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46鱗目:荷解き!龍娘!

 ん〜〜♪スッキリしたぁ!

 やっぱり朝はシャワーだけでも浴びとくと気分が変わるもんだね。

 さ、そろそろ上がって朝ごはんの用意しなきゃ。


 鼻歌を歌いながらシャワーを浴びていた僕はプルプルと広い風呂場で体を振り、翼や尻尾にある水をある程度落としてから体を拭いて脱衣場に出る。

 そして僕が体を拭いていると、脱衣場の扉がいきなり開かれ…………


「あー…………くっそ寝みぃ……んむっ。なんだこれ」


「あ、隆継。おはよう」


 寝ぼけてたのか、ばふっと翼膜に突っ込んできた隆継を翼で受け止めつつ、僕は髪の毛をタオルでぽふぽふと乾かしながら隆継の方へと向き直る。


「鈴香か、お前も顔を洗い……に…………」


「どうしたの?」


 なんか声がどんどん小さくなってったけど。


 僕が隆継の方を向くにつれ隆継の声はどんどん小さくなっていき、僕はそれにキョトンと首を傾げつつ大きく見開いた隆継の目を見つめる。


「………………はっ!どっ、どうしたのじゃねぇ!なんで裸なんだよ!?」


「え?だってシャワー浴びてたから……」


「浴びてたからじゃねぇ!服っ!服を着ろっ!」


「別にそこまで気にしなくてもー……あっ」


 あっちゃーそうだった。つい隆継だしいいやって思ってたけど、そういや僕女の子でした。


 再起動した隆継が顔を手で隠しながら慌てて僕から顔を背けるのを見て、僕は今自分が女の子であるという事を思い出す。


「ごめんね隆継ー。すぐ着替えるからー」


「本当に頼むぜ?全く、朝から心臓に悪いったらありゃ…………あっ」


「隆継どうし…………あっ」


 ごめんごめんと笑いながら着替えようとした僕は、隆継が言葉途中で短い声をあげたのが気になり、パンツだけ先に履いて隆継の方を向く。

 するとそこには背後になんだか赤黒いオーラのようなものが見える気がする程、恐ろしい笑顔のさーちゃんが立っていた。


「二人共ー?一体、脱衣場で、なーにやってるのかしらー?」


「あっ、いやこれは、その」


「事故っ!事故なんだサナ!」


 恐怖の笑顔を浮かべているさーちゃんに対し、その笑顔に怯んでたじたじとする僕と、なんとか事故である事を説明しようとする隆継だったが……


「ふーん、裸の女子と脱衣場で事故ねー……」


 「「あはははは……」」


「鈴は服を着てから二人共、そこに正座」


 「「はい……」」


 お怒りさーちゃんには全く意味をなさなかったのだった。


 ーーーーーーーーーー


「それで2人の荷物って今日届くんだよね?」


「だな」「そうね」


「ん、了解。よし、朝ごはん出来たよー」


 テーブルについている2人と今日の事を話しながら僕は皆の分の朝ごはんを作り、出来上がった朝ごはんを持って僕もテーブルへとつく。


「いいにおーい」


「あ、千紗お姉ちゃんおはよー」


「千紗さんおはようございます」


「お姉さんおはようっす」


「3人ともおはよー。ふぁぁぁぁ……よく寝たー……」


 少し遅れて起きてきた千紗お姉ちゃんに僕達は挨拶をし、4人でテーブルを囲んで賑やかに朝ごはんを食べ始める。


 やっぱり、皆で楽しく賑やかに食べるご飯は美味しいね♪


 僕はぱくっとご飯を口に運びながら、目の前にある賑やかな食卓を見てそう思い笑顔を浮かべる。


 ちょっとハプニングはあったけど、2人と一緒のまた新しい生活!そして夏休み!これから楽しくなりそうだ!


