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28鱗目:和やかな朝、龍娘

 あの二人と出会ってから早くも2週間が過ぎ、もう6月も終わりが近づいてきていた。

 僕はいつものように起きるといつものように朝ご飯の用意をし、いつも通り千紗お姉ちゃんを起こして一緒にご飯を食べていた。

 そして朝ご飯を食べ終え満足そうな顔の千紗お姉ちゃんを横目に、食器を片付けようとして僕はふと何かを感じ取った。


「〜〜♪……ん?鈴ちゃんどうかしたの?」


「んー……なんか嫌な感じがしたというか…………」


 僕はそう言うと目は特に何も無い壁の方へ向けていた目を戻して、止まっていた手をまた動かし始める。


「嫌な感じ?んー……まぁ大丈夫じゃない?それじゃそろそろ着替えましょうか」


「……うん……………………で、今日はそれ?」


 僕は千紗お姉ちゃんが取ってきた服を見てそう聞くと、姉ちゃんはノリノリのハイテンションで頷いてくる。


「そうだよー!今日は動きやすさ重視のホットパンツスタイルっ!鈴ちゃん足も細くてすらっとしてるからとっても似合うと思うよ!」


「はいはい。それじゃ着替えてくるねー」


 僕は熱っぽく語る千紗お姉ちゃんに呆れつつも、そう言って翼と尻尾を揺らしながら脱衣所へと向かう。


 千紗お姉ちゃんってだいたいいつもスカートとかフリフリなのばっかり勧めてくるからなぁ……ズボンなんてすっごい久しぶりだ。


 丈が足の付け根くらいしかない前にはチャック、後ろには大きな穴の空いた男だった時以来のズボンを前に、何とも言えない気分になっていた。


 おぉ。なんか大分男の時とは違った感じだ。

 少し気になるといえばお尻がパツパツというか……いやまぁ多分尻尾が原因なんだけどさ。

 お尻が大きくなったんじゃないかって?どこも女性らしい体付きじゃない僕に限ってそんな事ないでしょ。


 チョイチョイとズボンを引っ張り、着心地が落ち着いた所で上も胸元に猫のマークがある白地のTシャツに着替える。


「千紗お姉ちゃん着替えたよー」


「お!いいねー!似合ってるよー!うんうん!ボーイッシュな感じも可愛い!ただ思ったよりも尻尾のせいでお尻の下までしか布無いって考えると……えっちだ」


「ありがとーって最後何か言った?まぁいいや。千紗お姉ちゃんお化粧終わったらいつも通り髪の毛お願いー」


 お化粧中にも関わらず僕にいい笑顔でサムズアップしてくる千紗お姉ちゃんに似合ってると言われ、僕も声を弾ませて髪を整えて貰うように頼む。


「さーて、それじゃあいっちょやりますかー!お客さんリクエストはありますか?」


「んー、店員さんのおまかせコースで」


「はーい!じゃあ今日は簡単にポニーテールにしちゃおう、服にも似合ってると思うし。前髪は自分で出来るね?」


「うん、任せて」


 千紗お姉ちゃんとそんな毎朝のやり取りをした僕は私物置き場にある箱からヘアピンを取り出してきて、千紗お姉ちゃんに背を向けて座る。


「ねぇ千紗お姉ちゃん」


「なぁに鈴ちゃん」


「前々から思ってたんだけどさ」


「うんー」


 そんな千紗お姉ちゃんの生返事と髪の毛を櫛で梳いて貰う心地よい感覚を感じながら、僕は前髪を整えつつ前々から思っていたことを口に出す。


「髪の毛長いの邪魔だから切っていい?」


「ダメ」


「えーなんでー」


「ダメったらダメ。もし勝手に切ったらプリン没収」


「うぐっ…………わかった……」


 プリンを人質にしてくるなんて……卑怯者ー!


 僕はパチリとヘアピンを留めつつ、残念とため息を着く。


「でも少しは整えた方がいいかも……今度切ってあげるね」


「やった♪〜〜♪」


 千紗お姉ちゃんに髪を切ってもらえると聞いて僕は上機嫌に鼻歌を歌い出す。そんな和やかな雰囲気の中で朝の時間はゆっくりと進んでいくのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 鈴香達がそんな事をやってる少し前、あるビルの一角でその太い男、田上誠一郎は鏡の前に立ち身だしなみを整えていた。


「では行くとするか」


「はい。お車の用意は出来て居ますのですぐにでも」


 美希と呼ばれている秘書が田上にそう伝えると田上は満足気に頷き、部屋を出るべくドアへ向かう。


「ご苦労。さて、それでは今度こそ日医会の下層が必死に隠しているモノを暴かせて貰おうじゃないか。そして────」


 ドアノブに手をかけた田上はそこでニヤリと気味の悪い笑を浮かべると……


「ワシのコレクションに加えてやろうじゃないか」


 そう一言言って部屋を出ていった。


 まぐれかそれとも龍の勘なのか、奇しくもその田上の居た部屋は鈴香が見ていた方角にあった。


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