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35鱗目:僕のクラス!龍娘!

 やばいっ!さっきまでの壇上とは違った緊張がっ!


「大丈夫ですか?」


「ひゃひっ!だいひょうぶれふっ!」


 かんだぁぁぁぁぁぁぁあ!

 しかも盛大に全部噛んじゃったよ!


「落ち着いて落ち着いて、ちょうどそこに冷水機ありますしそれでも飲んで下さい」


「は、はいぃ……」


 生徒達が体育館から自分達の教室へと戻った後、僕は今副担任の先生に連れられ教室へと向かっていた。

 僕の通うこの学校はどうやら一学年で1組から9組まであるらしく、僕はそのうちの3組へと編入された。

 ちなみに1組から3組が普通科、4組から6組が理数科、7組から9組が体育科らしい。

 そして僕の入る3組は学年棟の最上階である4階にあった。


「ふぅ……」


 何とか落ち着いた……ついでだしお薬も飲んどこう。


 冷水機で水を飲んで少し落ち着いた僕は、念の為と三浦先生に渡された薬の入った瓶をバックから取り出して、そこから一錠薬を飲む。


「そのお薬は?」


「これですか?これは感情が高まりすぎないようにするお薬です。さっきは飲む暇がありませんでしたが、今なら飲めるので」


「なるほど……なぜ必要かは置いておくとして落ち着いたのならよかったです。それでは行きましょうか、といってももうこの階段を上がった先ですが」


 そう言う副担任の先生と一緒に階段を上がり、校舎の4階に上がったところで右に曲がると「1ー3」という板がある教室があった。


 ここが僕の教室かぁ。楽しみだけど……やっぱりちょっと怖い!


 そんな僕の気持ちなど副担任の先生が分かるはずもなく、そわそわと尻尾を動かしてた僕に容赦なくガラリと戸が開けられる。

 そして教室の中から代永先生の「入ってどうぞ」という声が聞こえてきた瞬間教室中が騒がしくなり、副担任の先生に「入ってください」とジェスチャーされ恐る恐る僕が教室へと入ると……


 「キター!」「すげぇ本物だ!」「でけぇ!」「きれーい!」「角かっけぇ」「尻尾かわいい!」「髪の毛銀色?灰色?綺麗……」「体ちっちゃーい!かわいー!」「飛べんのかな?」


 等とクラスメイト達が僕を見て声を上げる。

 そのおかげで僕は少し緊張が解れ、そして教室の右後ろにさなかちゃんと隆継が居るのが確認出来た。


「皆さん静かに!天霧さん軽い自己紹介お願いできるかしら?朝礼で1度紹介して貰ったけど改めて」


「はっ、はい」


「黒板に名前書いて趣味とか軽い挨拶とかして貰えればいいから」


 先生の一声で教室は静かになり、僕は先生に言われた通り黒板に名前を書いて皆の方へ向き直り自己紹介をする。


「えと、僕は天霧鈴香って言います。趣味は料理と掃除で…………えと、その……みっ、皆さんっ!1年間よろしくお願いしまひゅ!」


 じっと皆に見られているという事を意識してしまった僕は強引に自己紹介を終わらせると、ぽふんと恥ずかしさで顔を真っ赤にして俯く。


「とりあえず天霧さんの席は左後ろ、柊さんの隣の席ね。柊さんは後で天霧さんに学校を案内してあげて」


「はい」


「では天霧さんは席の方へ、はーいそれじゃあ皆SHR始めますよー」


 先生に言われ僕が席へと移動すると「しょーとほーむるーむ」という物が始まった。といっても連絡事項を話していたので小中時代の朝の会的なものだった。

 そしてそのSHRの間、僕でも分かるほど教室中の雰囲気は浮ついていて、案の定SHRが終わった途端……


 「天霧さんその翼って本物?!」「尻尾動いてたけどどんな感じなの!?」「触ってみてもいい?!」「角とか尻尾ってどんな風に生えてるの?!」「飛べるの!?」「魔法とか使えたりする?!」


 濁流の如くクラスメイト達が詰め寄ってきた。


「えっ!あっ!ちょっ!そんな一気に……!ひゃんっ?!尻尾触ったの誰っ!?」


 もみくちゃにされていた。


 やばいっ!これはやばいっ!尻尾とか言ってる場合じゃないっ!潰れる!怪我させちゃうから力任せに跳ね除けられないっ!

