130鱗目:体育祭!竜娘!
途中でちょっと迷走しちゃったので、読みにくかったり違和感あったりするかもです!
もしそうでも読んで貰えると幸いです!
「お、あんたは商店街の」
「おぉ後藤さん。いつもお世話になってます。にしてもこんな所で珍しい、もしかして後藤さんも?」
「あぁ、うちの近所によく畑の手伝いしてくれる子が居てね、せっかくだから見に行ってみようとおもってね。所であんたの娘は去年卒業してるだろう?暇つぶしかい?」
「いやぁー。実はうちの常連の子が今年の体育祭には出るもんで、これは見に行かないとと思って」
土曜日の朝早く、いつもは学生達で賑わう通学路は例年よりも多数の大人達で賑わっており、その中では普段合わない人達が自分達の見に来た子供の話で盛り上がっていた。
だが、普段来ないその人達が来る目的は────
「おぉ!2人共お久しぶりですね!もしかして体育祭に?」
「お、青果店の。あんたも体育祭見に来たのか」
「今日はいつもは来ない輩も来て賑やかでいい。そういや、結局あんたらはどの子を見に来たんだい?」
「そりゃあ」「もちろん」
「「天霧鈴香ちゃんだ」」
そう、何かと話題になるあの竜娘が目的なのであった。
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「……今年、人多いよな」
「そらぁ今年は注目のあの子がおるからな!嫌でも人が集まるのは仕方ないやろー」
開会式まで残り二十分といった所の入場門、頭に団の色の鉢巻を巻いた体操服姿の生徒達の中で隆継のその呟きにとらちゃんは当然と言わんばかりにそう返す。
「いやそれは分かってたけどよ、関係者席だけじゃなくて来賓に報道に外部者用の場所まで全部埋まった上に屋上まで人が溢れてるのは想定外だろ」
「ハハっ!それはそうやね!」
「お陰で先生含めた皆がソワソワしてて、こっちまで落ち着かないけどね」
「まぁ、その張本人はもう慣れちゃってる様子で千紗さん達と話し込んじゃってるけど」
そんな事をさーちゃんに言われてるとは露知らず、そう話す4人の視線の先で、関係者席の近くに居た僕はへくちと小さなくしゃみをする。
「んみゃっ。えへへ、くしゃみでちゃいました」
「鈴ちゃん大丈夫?」
「大丈夫だよちー姉ちゃん。ちょっと寒かったくらいだから」
「夏間近とはいえまだ朝早くは寒いもんね」
「それに体操服1枚だからな」
「鈴香、お前の体温調節機能は変温動物寄りだ。だから無理せず寒かったり暑かったら直ぐに暖まるなり冷ますなり適した行動を取るんだぞ?」
「はーい」
三浦先生に心配がてら僕の身体について説明をされた僕は、ちょっと照れた様な笑みを浮かべつつ返事をし、体を包み込むように翼を身に寄せる。
「まぁ一応何があってもいいように医療機器やら運送車両やら用意してあるが……それが1番だろう」
「?」
それ?
「すーっずーっやーんっ!」
「ふぐっ!?とっ、とらちゃん?!」
いつにも増してダイナミックに来たね?!というか三浦先生のそれってもしかしてこれか!
「ん〜♪やっぱりすずやんの抱き心地は最高やぁ〜♪」
「とらちゃん恥ずかしいから離してー!それで、何か用事ー?」
「10分前になったから呼びに来たんやでー。所で抱きつかないから下ろしてやすずやんー」
「また抱きつくからやだー。それじゃあ皆行ってきますっ!」
「おう。無理しない程度に力加減して頑張れよー」
「お弁当用意してるからねー」
後ろから勢いよく抱きついてきたとらちゃんをひっぺがした後に小脇に抱え、僕は送り出してくれる柊さんや三浦先生、ちー姉ちゃんに空いてる手を振りながら入場門へと向かうのだった。
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「ただいま」
「おつかれさーちゃん。いやぁ惜しかったねぇ」
「あと少しだったんやけどなぁ」
「だな。ハナ差、いや胸差の本当に惜しい戦いだった」
「隆継?何か言ったかしら?」
「イエナニモ」
体育祭が始まり、午前の部にあるパン食い競走を終え戻ったさなかのちょっと悲しい敗因について言及してしまった隆継は、圧をかけられ思わずカタコトで返事をする。
そしてその様子を見ていた虎白が笑いを我慢していると、次の競技が始まる前の放送が入る。
『続きましてプログラムナンバー八番、借り物競走です』
「お、借り物か。いつもなら内容次第でつまらなくなる事もあるが……今年は面白くなりそうだ」
「せやね!なんてったってこれには―――」
「「「「天霧さーん!」」」」
「うわっ、びっくりしたぁ……やっぱり天霧さんの一年生からの人気って凄いな」
アナウンスの後に選手達が入場し始めた所で、団席に関係なく一年生達を中心に歓声が上がり、それに四人は思わずビクッとなってしまう。
しかしそれは等の本人も同じ事で……
うおぉぉ……びっくりしたぁ。
「天霧さん、大人気だねぇ。お客さんもザワザワし始めたし、なんだか緊張しちゃうね」
「あははは……まぁねー」
その歓声の向かう先である当人たる僕も歓声を浴び、走者の列で待機して居た僕は尻尾を思わずピンとさせビクッとしていた。
「はぁい、それじゃあ第2走者は位置についてー」
っと僕の番だ。借り物だから身体能力はあんまり関係ないと思うけど、それでも三浦先生に言われた通り力は加減しておかないと────
「それでは借り物競走、スタート!」
パァンっ!
