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106鱗目:怪我、龍娘

 ──失敗────もう一度─────主の─識──再起、───中止────


 声……?…………だれ……?


 ピッピッピッピッピッピッピッピッ────


「……ゆ……め…………?」


 ーーーーーーーーーー


「よ、きてやったぞ」


「あ、隆継ー。いらっしゃあっ!?」


 痛いっ!いたたたたたたた!


「痛いんだから叩かないでよ隆継!」


「おっとすまん、ついいつもの癖でな。ほら下で買ってきたエクレアやるから」


「わーい」


 あの雪崩の後、空に放り投げた隆継や金髪の子、遅れてやってきた捜索隊の懸命な捜索のお陰で意識こそなかったものの、僕は一命を取り留めていた。


 目が覚めてから1週間経ってやっと面会謝絶が解除されたとはいえ、3日も僕は意識不明だったって三浦先生に聞いたし、それだけの怪我して命あっただけ儲けものだね。

 …………もうちー姉ちゃん&さーちゃん&とらちゃんの半日以上に及ぶ三重お説教アタックは懲り懲りだけど。


「あぁ、そう言えばこれこれ。鈴香に学校から渡しといてって言われてたやつ。言っとくけど結構重いぞ」


「ありがとー」


 なんだろ?すっごい大きい紙袋だけど。


「怪我して起きたばっかりでもそれくらいなら片手か……」


 隆継のボヤく声を聞きながら、僕は唯一動かすことが出来る左腕だけを使いなんとか中身を確認し始める。


「……にしてもやっぱり酷い怪我だな。怪我をさせた原因が言うのもあれだが、すまん」


「んーでも皆無事だったんだし、皆ハッピーっつー!」


「ったく……尻尾も怪我してんだから動かすなって行ってんのに」


「あはははは……ごめん」


 そう言うと僕は、癖で動かした尻尾や翼を元の位置に戻す。

 だいたい1週間半経ち、流石に小さい傷は治ったとはいえ、隆継と金髪の子を空へと放り投げ水晶混じりの雪崩を真正面から受けた僕は────


「せめて両手を動かせればもっと色々できるんだけどなぁ……ま、隆継と金髪ちゃんも無事だったんだし、僕も無理した甲斐があったってもんだよ」


 翼や尻尾だけでなく足や腕、頭に至るまで体中を包帯でぐるぐる巻きにされる程の大怪我を負っていた。

 しかしそれ程までの大怪我を負ったが、そのおかげで僕が空へと放り投げた2人を含む同級生全員は衰弱すらあったものの、誰一人怪我をすることはなかった。


「というか、すごい量のお手紙だねぇ」


 こんなに読めるかなぁ。あ、千羽鶴まである。


「それ1年生ほぼ全員が自主的に書いてたんだぜ、まぁ流石に全員お見舞いに行くのは先生達が止めてたが。あぁそうそう、ここ数日凄かったぜ?記者とか」


 うげっ、いや来るのは分かっては居たけど……


「ちなみに……どれくらい?」


「最初に鈴香の家に詰めかけてきた以上の記者、って言えば想像つくか?」


「勘弁してぇ……」


 思わずあの家に引っ越したばかりの頃に詰めかけてきた記者の山を思い出した僕は、ベッドに頭を抱えて突っ伏し、嫌だ嫌だと頭を振る。

 いくら助ける為とは言えあんな大勢の前でド派手に能力を振るった事もあり、予想通り僕があんな能力を使える事は世に広く伝わってしまっていた。


「はぁ……まぁ能力使った時点でバレるって分かってた事だからいいけどさ…………はぁ〜やだなぁ〜〜またしばらくの間追いかけっこかぁ〜」


「ま、頑張れや。それじゃあ今日はこんなとこで帰らせて貰うとするか」


「絶対隆継も巻き込んでやるからなぁ〜」


「はーいはい」


 僕に背中を向け病室のドアに向かって歩いていく隆継に僕は恨み言を投げつけながら、これから来るであろう様々な苦労と────


「すずやーん!」


 賑やかな日常と沢山の来客にため息をつくのだった。


「はーい♪」


 笑顔を浮かべて。


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