136鱗目:先輩!竜娘
あけましたおめでとうございました()
というわけで今年もよろしくお願い致します!
「うわぁ〜……!天霧さんってそんな感じなんだ……」
「ちょっ、京也君あんまり恥ずかしいからあんまりジロジロ見ないでよ!」
「えーいいじゃーん♪ほほぉ、尻尾の付け根はこうなってるんだね」
「んみゃっ?!尻尾で捕まえるよ!?」
「あはははは!もう尻尾で目隠しされて見えないよ〜」
きゃあきゃあと高い声が少しだけ反響する真っ白な湯けむりの中、その暖かな一日の疲れを癒すその場所で僕と京也君は一糸まとわぬ姿となっていた。
「というか僕達は今女の子同士だし元男同士なんだから別に恥ずかしがらなくても」
「だとしても恥ずかしいのは恥ずかしいの!」
何か前にもこんな会話来た気がするなぁ……
っていうかそもそもなんで僕が……「女の子のお風呂を教えて上げて」って絶対僕よりちー姉ちゃんとかさーちゃんの方が適任だって。
「とりあえず、あんまりジロジロ見ないでね。特に付け根とか」
「心に刻みます」
「それじゃあ体とか髪の毛の洗い方教えるからね」
「はーい」
ーーーーーーーーーー
「とりあえず髪の毛はこんな感じだけど……僕が教える必要あった?」
なんなら僕より詳しいまであった気がするんだけど……
「いやいや、知識で知ってるのと実際にやった事あるのじゃ全然違うから助かったよ」
「ほんとにぃ?」
「ほんとだよー!流石、女の子の先輩!頼りになるー!」
先輩?僕が?
「先輩かぁ……えへへっ♪それじゃあ次に体の洗い方を教えるね!」
京也君……ちゃん?に先輩と呼ばれ、僕は床に付けた尻尾を振りながら翼も小さくパタパタと動かしてしまいながらも嬉しさから少しだけ張り切る。
「っていっても、直接タオルで擦るんじゃなくてこれで泡を立てて優しくこう……こう?」
えー……っと?
「ん?どうかした?」
「あー……そのー…………」
おっぱいってどうやって洗うように言えばいいんだろ?
普通に洗ってもらえばいいのかな?
「頑張ってね?」
「?うん、分かった」
まぁ、うん。まぁ、これで良いでしょう。多分、きっと、おそらく。
「さて、僕も体洗おうかな」
最近脱皮したばっかりだし、鱗も甲殻もまだ柔らかいから傷付けないようにブラシじゃなくてタオルで洗わないと。
最初は毎日こんなの出来るかーって思ってたけど、見事に毎日するのが当たり前になるくらいまでちー姉ちゃん達に躾られたなぁ……
「鱗の所とかの洗い方も自分で模索したりしてねぇ……」
「あ、やっぱりそういうのは自分で見つけたんだ」
「そうだよー。まぁ亀とかトカゲの洗い方みたいなのを参考にしたりしたけどねー」
「そっ、そうなんだ…………亀とかトカゲかぁ……」
「あははははっ。意外と甲殻とか鱗はガッツリ洗わないと気持ちよくなくてねー」
にしても……でっかいなぁ。気にしないでおこうと思ったのにそう横でぽよんぷるんばるんぼるんとされると流石に────
「ん?」
今なんか見えたような……?
ぽよぽよと京也君の手がちょっと圧力を加えて触れる度に暴れ狂っているでっっっかい物に気を引かれていると、ふと目に見覚えのある物が映った僕は横からそのでっっっっっかいのに手を伸ばす。
「ひゃあっ?!あっ、天霧さんっ?!」
「京也君ごめんねー」
「ちょっ、鷲掴みはやめっ!っ……!」
えーっと確か下の付け根位のことに……
「……やっぱり。京也君、これって」
「んんっ……これ、ってぇ「鱗」の、こと?あっ」
京也君の体の動きに合わせ動く邪魔な2つあるでっっっっっっかいのを鷲掴みにして確認すると、その付け根には僕にとっては見慣れたが他の人間にはない水色の「鱗」が生えていた。
「んぅ……っ」
一枚一枚も小さいし、まだ10枚あるかないかくらいだけど……なんでこれが京也君の身体に…………って!
