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100鱗目:朝ごはん、龍娘

「あー……んむっ」


「あら?」


 合宿2日目の朝、朝とは思えない賑やかな食堂の一角で朝ご飯を食べていたさーちゃんの口からそんな声が漏れ、周りで食事を取っていた僕達の視線を集める。


「どうしたんだサナ」


「いや、鈴がなんだか見た事無いの食べてると思って」


「言われてみれば……それなんなんすずやん?」


 ん?これの事かな?


「これは飴玉ー……じゃなくて…………ほら」


「丸い1口サイズの……水晶?」


 ポケットからだした飴玉サイズの透明な玉を僕が掌に出したのを見せると、それを見たむーさんがそう呟く。


「むーさん正解。むーさんが言った通りこれは水晶だよ」


「へ〜……でもすずやんが食べてた水晶ってもっとこう、拳くらいの大きさの食べとらんかった?」


「まぁあれくらいじゃないとお腹は満たされないんだけど……流石に事情を知らない人からしたら不要物だし、話したとしても嘘だと思われるだろうから」


「だからポケットに隠すことが出来るそのサイズって訳ね」


「そういう事。でももうちょっと持ってくればよかったかもなぁ」


「水晶食べれないからってバイキングの食べ物を全部取ったりしないでくれよ?」


「む、失礼だな隆継は。流石にそんな事─────」


 くきゅるるるるる。


「………………ごめん、するかも」


「アタシのお肉ちょっと分けてあげるわよ」


「ウチのもどーぞ!」


「ありがとう2人とも〜!」


 持つべきものは友達ーってね!