ねっ!
『さぁて最初にお題へと辿り着くのは一体誰────ってもう辿り着いてる?!』
そんな事を考えていたにも関わらず、スタートの合図を聞き翼を身に寄せ、自分なりに走りやすい格好で走り始めた僕は他の走者に大差を付けてお題が入っている箱へとたどり着いてしまう。
いけないいけない、ちゃんと力加減しなきゃ……放送の人も驚かせちゃってるよ。さて、最初のお題だけど────
『さぁちょっとしたハプニングもありましたが、圧倒されず足を止めなかった者から次々と最初のお題、道具の借り物へと挑んでいます!しかしどうした事か!一番乗りの青団、お題を握りしめて固まっているぞ!』
「……はっ!」
い、いけないいけない!えーっと、えぇーっとぉー……
「いたっ!」
『おっと、少し遅れてだが青団も動き始めた!向かった先は────』
「そうですわ!ワタクシこそがこの体育祭での真のキーパーソンでありあの不躾な娘最大のライバル、その名も────」
「お話中ごめんね!借り物で貸してほしい物があって、よかったらそれ貸してくれない?」
カメラを構えた人と何やら話をしている金髪が良く目立つ、よく僕に絡んでくれる……金髪の娘の所へと軽く、普通の人間からすれば走るより早い速度でたどり着くと彼女がつけているアクセサリーを指さして片手でお願いのポーズをとる。
「あ、貴方は!」
「貴女という人は……もっとお淑やかに出来ないんですの?」
「えへへへ……」
「まぁいいですわ。これでしょう?今回はワタクシの物に目を付けたその目利きに免じて貸してあげますわ。このワタクシ────」
「ありがとう!後で返しに来るからねー!」
「ちょっ!貴女またっ!」
何か言おうとしてたけど……ごめんねっ、今急いでるんだ!っと見えてきた!
『さぁ、最初の借り物を取りに行くのに出遅れた青団、他の走者が第二の借り物、人物の借り物へと出た所でたどり着いたぞ!さぁここから巻き返せるのか!』
えーっとお題は……よし、これなら!
『さぁ各選手続々と客席や団席からお題の人物を引き連れ戻って来はじめ、ゴールテープへ……おぉっとぉ!後ろから凄い速度で近づいてくる選手が!1人2人と抜いて今ゴールイン!我が校一番の有名人気者、人間には負けないと意地を見せた!っと、失礼しました。さぁ1着の青団、気になるお題はクリア出来てるのか』
「えーっと……とりあえずツッコミは後に回すとして、お題確認させてもらうね」
「はい、先生どーぞ!」
ギロリと余計な一言を言った実況をひと睨みしつつ、両手が塞がっていた僕はそう言うと尻尾の先で持っていた借りた物と借りる物が書かれた紙を尻尾を伸ばして先生に渡す。そしてその紙に書かれていたお題は────
「えーっと、先ずは道具が「女の子らしいピンクの髪留め」は、うん。ハートが可愛いピンクの髪留めだね。こっちは合格っと。……で、そちらの方が?」
「はい!「好きな人」です!」
「えーっと……ご関係は?」
「僕の大好きなお姉ちゃんです!」
「あははは……お姉ちゃんです。鈴ちゃんの姉です」
「あぁ、お姉さんでしたか。お話は鈴香さんから常々聞いてましたが……いやぁー、お姫様抱っことは、本当に仲がよろしいんですね」
「?」
「あはは、いきなりで私もびっくりしちゃってます。とりあえず鈴ちゃん、流石に恥ずかしいから下ろしてくれない?」
「あ、ごめんちー姉ちゃん。急いでたからつい……」
ごめんなさいと謝りながら、連れてくる際にした「お姫様抱っこ」のままだった2つ目の「好きな人」というお題に当てはまる人物であるちー姉ちゃんを僕は下ろし、てへへと言わんばかりにそう恥ずかしそうに頭をかく。
こうして、僕はなんとか借り物競争の一位を取ったのだった。