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38鱗目:あだ名!龍娘!

「これでいいんだな?」


「はい、これでおっけーです」


 今日も今日とて学校のある日の朝も早い6時前、僕と陣内さんは家の前にある坂道の入口に生えている大きな木の前に作業着で立っていた。


「これ本当にいるのか?」


「あった方がいいと思いません?念の為ですが」


「一応家の周りは生垣とか柵で囲われてるし、裏山も日医会の所有物になってはいるが……まぁ今は念の為に置いといて損は無いか」


 「そうですよ!今は何があってもおかしくないんですから!」


 「だな。ただまぁ俺としては、まさか姫がこういった日曜大工的なのが苦手だとは思ってなかったがな」


「うぐっ…………昔っから工作は苦手なんですよぉ……」


「はははっ。さて、それじゃあ約束通り朝飯頼むぞ」


「はーい。喜んで作りまーす」


 ニヤニヤとした顔で陣内さんにからかわれ、がくりと肩を落としていた僕はそう言って陣内さんと一緒に家へと戻って行くのだった。


 ーーーーーーーーーーー


「なぁなぁ天霧さん」


「なにー?朱雀峯さん」


「ウチにはアダ名付けてくれんの?」


「へ?」


 2限目が終わり、僕が次の授業の準備をしていると朱雀峯さんが唐突にそんな事を言ってきた。

 そんな余りにも突然の申し出に僕は教科書を持ったまま固まってしまい………


 あっ、あだ名ですか!本当に唐突だね?!というかいきなりそんな事言われるなんて…………もしかして僕なんかやらかした!?


「う、鱗でいいなら差し上げるので命だけは……」


「何言うとるん?せっかく友達なったんやし、ウチも柊さんと天霧さんみとう天霧さんとアダ名で呼び合いたいだけや。

 それにいつまでも天霧さん朱雀峯さんじゃ他人行儀で硬っ苦しいやろ?」


 じっとみてくる朱雀峯さんから目を逸らした僕に、朱雀峯さんは首を傾げた後僕の目を覗き込みながらそう言ってくる。


「なぁーんだそういう事だったのか………よかったぁ」


「なんかすっごい偏見を受けとる気がするんやけど……まぁええわ。それでアダ名なんやけどウチも幾つか考えたんよ!さっきの授業中に!」


 授業は真面目に受けよう?!

 お金稼ぐのってすっごい大変なんだからね!?


「それでなー、もう1つのあまちゃんってのもいいと思うんやけど、どや天霧さん!?」


「あっ、ごめん聞いてなかった」


「うわっ!地味にこの子酷いっ!」


「ごめんごめん、もう1回言ってくれない?」


 ペコッと頭を下げながらお願いと手を合わせて目を瞑る。


「はうっ…!しゃーないなぁ。とりあえず、すずやんとあまちゃんっていうのが思い浮かんだんやけど、天霧さんはどっちがええ?」


 すずやんにあまちゃんか…………なんというか……うーん………………とりあえずあまちゃんは勘弁して欲しいから……


「すずやん…………かな?」


「わかった!それじゃあ天霧さんの事今からすずやんって呼ぶな!それですずやんはウチにどんなアダ名付けてくれるん?」


「うーん……そうだなぁ…………」


 朱雀峯さんだから…………すーちゃん?……はさーちゃんと似た感じだし、んー……はくちゃん?こーちゃん?うーん………………


「…………とらちゃん?」


「とらちゃん?」


 しまった思わず口に!


 聞き返してきた朱雀峯さんの声に僕はハッとし、すぐに謝ろうとしたが。


「ごめんつい口に─────」


「とらちゃんええなぁ!可愛ええし呼びやすいし何よりわかりやすい!ウチそれ気に入ったで!それがええ!」


 朱雀峯さんは嫌がる様子など無い所か、とても目をキラキラさせてブンブンと手を振りながら僕へそう言ってくる。


「……………………う、うん!わかった。朱雀み……じゃなくて、とらちゃん」


「うんうん!すずやんウチこそ改めてよろしゅうなー!」


「んむっ?!」


 そう言ってテンション高く、とらちゃんこと朱雀峯さんが僕の頭をぎゅうっと抱きよせてくる。


 あっ……お日様のいい匂い…………じゃなくて!わわわわわわわわっ!!朱雀峯さんのやわっこいのが!!!!

 というか僕と同じくらいと思ってたけど、意外とあるぞこの人!?


「あら、仲良しさんだこと」


「みゃう!?」


「うおぉぉぉ?!」


 いきなり横からさーちゃんの声が聞こえてきて僕は驚いた拍子に朱雀峯さん、ではなくとらちゃんを手で押して離れようとして持ち上げてしまう。


「おぉぉぉぉ…………まさかこの歳になって持ち上げられるとはなぁ………………じゃなくてすずやんはよ下ろしてーな!流石にはずいわ!」


「わぁぁぁぁ!ごめん!とらちゃんごめん!」


 ーーーーーーーーーーー


「────ということがあってですね」


 ゴトゴトと小さく揺れるトラックの荷台、僕は迎えに来てくれた陣内さんに今日あったことを話していた。


『はっはっはっ!いいじゃないか!役得みたいなもんだろ?』


「役得って…………でもまぁ、うん。やわっこかったし、うん」


『やわっこい?』


「なんでもないです!」


 とらちゃんのやわっこい感触を思い出した僕は、微妙な顔になりながらも陣内さんにそう返す。そして僕はピコンととある事を思いつく。


 陣内さんにアダ名付けるとしたらどんなのかなぁ?というか名前なんだったっけ?

 んー…………わかんないし苗字だけで考えてみよう。


 あの後、武玄くんにむーさんというアダ名を付けたりしたせいで僕は謎のスイッチが入っていた。


 陣内さん……陣内さん…………陣さん?うーん……じーさん?いやいやいやいや………………はっ!


「陣内兄貴!」


『ぶふっ?!ゴホッゴホッ!!まて、いきなりなんだ!』


「陣内さんのアダ名です!陣内兄貴!」


『またいきなりだな…………だがまぁ、兄貴か……悪くは無いな』


「でしょう?」


『だな』


 そうして帰り道での僕と陣内さんとの平和な時間は過ぎていくのだった。

 まさかもうあんな事になっているとは露程も知らずに。


以下キャラ紹介


・朱雀峯虎白


最初は朱雀峯さんと鈴香に呼ばれている人物。

周りからは朱雀峯さん、虎白さんと呼ばれることが多い。

鈴香と友達になった人物で龍清の幼馴染。

タレ目にふわっとした栗毛で髪型はボブ、全体的にのほほんとした見た目とは真逆の元気いっぱいなウチっ子、身長は151センチ。

誰とでも仲良くなれるタイプで明るく元気。

両親が大金持ちで様々な人と触れ合っていたからか、人を見る目なら三浦にも負けない程で誰とでも仲良くはなるが友達になるかはこれでもかと言うほど慎重に選んでいる。

そこそこ男子からも人気があるが、龍清が強面なおかげで詰め寄られることはほとんど無い。

とても情に厚く、鈴香や龍清など大切な友人の為なら何でもする。

好奇心旺盛で目新しい物などによく突っ走るが、やり過ぎかけるとその都度龍清に止められている。

自由や偽善を盾に人を食い物にするような奴らが1番嫌い。

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