「うるさいっ!」
「やんっ!酷いよ天霧さんっ!」
「京也君こそ変な声を出さないでよ!ていうかなんで京也君に鱗が生えてるのさ!黙ってたって事はなんか知ってて隠してるでしょ」
「まぁ知っては居るけど……全部三浦さんの予測の段階だし、分かるまで話すなって言われててさ。まぁ天霧さんにならいいでしょ。実はね」
「実は……」
「一切原因不明なんだって」
「えぇ?!」
なんじゃそりゃっ!
「僕から言わせて貰えば、そもそも天霧さんの血を飲んだだけで女になる事からなんじゃそりゃだけど」
「それは……うん、確かに」
僕がこうなってるんだからまぁ有り得るのかなって思ってたけど、普通に考えたら血を飲んだら女の子になるなんて有り得ない事だよね。
「三浦さんはそれ以上何にも教えてくれなかったけど、僕としては天霧さんの血を取ったから天霧さんの眷族というか、天霧さんの種族になったんじゃないかななんて考えたり」
「眷族……」
そんなのもあるんだ。でも僕の血を取った動物には鱗は出てないし、うーん……
「とりあえず身体も冷えるし、体洗ってお風呂入りながら話さない?」
「だねぇ」
京也君から三浦先生の考えや京也君自信の考えを聞かされ、考えこんでいた僕は京也君にそう言われとりあえず体を洗ってしまう事にする。
ーーーーーーーーーー
「「あぁ〜……」」
あったかぁーい……
「こう、改めて女の子が大変だーっていう理由がわかった気がするよー。後お風呂が長い理由も」
「ふふふふふ、京也君もこれから毎日こうするんだよ」
「はぁーい」
「で、結局京也君の鱗についてだけど……まぁ、三浦先生にわかんないなら僕らじゃどうする事も出来ないよねぇ」
「だねー」
「でも違和感とかは無いんだよね?」
「なんならブラジャーが食い込まなくていいくらいーったいっ?!」
「自慢かこのやろー」
「自慢じゃない自慢じゃない!自慢じゃないから揉むのやめてーっ!」
「僕の眷族なのになんでこんなに……」
僕もせっかく女の子になったんだから、こう手のひらサイズくらいは……
「あはははは……でも全く不安が無いわけじゃないし、やっぱり初めて見つけた時は怖かったよ。でも女の子に憧れてたのは本当だし、これくらいじゃ後悔は無いよ」
「京也君……」
ぐぐーっと伸びをしながらそう言う京也君の顔は、確かに後悔の無いこれからが楽しみといった顔で、そんな彼女に僕はこれ以上聴き込む気にはなれなかった。
「でも正直天霧さんが使ってたみたいな魔法は使いたかったなぁ」
「でもそういうのって使えば使う程人じゃ無くなったりとかしない?隆継のゲームでそんなのあったよ」
「あぁー……確かにありそう。でも正直尻尾は生やしてみたかったりするかも」
「えぇー?割と邪魔だったりするよこれ?なんなら僕の身長より長いし、油断したら尻尾で物薙ぎ倒しとかしちゃうし」
まぁ慣れれば物を取ったりとかも出来るから便利な所も無いことは無いけど。
「というか、僕としてはやっぱりそんなお姉さん体型が羨ましいんだけど、京也君も元男だったし分かるでしょ」
「まぁそれはねー。あ、でももしかしたら天霧さんも将来はこうなるかもよ?ドラゴンの寿命が長いのは定番だし、僕達は今10代だけどドラゴンにとっては10代は幼児なのかも」
「なるほどー……ってそれって僕の事が幼児って言いたいのかな?ねぇ京也君?」
「いや別にそういう訳じゃっ?!ちょっ、だから天霧さん揉むのはやめっ!」
「お仕置だこのやろー!」
「ひゃあっ!んんっ!」
少しばかり驚いた事もあったが、これから様々な苦楽を共にする事となりそうな京也君と僕はお風呂の中で親睦を深めたのであった。