36鱗目:お昼休み!龍娘!
「なるほど。流石サナ、いつも通りのナイスフォローだな。略してサナイスフォロー」
「あんたは細かい所に気が回らないからね、細かい所は私の仕事、それにあんたは朝皆を止めたじゃない。あんたにはそういう方面が向いてるのよ」
「そうそう、さーちゃんの言う通りだよ。朝のは本当に助かったもん」
そして隆継よ、さーちゃんはクールにスルーしたけど僕はちゃんと聞いてたから突っ込むよ?
サナイスフォローってなんだ。
「ははっ、違いねぇ!それに鈴香にそう言われると止めたかいがあったってもんだ!」
4限目も終わったお昼休み、僕達はそんな会話をしながらお昼ご飯を食べようと机をひっつけるためにガタゴトと動かしていた。
「それはともかく、鈴は早い所女の子の当たり前を覚えなさい」
「仕方ないじゃんか、まだ女の子って意識して生活したことなかったんだから」
「それでもよ。早い所慣れて覚えなさい」
「はーい…………ってあれ?」
あっれー…………確か朝ちゃんと弁当箱と一緒に突っ込んだと思ったんだけど……
「どうかしたのか?」
「いや、ちょっと…………あー。お箸忘れちゃったっぽい」
僕は探しても無いやつだと割り切り、バックから手を引き抜き「やっちゃった」と言わんばかりに頭をかく。
どうしようかなぁ……どこかで割り箸が貰えたりとかもしないだろうし…………あっ、そうだ。
「おっと、それはドンマイだな鈴香」
「仕方ないわね。えーっと確か割り箸は……鈴?」
さーちゃんと隆次の声が聞こえる中、一つ閃いた僕は目を閉じて右手の掌を上に向けて机の上に置いていた。
長さはだいたい掌より長いくらい………太さは鉛筆くらいで先に行くほど細く………………よしっ!
頭の中でイメージが完成した瞬間僕が目を開けると、僕の瞳はいつもの若葉色から金色へと変わっていた。
そして同時に僕が意識を集中している掌の上では水に氷が張るようにして、空中に水晶が生み出され……1秒後にはお箸のような細長い形の水晶が2本、掌の上に出来た。
「ふぅ……でーきたっと。さっ、2人ともご飯たべよっ!」
「ほぉー……水晶で箸を作ったのね…………は?」
「ちょっ!鈴香!お前今何を──あっ」
「なんだなんだ?」「何かあったのか?」「もしかしてあのお弁当天霧さんの手作り?」「美味そー」「いいなー」
「…………こほん……鈴。とりあえず説明して貰えるかしら?」
「えーっと、水晶でお箸を作ったんだよ?」
隆継の大声を誤魔化すかのように咳をひとつしたさーちゃんが僕に小声でそう聞いてくるので、僕も小声で何をしたかを話す。
実は日医会の本部から出て2日後の事、暴走していた時に水晶を生み出していたと聞いたのを僕は思い出した。
そしていつぞやかのブレスみたく、頑張れば水晶が出せるんじゃないかとやってみた所、本当に水晶を生み出せてしまったのだ。
長さとか大きさくらいの指定なら集中しなくてもできるけど、形の指定になると結構イメージしなきゃダメなんだよね。
でも串とかも作れて便利だし、もっと練習しよう。
「まぁ説明にはなってるからいいけど…………それここでやっても大丈夫なの?」
「んー……多分大丈夫、多分」
「多分て……まぁ極力使わないようにしろよ?」
「あいさー。そういや2人はいつうちに来るの?」
僕は2人にそう聞くと「いただきます」と手を合わせ、さっき作った水晶の箸でコロッケを1口取って口に運ぶ。
「夏休みになってからそっちに引っ越す予定だな。といってももう来週の土日から夏休みだけど。サナもそれくらいだったろ?」
「そうね、アタシも隆継と一緒よ」
「ん、りょうかーい」
夏休みからかー…………うん楽しみ、すっごい楽しみ!
みんなで海行ってー。山もいいなぁー。お祭りとかにも行ってみたい!
そんでそんで!綿菓子とかりんご飴とかも食べてみたいなぁ!あれ作った事はあるけど食べた事は無いんだよね。うーん!楽しみ!
「鈴、鈴」
「さーちゃんなーに?」
「顔、なんかすっごいニヤニヤしてるわよ」
「ほんと?んー…………これでどうだ!」
流石にニヤニヤ顔は恥ずかしいので、ほっぺをむにむにとしてさーちゃんに言われたニヤニヤ顔を治そうとしてみるが。
「まだニヤけてるわ」
バッサリと治ってないと言われてしまった。
「うむぅ……なら──────」
「そのお箸ってもしかして水晶?凄いなぁ!」
「ふぇあっ?!」
僕がなんとか表情を戻そうとしていた所、いきなり横からのほほんとした声がかけられ、僕は驚いて変な声を出してしまう。
そして僕が後ろへ顔を向けると、そこにはふわっとした短い栗毛のマイペースそうな女の子が立っており────
なんだ……
「コロッケ美味しそうやなー!お弁当もしかして手作りなん?」
「う…うん、手作りだよ……」
「すごいなぁ!」
なんなんだ…………
「おおお……!お弁当箱の猫ちゃん可愛ええ!!しかも白猫やん!猫好きなんー?」
「すっ……好きだけど……」
なんなんだこの子はー体?!