 はむっと2人の差し出してきた食べ物を食べ、僕が幸せそうに尻尾をピコピコと振っていると、そこで隆継達が昨日の事を話し始める。


「そういや昨日さ、男子部屋で全員参加でONO大会やってたんだけどさ」


「全員参加って……あんた達一体何セットONO組み合わせたのよ…………」


「ざっと8セット」


「アホなの?」


「アホねぇ」


「アホやなぁ」


 4色に分けられた数字と特殊な絵の書かれたカードで戦うあの有名なカードゲームの話題を出した隆継に、僕ら女子組は一斉に同じ反応を返す。


「ぐっ……まぁそれで1時間ちょっとの熱い接戦の末、どうなったかというとだな」


「先生に見つかって全没収されたってオチさ」


「あっ!おいまだ言うなよ龍清!」


「あははははっ、そんな事だろうと思ったよ」


「まぁ隆継の事だものね、オチはつくと思ってたわ」


「よっ!流石たかくん芸人!」


「うるせぇ!そっちは昨日どうだったんだよ!」


「きゃー!たかくんのえっちー!」


「ちょっ!なんでだよっ?!」


「流石に女の子が何してたかをいきなり聞くのはないと思うわよ隆継。鈴もそう思うでしょ?」


「ふぇっ!?あっ、えっ、そのー…………う、うん」


 突然さーちゃんに話を振られた僕は、ふと昨日の事を思い出し、耳を赤くして俯きつつ小さい声でそう答える。


「え?本当に何かあったのか?」


「ないっ!何も無いから!」


「昨日のお風呂と就寝前の事だったんだけどね」


「さーちゃん?!すっ、すとっぷ!だめっ!ダメだって!」


「皆すずやんに興味津々でな?かわりばんこですずやんの翼とか尻尾を触りまくってなぁ」


「とらちゃんまで!?だめだってば!やーめーてー!」


「触ってるウチにすずやんが可愛い声出し始めて─────」


「とらちゃん、それ以上喋ったら……パラシュート無しでスカイダイビングさせる」


「ゴメンナサイ」


 こうして僕の尊厳はなんとか守られ、また騒がしく一日が始まったのだった。


「そういやすずやんの翼がさらふわになっとったで」


「まじか、冬毛生えるのか翼」


「みたいね」


「もー皆、そこら辺で辞めてよー」


 こんな風に。


ーーーーーーーーーーーーーー


 後はー、そこら辺で拾ったちょっと大きめの石をここに無理矢理押し込んでー……


「かーんせいっと!」


「「「「「おおぉぉぉおー!」」」」」


「うおぉっ?!」


 いつの間にこんなに人がっ!?あっ。


「ふもっ!」


 二日目の午後、雪を使って自由に遊ぶ事になり、作っていたものが完成したと同時に湧き上がった歓声に僕は驚き、翼を動かすのを止めて雪の中へと落っこちる。


「うぅぅぅ……さぶっ!」


「大丈夫鈴?」


「あ、ありがとうさーちゃん……へぷしっ!」


「あらあら、翼とか尻尾も綺麗に拭いとかないとね。風邪ひいちゃう前に」


「うんー」


「それにしても、お前本当に夢中になって作ってたんだな。まぁこんなでかいの作っちまって」


「あはははは」


 こうなる事が分かってたのか、さーちゃんにタオルケットをかけられた僕は、苦笑いを浮かべながら横に並んだ隆継に続き、顔を上げ目の前にあるものを見る。

 そこには優に5mはあるであろう超巨大な雪だるまが生徒達だけでなく先生にまで囲われ、グラウンドの端に居座っていた。


「んで、この超巨大な雪だるまの原材料はどこから持ってきたんだ?」


「それはね、あっち見れば分かるよ」


「本館……?あっ、さては鈴……」


「そっ、ちょっと雪下ろしをさせて貰いました」


こう、翼と尻尾でずざざざざーってね。


「これまた豪快にやったなぁ……なんか言われたりとかしなかったのか?」


「下ろしていいかって聞いたら逆に喜んで貰えたくらいだったよ。まぁあれだけじゃ足りないから水晶を核にしてでかさ増ししたけど」


 そうでもしないとここまで大きくならないし、なったとしても下の台が頭の重さで潰れちゃうからね。強度の確保にも必要不可欠なのですよ。


「鈴ねぇ……それ、バレないようにしなさいよ」


「それは勿論。帰る時にもすって消すよ」


「消すって何を?」


「「「わぁぁ?!」」」


 他の生徒達が超巨大雪だるまに夢中になってる間、何とか距離を取った所で3人でそう話していると、いつの間にかこっちに来ていたとらちゃんに僕達3人は驚いてしまう。


「び、びっくりしたぁ……」


「心臓に悪いわ……」


「脅かさんでくれ……頼むから」


「あはははは、許してーな。それでなんの話してたん?」


「え、えーっとぉ……」


 な、なんとか隠さないと……


「あの雪だるまの処理法よ、ねぇ隆継」


「お、おう!鈴香が殴って消し飛ばすんだよな!」


「えぇっ!?あっ、いや、そ、そうだよっ!」


「なるほどぉ……ところで三人とも、忘れてるかもしれへんけどウチはすずやんが水晶作れるの知っとるからな?」


「……あっ」


 そういやそうだったぁ!お泊まりの時にバレてたんだった!


「はぁうぅぅ……」


 完全に忘れていた事をとらちゃんに言われ、恥ずかしさから無言でさーちゃんが頭に手を当て、隆継が雪に自ら埋もれる中、僕は顔を隠して耳を真っ赤にし、座り込んだのだった。




 読者の皆様、今回も「ドラゴンガール」を読んで頂き誠にありがとうございます。


 皆様の暖かな感想、レビュー、沢山の応援のおかげで今年1年なんとか「ドラゴンガール」を書き続ける事が出来ました!


 ブックマークは1100件を超え、PVもそろそろ80万、感想なんかは100件を越しており、ウチの子達は読者の皆様にとても愛されてるなぁーとしみじみ感じております。


 どうやら練習作だった前作「女として」から来てくださった方もいらっしゃる様で、作家冥利に尽きるとはまさにこの事だと噛み締めております。

(本来は今日クリスマスの話も上げたかったんだけど……)


 それでは本題に移らせて頂きますが、明日より年末年始はお休みを頂きます。

 来年の1月6日から投稿再開の予定です。

 その間「ドラゴンガール」や、次作「昭和TS転生譚」の執筆をガッツリと進めさせていただきます!


 ですが流石に何も更新しない、というのもあれですので、以前より考えていた事ですが「こたつの中」という作品タイトルで自分の思いつきで2、3話書いてそのまま放置されている作品や、ドラゴンガールの裏設定、「ドラゴンガール」「女として」「雑貨屋」キャラ達のお正月の挨拶などを正月辺りに投稿させていただきます。


 基本的にほんわかとした日常系ばかりの作品ですが、良ければ覗いてやってください。

(反応がいい作品があれば続きを書くかも?)


 長々と後書きに付き合って頂きありがとうございました。

 来年も良い年になるよう、そしてもっと面白い作品になるよう頑張って参ります!

 それでは皆様、良いお年を!


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