 僕はぱくっともう一口ご飯を食べ、今度は期待に胸を弾ませるのだった。

 そして時間は経ちお昼過ぎ、なんとか大きな荷物の荷解きが終わり、それぞれの荷物もそれぞれの部屋へと運び終えていた。


「いやー、疲れた疲れた。なんとか終わってよかったよー」


「だな。あー疲れた、鈴香は手伝ってくれてありがとうな」


「鈴が居なかったらこれの3倍は時間かかってたわね。すっごく助かったわ、ありがとう鈴」


「えへへ〜♪どういたしまして〜」


 そんな疲れ切った2人と僕は、先程まで荷物で埋まっていた座敷で寝っ転がってたり座っていたりと、思い思いの格好で縁側から入ってくる風を浴びて涼んでいた。


 いやー、思ったよりも量が多くて意外と大変だったよ。

 というかさーちゃんの荷物は多い割に比較的軽いの多かったのに、隆継の荷物は少ないのに重たいのが多かったなぁ。


 ころんとうつ伏せに寝転がってる僕は、さーちゃんに頭を撫でられて心地よさそうに頬を緩め、尻尾の先をゆらゆらと動かしていた。


「皆お疲れ様。お昼ご飯にそうめん用意しといたよー」


「おぉ!ありがとうございますお姉さん!」


「そうめんだー!千紗お姉ちゃんありがとー!」


「働いて暑かったし、丁度いいわね。ありがとうございます」


 ぱすんと襖を開けて座敷に入ってき千紗お姉ちゃんに僕達がそう返事をすると、千紗お姉ちゃんはニコッと笑顔になる。


「いいよいいよー。せっかくだしこっちで食べようか。鈴ちゃん机出してくれる?」


「はーい!」


 僕達の返事を聞いた千紗お姉ちゃんが僕にそう頼んで廊下へと戻って行った後、残された僕は座敷の端に立ててある机を片手で持ち上げて持ってくる。


 ーーーーーーーーー


『─────ので、ニホンヤマネは生きた化石という貴重な生き物なんですねぇ。それでは今日はここまで、また次回お会い致しましょう』


 ふぅ…………ニホンヤマネ可愛かったなぁー。

 ちっちゃくてふわふわしてそうで。この山にも居たりしないかな?


 ちゃーららーと軽快な音楽で締められた動物番組をお昼ご飯を食べ終えてゆっくりしていた僕は、そんな事を考えながらリビングで見ていた。


 僕の尻尾ももふもふしてたら…………いや、抜け毛とかで掃除がヤバそう。さて、2人は荷解きしてるし、千紗お姉ちゃんは日医会行ってるし……

 僕は何をしようかなぁ……


 ソファーにちょこんと座っているまま、僕は自分の尻尾を横から前に持ってきて抱き抱え、ゆらゆらと体を揺らしながら何をするか考えていた。


 あっ、いいこと思いついた。


 ーーーーーーーーー


「手伝いに来たよ!」


「来るのはいいけどノックくらいしなさい?」


「ごめんなさーい」


 何もやることがなければ手伝いという名目で遊びに行けばいいじゃない、そう思いついた僕はとりあえずリビングから近いさーちゃんの部屋へと来ていた。


「それで、荷解き手伝ってくれるの?」


「うん。僕でいいなら手伝えるのは手伝うよー」


「ありがとう鈴、助かるわ。それじゃあ……そうね。そっちの箱を開けてくれる?」


「はーい」


 僕は返事をするとナイフを作り、さーちゃんの指さしたダンボール箱のガムテープを切っていく。すると中から出てきたのは。


「…………洋服?」


「そっ、部屋着として着る服よー」


「おぉー…………なんというか……なんだこれ?」


「ふふっ♪ツッコミたくなるでしょ?」


 さーちゃんが部屋着というその1枚のシャツには、でかでかと無駄に上手い達筆で「あめりかーんどっぐ」と平仮名で書いてあった。


 確かにツッコミたくなるけど…………それ以上にさーちゃんらしくない服で驚いてるというか……


「鈴、アタシらしくないって思ったでしょ?」


「何故バレた」


「顔に出てたのよっ」


「あでっ、でもさーちゃん自分で自分らしくないって思ってるならなんで買ったの?」


 くすくすと笑うさーちゃんにデコピンされた僕は、おでこを抑えながら首を傾げてさーちゃんになんでかを聞いてみる。


「買ったんじゃなくて送られて来たのよ、アタシの親からね」


「親?」


「そっ、親。仕事先が海外なの。だから色々なお土産とか送ってくるんだけど、その1つがこのツッコミどころ満載のTシャツ達よ。お土産のセンスが壊滅的なのよねー」


「なっ……なるほど…………」


「でもせっかく送って貰ったんだから着てあげたいじゃない?それに着てれば少しはお父さん達の気持ちも味わえるかもだし」


 少し寂しそうにフッと笑うさーちゃんの横顔を見て、僕はさーちゃんを翼で包み込み、少し背伸びをして頭を撫でてあげる。


「あら鈴、慰めてくれてるのかしら?」


「なんかちょっと寂しそうだったから、ごめん勝手に頭撫でて」


 背伸びをやめてバサッと翼を元に戻し、翼で包み込むようにしていた状態からさーちゃんを解放する。


「別に嫌じゃないわ、でも…………そうね、鈴」


「なに?」


「今日の晩御飯は一緒に作りましょうか」


 さーちゃんは笑顔でそう言うと僕の頭を押さえつけていた手で、よしよしと僕の頭を撫でてくる。


「うん!もちろん!」


 僕とさーちゃんはこうしてまた少し仲良くなった。

 ちなみにこの後隆継の部屋に2人で乗り込み、荷解きほっぽり出してゲームしてた隆継が怒られたのはまた別のお話。

第3章夏休み編スタートです!

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