「おい天霧、この子知り合いか?」
「しらにゃいようっ!」
興味津々といった感じで次々に僕へその質問をしてくるその栗毛の子に圧倒されていた僕は、隆継の服を掴みながらすがりつくようにそう答えるのだった。
そしてもう限界と言う風に涙目でぷるぷるとなっていた僕に、その子は更に質問をして来ようとして……
「なぁなぁ!天霧さんってどっからき───ぎゃうっ!?痛いっ!りゅーくん痛いわっ!」
「いい加減にしろ、天霧さんが困ってるだろうが。すまん、俺が少し買い出しに行ってる間に虎白が迷惑かけた」
りゅーくんと呼ばれた背が高く細身で髪の毛がオールバックな目付きの悪い強面男子はそう言うと、虎白と呼ばれた質問女子の頭を引っ掴んで一緒に頭を下げてくる。
「あっうん、ちょっと怖かったしよーくしつけておいてくれるとっ!?さーちゃん痛いっ!」
「そこは嘘でも大丈夫って言う所なのよ。そうね、せっかくだし貴方達もお昼一緒にどう?」
僕の頭にチョップを叩き込んださーちゃんは叩いた所をさすってくれながら、その2人へと提案する。
「いいん!?あでっ!」
「そっちがいいのなら是非とも」
りゅーくんと呼ばれた男子が承諾した事で、僕達は5人で一緒にお昼ご飯を食べる事になった。
ーーーーーーーーーーー
「所で今更だけど2人の名前は?」
頬張っていたコロッケを飲み込んだ僕は、そういや聞いてなかったと2人に名前を聞いてみる。
「はいはーい!ウチは虎白、朱雀峯虎白って言うんよー!好きなもんは可愛いもんと動物!あと甘いもん!よろしくなー?」
「俺は武玄龍清、虎白の幼馴染兼お目付け役だ。こいつになんかされたらすぐに言ってくれ」
そんな2人の自己紹介を聞いて僕が「珍しい苗字だなぁ」なんて思っていると「お近づきの印や〜」と言って朱雀峯さんがおかずをひとつくれた。
「いいの?」
「ええよええよ〜!」
「ありがとー!じゃあコロッケで申し訳ないけどお返しー」
「おおっ!ありがとーな!」
牛肉かな?なんかすっごい美味しそうな甘い匂いが……
朱雀峯さんとおかずを交換し合った僕は朱雀峯さんのくれたお肉から漂うどことなく上品なその香りに驚きつつ、あむっと口へと放り込む。
「んんっ!?」
なにこれーーーー!!とけた!それにすっごい美味しい!旨みっていうのかな?それがすごい!しゅわぁぁぁって!
思わず口に手を当ててしまった程の美味しさに僕は目をキラキラさせながら、小さく翼をパタパタさせ尻尾をブンブンと振ってしまう。
「おおっ!よかった、口にあったみたいやね!どや?最高級松阪牛のお味は」
「うん!口の中でしゅわぁぁってまつっ?!」
「あー、虎白ん家すっげぇ金持ちだからな」
まっ、ままっ!!まつさかぎゅう?!
それってあのどえらいくらいとんでもない超高級品の!?
あわわわわわわ…………そんなお偉いさんしか食べれないようなものを食べちゃった。そんなのに釣り合うお礼なんて………
「鈴?」
「………………体で払うしか……?」
訝しげにこっちを見てくるさーちゃんを横にぷるぷると震えながら、僕はそんな事をボソッと呟く。
「鈴?!」
「あははははっ!天霧さん面白いこと言うなぁ!それなら………せやな、ウチらの友達になってーや!」
「……いいの?」
僕の前に座っている朱雀峯さんは膝を叩いて笑った後、ニコッと可愛らしい笑顔で僕に向かって手を差し出してくる。
「勿論や!それじゃ、今日からウチらは友達やー!」
「─────うん!」
僕はぱあっと顔を明るくして朱雀峯さんの手を掴み、ぎゅっと強く握手を交わした。
こうして、僕に学校で初めての友達が出来たのだった。
読者の皆様今回も「ドラゴンガール」を読んでくださりありがとうございます!
なんと「ドラゴンガール」が500ブクマを突発しました!
本当にありがとうございます!
より一層頑張りますのでこれからも「ドラゴンガール」をよろしくお願いします!
面白ければ是非感想や評価をお願いします!
以下キャラ紹介
・花桜隆継
最初も今も隆継と鈴香に呼ばれている人物。
周りからは隆継、隆とよく呼ばれる。
鈴香に花桜さんと呼ばれる花桜美月の息子で、三浦に鈴香のフォローを任されている1人。
鈴香の簡単な護衛兼もう1つ
見た目は良くもなく悪くもない至って普通の一般男児、強いて言うなら少し体付きがゴツイ。
髪は黒髪で全体的に少し短い。身長は178センチ
性格は大雑把でそれでいて明るい。
父親はとある会社の支部長で単身赴任中、自宅住まいだが夏休みから鈴香の家に住むことになる。