 あっ、もうダメ───────


 もみくちゃにされてる中、もうダメと僕が諦めかけたその時。


「お前ら落ち着け!そんな一気に来られても天霧は答えられないだろっ!それにお前ら怪我させたらどうすんだ!相手は女子だぞ!」


 隆継が大声でそう怒鳴ったことで教室はシーンと静まり返り…………


「じぬぅ…………づぶれるぅぅぅ………………」


 「「「「「「「「「「ごめんなさいっっ!!」」」」」」」」」」


 生徒達の山に埋もれていた僕の潰れたカエルのような声を聞いて、詰め寄ってきてた生徒達はようやく僕から離れてくれたのだった。

 そしてその後……


「しゅー……ふしゅー……」


「ほら、天霧大丈夫だから。もう皆あんな事しねぇから」


「しゃふぅー……」


「お菓子あるけど食べる?」


「…………たべる」


 隆継のお陰で皆が離れた後、僕は教室の隅で尻尾に抱きつきながら涙目で座り込み、隆継とさなかちゃんにもう大丈夫と説得(お菓子の譲渡)をされていた。


「…………ぷはっ」


「落ち着いた?」


「うん……」


「そっか、落ち着いたみたいでよかったわ」


 さなかちゃんから貰った水を飲み落ち着いた僕は、小さくこくんと頷くとさなかちゃんの後ろに隠れて服の裾をきゅっと握る。


「お前ら、質問すんのはいいけどちゃんと謝ってからにしろよ?」


 「「「「「「「「「「はい……」」」」」」」」」」


「それじゃあ改めて、質問したい奴は並べー」


 2人が居てくれて本当によかった…………


 その後、質問されたり翼や尻尾を触られたりはしたが最初の時みたいなトラブルは無く、無事にクラスメイト達と交流を持つことが出来た。

 ちなみに途中2人に「天霧さんの事知ってたの?」なんて質問もあったが、2人は「なんか放っておけなかったから」といって誤魔化していた。


 ーーーーーーーーーー


「それではこれにて1限目はお終い」


 そう言って授業中僕の方を見てソワソワとしていた数学の先生が教室を出ていくと、またクラスメイト達が僕の元へと集まってくる。

 しかし今度は最初の時みたいにならないように皆弁えてくれていた。


「ねぇねぇ、天霧さんの制服ってどうなってるの?」


「これ?尻尾用の穴と翼用の穴があるだけだよー」


「今度じっくりみてもいい?」


「いいよー」


「角って重い?」


「そこそこ?」


「ほほう……」


「尻尾ってどれくらい動かせるん────うおぉぉ!?」


「君の体に巻き付かせることが出来るくらいなら簡単に動かせるよー、驚かせてごめんね?」


「ビビったけど……今度それで持ち上げてみてくれないか?」


「いいよー♪」


「翼あるけど飛べたりするの?」


「飛べるよー、今度の体育の時にでも飛んでみせようか?」


「いいの?!楽しみー!」


「魔法とか使えたりする?火をぐわぁって出したり」


「そんなのは出来ないかなぁ」


「ならブレスとか吐けるのか?必殺ドラゴンブレス!みたいな」


「吐けない吐けない、吐こうとしたけど吐けなかったよ」


「鱗あるし脱皮とかするの?」


「恥ずかしいから聞かないで……」


「あっ、ごめん……」


 ーーーーーーーーーー


 ふぅ…………


「なんか、だいぶんスムーズに受け答え出来てたな。じっと見られるの苦手じゃなかったっけ?」


「僕じゃなくて翼と尻尾を見られてるって思うことにしたらなんとか。それに、そのうち記者の人達を相手にしなきゃだろうし慣れとかないと」


 3時間目の休み時間になってようやく一息つけた僕に、意外と言った顔で隆継が聞いてくるのでググッと伸びをしながらそう答える。


「へー……ちゃんと考えてるじゃない。偉いわ、髪の毛梳いてあげる」


「さなかちゃんありがとー、でもちょっとトイレ行ってきてもいい?」


 これに関してはまだいけると思ってたら直ぐに失敗しちゃうからね。ほんと、女の子ってトイレ近いよね……


「……?分かったわ。行ってらっしゃい」


