじゃないの?」


 僕と同じようにキョロキョロと仕掛けを探していた隆継の横で、僕は見つけていたそれらしき物を指さし、隆継の手を引っ張って仕掛けの元へ連れていく。


「おぉ、本当にあった。こんな真っ暗なのによく見えたな…………って聞いちゃいねぇか」


 いっぱい……!カブトにクワガタがいっぱいいる……!すごい……!!


 仕掛けに沢山集まっていたカブトムシやクワガタを見て、僕は興奮の余り不快な甘ったるい匂いも忘れ、仕掛けに集まっているカブトムシやクワガタを見ていた。


「鈴香、カブトムシとかクワガタは他の虫と比べたらそこまで飛ばない虫だから、ぱっと素早く抑え込んでやれば手掴みで取れるぞ」


「本当?!よーし、やるぞー…………」


 そーっと、そーっと近づいて…………今っ!


 隆継に言われた通り僕は素早く手を伸ばし、仕掛けに引っ付いてる中でもとびきり大きなクワガタを抑え込む。


「お、いいな。なら次はそーっと足がもげないように仕掛けから離すんだ。角とかを持てば少しは剥がしやすくなるぞ」


「わかった!」


 よしっ!次はそーっと、そーっと、慎重に…………


 そしてそのまま慎重に、隆継に言われたよう足がもげないよう、そして馬鹿力で潰さないように気をつけて抑え込んだクワガタをそーっと仕掛けから引き離す。


「取れた!」


「やったな!ってうおぉ?!」


「どうしたの?」


 僕が隆継の方に振り向いてクワガタを見せると、隆継は驚いたように後ろへと1歩後ずさる。


 1歩後ろに下がるくらい驚くなんて、なんか凄いクワガタだったのかな?


「鈴香、お前目が光ってるぞ!」


「えー?うっそだぁ」


 呑気にクワガタの事を考えながら僕は隆継にいきなり目が光ってると言われ、ないないと言うように手を振りながら笑いつつそう返事を返す。


「鏡とか……ないよな。鈴香、お前家帰ったら暗い所で鏡見てみろ、目が光ってるから」


「はいはい、わかったよ隆継ぅー。それよりほら、次の仕掛け行こっ!」


 目が光ってるとかよりも僕は沢山カブトとクワガタを捕まえたいのだ!


「動物は夜に目が光る奴いるし、鈴香がこの暗闇でも見れるのはそういう事なのか?まぁいい、次はあの獣道をあがった先だ」


「よーし、れっつごー!」


 僕はハイテンションで隆継と共に残りの仕掛けへと向かったのだった。

 ちなみに後で家に帰って確認した所、本当に目が光っていて驚いたのはまた別の話。


 ーーーーーーーーーー


 大漁〜♪たいりょーう♪


「ただいまー!」


「あら鈴ちゃんおかえりなさい、丁度いいタイミングで帰ってきたね」


「ただいま!千紗お姉ちゃんみてみて!クワガタいっぱい捕まえた!」


 あの後仕掛けを巡り、沢山のクワガタとカブトを捕まえて日が昇り始めた頃に帰ってきた僕は、ちょうど玄関に居た千紗お姉ちゃんにクワガタの入ったカゴを見せる。

 ちなみに隆継はというと庭にある小さい林の一部に木と木の間にすだれを張って天井や壁を作り、カブトとクワガタを放し飼いできる所を作ってくるとのことだ。

 隆継曰く、「地面を掘ってにげられたらしらん」だそうだ。


「おお、にーしーろーやー……本当に沢山捕まえたねぇ。凄い凄い♪」


「えへへ♪それで千紗お姉ちゃん。なんかちょうどいい所にとか言ってなかった?」


「おっといけない、そうだったそうだった」


 よしよしと僕の頭をなでる千紗お姉ちゃんに僕は何が丁度良かったか聞くと、千紗お姉ちゃんは忘れるところだったと言うように頷き、こほんと咳払いをして。


「鈴ちゃん、久しぶりのお仕事よ」


 一言、笑顔でそういったのだった。


「皆さんお久しぶりでーす!!」


「姫ちゃん久しぶり!元気にやってた?」


「元気そうッスね姫ちゃん!」


「久しぶりね姫ちゃん。学校生活楽しんでるー?」


「鈴香ちゃん会いたかったよー!!!!」


 千紗お姉ちゃんにお仕事と言われた日のお昼、隆継と虫取りに行った時とは別のきちんと舗装された道路で山の中腹まで来ていた。

 そして陣内さんの運転するトラックから降りた僕は、日医会でお世話になった馴染みの顔が並んでいるのを見て一目散に駆け寄り、皆と楽しげに色々話をし始める。


「─────でね、初めてカブトムシ捕まえたんだよ!」


「おぉ!凄いっスね姫ちゃん!今度見に行っていいっすか!?」


「いいっスよー!」


「姫ちゃん、楽しむのもいいけどちゃんと宿題もやってる?」


「大丈夫だよ大和さん!少しずつやってるから!あと数学だけー」


 皆元気そうでよかったー!