 ふっ、と遠い目をした僕にさなかちゃんは首を傾げつつも、そう言って手をヒラヒラと振って送り出してくれた。


「ん、行ってくるー」


 さて、それじゃあやらかしてしまう前に済ませてこようっと。


 僕はさなかちゃんに手を振り返しながら、鼻歌交じりに教室を出ていった。


「………………一応、ついて行こうかしら」


 ーーーーーーーーーー


 えーっとたしかトイレは……うっわぁめっちゃたむろしてる………混んでるのかねぇ…………


 一年棟の4階にあるトイレへと向かった僕だったが、トイレの前で女子も男子もたむろしてるのを見て混んでると思いうへぇといった顔になる。


 別のところ探そ、たしか真っ直ぐ行けば理科棟があったはずだからそこのトイレに…………ってやっぱりめっちゃ見られてるよぅ……


 朝礼の時に校長先生が言ってくれたおかげで写真こそ撮られてないが、僕は周囲の視線を感じて少し顔を赤くしながら早歩きで理科棟へと向かう。


 あったあった、しかも人が居ない!

 さっさと済ませて出てこよ────────


「鈴っ!」


「わぁっ?!ってさなかちゃん?それに鈴って僕のこと?」


 いきなり後ろから声をかけられた僕が驚いて後ろを振り向くと、そこにはさなかちゃんが立っていた。


「そうよ。ほらトイレなら案内してあげるからついてらっしゃい」


「えっ、でもトイレならそこに…………」


「い・い・か・ら」


「は、はい……」


 そうして僕は有無を言わせぬ雰囲気のさなかちゃんに手を引かれ、理科棟の端にある階段へと連れていかれる。


「ねぇ、どうして別の階に連れてくの?トイレあそこにあったのに」


 階段を降りてる最中に僕は周りに人が居ないのを確認しつつ、小声でさなかちゃんに聞いてみる。


「やっぱり気がついてなかったのね」


 やっぱり?


「あの階のトイレは男子トイレよ、理科棟の女子トイレがある階は1階と3階」


「えっうそ」


「うそもなにもほんとよ、前に基本部屋に居るって聞いたから一応と思って来たけど…本当に来といてよかったわ」


 さなかちゃんにそう言われ、僕は日医会の本部にいた時も自分の部屋のトイレしか使ってなかったのを思い出して苦い顔になる。


 やらかしたぁ……!

 自分の部屋のトイレばっかり使ってたから何も思わなかったけどそうだよね。僕女の子なんだから女子トイレ使わないと……男の頃の習慣が抜けてなかったか…………


「ありがとうさなかちゃん」


「いいってことよ。鈴が男だったってバレないようにするのがアタシと隆継の役目なんだから。それにさなかじゃなくて隆継みたいにサナって呼んでいいわよ」


「じゃあさーちゃんで」


「ふふっ、いいわよ」


 そうして僕はさーちゃんに手を引かれて行くのだった。


以下キャラ紹介


・天霧鈴香(旧名:瑞葉蒼)


周りからは鈴香、姫、天霧、鈴ちゃんと呼ばれる本作の主人公。一人称は僕。

搬送先の病院で突然龍娘となった所を本部から来ていた三浦が確保、その後保護という形で日医会の下層にて数ヶ月間過ごし、2章にしてようやく外へと出ることが叶った。

見た目は薄灰色の髪に若葉色の瞳孔が縦に長い瞳が特徴的な、全体的に美人というより可愛らしさのある容姿。

翼や尻尾、体の各所にある鱗などの色は薄水色。

翼は軸になる部分等は鱗に被われていて甲殻は無い、尖った水晶が翼爪としてついている。

翼は広げると片翼で2メートル強、両翼合わせると6メートル近くになる。

翼膜は1番広いところで220センチもある。根元は敏感で触られるとゾクゾクというかビリビリするような変な感じがするらしい。

尻尾の背は甲殻、腹は皮になっており、長さは173センチ程、腹の部分は撫でられるのが気持ちよくて好きだが先の方は敏感なので触られたくないとの事。


主人公という事もありそれなりに長いので今回はここまでです、続きはまたその内に。

やる気、そして作品の出来栄えにも直結する為感想や評価、レビューをどうかよろしくお願いします!

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