 久しぶりに会うからちょっとだけ不安だったんだよね。


 元気な皆を見てよかったと僕が心の底から思っていると、柊さんと花桜さんが別の車から出てくるのが見えた。

 僕は2人を見て皆に少し2人と話してくるといい、トタタタタと2人の元へ走っていく。


「柊さん!花桜さん!お久しぶりです!」


「やぁ姫ちゃん、元気にしてたかい?うちの姪と仲良くやれてるか?」


「私の息子もね、迷惑かけてない?」


「迷惑だなんてそんな!僕の方こそ色々助けてもらってますし、毎日とっても楽しいです!」


 頭を撫でてきながらさーちゃんと隆継のことを聞いてくる2人に、僕は両手を振りながら毎日楽しく過ごしていると伝える。


「それならよかった。それじゃあ今日の実験、頑張ってね」


「おじちゃん達も全力でサポートするからな」


「はいっ!今日はよろしくお願いします!」


「お前ら集まれー」


 ぺこりと僕が2人にお辞儀をした所で、準備が整ったのか三浦先生が手を叩いてこの場にいる人全員に招集をかける。


 さて、それじゃあやりますか!


 僕は気合十分でこれからやるお仕事、つまりは実験に向かうのだった。


 ーーーーーーーーーー


「ねぇ三浦先生、これ本当に着とかないとダメですか?すっごい蒸し暑いんですけど……」


「一応念の為、そんで各種報道機関も後で来るからそれへの「ちゃんと身の安全を確保してます」というアピールだ」


 だからってこんな真夏日にこんな……こんな分厚い軍隊の戦闘服みたいなの着せなくても……これなら女の子ーって格好させられる方が………

 いや、それよりはこっちがいいや。かっこいいし。


 トラックの中で実験用に用意された濃ゆい黒緑色のまるで戦闘服のような、隙間ひとつない厚手の服へと着替えた僕は暑さで尻尾と翼をだらーんとさせていた。


「それに初めての野外飛行実験だからな、鈴香が着地に失敗してもいいようにだ」


「むっ!絶対失敗なんてしませんよーだっ!」


 前も上手く飛んだもん!


「はははははっ、そうしてくれ。さて、それじゃあ通信機とサンバイザーを装備してくれ。いよいよ実験開始だ」


 ニヤッと意地悪く笑う三浦先生に、僕はべーっと舌を出しながら抗議すると、三浦先生は愉快そうに笑い、僕へ次の指示を出してきた。

 そう、今日の実験は以前1度やった飛行実験。それを今度は今朝僕達がカブトムシなんかを取った山の一角にある野外の実験場で行うのだ。


「まいくてす、まいくてす、こちら天霧鈴香、通信聞こえてますでしょうか。どうぞー」


『こちら天霧千紗、感度良好、鈴ちゃんの可愛らしい声がきちんと聞こえます。どうぞ』


 かっ、可愛らしいって……千紗お姉ちゃん恥ずかしいこと言うなぁ………まぁさーちゃんより声高いけどさ。


『報道陣が山中手前まで来たと報告があった。少し早いが鈴香はそろそろ飛行準備をしてくれ。あいつらが来る前に1度試してみろ』


「わかりました。それじゃあ……」


 僕はカチャリと飛行機乗りのようなもこもこの帽子に着いているサンバイザーを下ろし、きゅっと帽子の紐を止める。

 そして。


「天霧鈴香、飛行実験開始します!」


 その言葉の後、成功させるという強い意志と共に、僕は大きく翼を広げた。


読者の皆様、今回も「ドラゴンガール」を読んで頂きありがとうございます!

先日「ドラゴンガール」のブックマークが700件を突破しました!

本当にありがとうございます!

始まったばかりの夏休み編ですが楽しんでもらえていたら幸いです!

これからも「ドラゴンガール」をどうかよろしくお願いします!

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