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エピソード02ー蘇りし力

「伊鶴先生!一体どういうことですか・・・?」



俺は現実を理解出来なくて、近寄ってきた先生に詰め寄った。




「ここではまずい。きっとこの騒ぎでもうじき下校になる。下校後2人でここに来てください。」



そう言って先生は住所の書いたメモを俺に渡して去って行った。





「清水、この後・・・」



振り返ると清水の髪は銀色に戻り、意識を失ったのかその場に倒れ込んでしまった。




「清水!おいっ清水!」



生きてる・・・気絶してるのか?


とりあえずこのまま担いでこの住所に向かうか・・・



俺は清水をおんぶしてメモの住所まで向かうことにした。






メモの場所は都内の閑静なマンションの一室だった。




オートロックキーの前に立ち部屋番号を押した。



ピンポーン・・・



出ない。



あの事件後すぐに出てきてしまったから、先生はまだ帰ってきてないのか!!


俺気付くの遅すぎ・・・泣



誰も出ないのでその場を離れようとした時、




「はーいなのじゃよ!おぬしは・・・大狼くんじゃな?話は聞いておるのじゃよ♪さあさあ入って来たまへ♪」




先生ではない、変な話し方をした幼そうな女の子?がオートロックを解除してくれた。



一瞬入るか躊躇(ためら)ったが、清水もこんな状態だし、俺は謎の声に従い部屋に上がることにした。







ガチャ・・・



「お邪魔します・・・」



恐る恐るドアを開けた。




「はーい!!お邪魔されたのじゃよ♪今日は大変だったみたいじゃのぅ!さあさあ早く入ってくつろがれよ!」



やたらハイテンションな金髪美幼女が玄関に仁王立ちで待ち構えていた。




「あ、ああ・・・。」


俺は若干引き気味で中に入った。



リビングに案内され、ひとまず清水をソファーに横にならせようとした時、



「ん・・・」


清水は目を覚ました。




「あれ?!ここって??!」


驚いた彼女に事情を説明し、とりあえず目の前の幼女の話しを2人で聞くことにした。





「さあさあ、暖かい紅茶とクッキーじゃよん★た〜んと召し上がりたまへ!」



「い、いただきます・・・」


やはり変な話し方をする幼女に清水は戸惑いながら紅茶をすすった。





「さてと・・・何から話そうかのぅ!」



「ちょっと待ってくれよ、伊鶴先生は?」


「あぁ、彼女はまだ帰って来れないからのぅ!わしが先に説明するのじゃよん!」


「はい・・・」

「ああ・・・」


大丈夫か?





「おぬしたち、今日何か変なモノに襲われたようじゃが、それが何か分かるかのぅ?」



「いや・・・何も分からない。ただ、俺は昔から黒いモヤみたいなモノは見えてたんだが・・・」


「私は今日が初めてです。うっすら黒いモヤモヤした煙みたいなのが見えた程度ですけど・・・。」



「ふむ。2人とも実体が見えた訳ではないようじゃのぅ。おぬし、名はミウと言ったかのぅ?髪色が変わったんじゃったな?」


「はい、でも今はもう戻ってます。」


「そうかそうか・・・それはけったいなもんじゃったのぅ!」


「おい、何かさっきから1人で納得して話してるけどさ、俺たち何も分からねーんだけど。」



「こらこら少年。さっきから何とも無礼な喋り方よの。わしをそんじょそこらの金髪美幼女だと思っておるじゃろ?少なくともわしはおぬしらより10倍は生きておるぞょ?」



「えっ??!」

「はっ?!!いや、普通に信じられねーし・・・」



「信じられないかもしれませんが、この方が160歳なのは事実です。」



「きゃっ!」

「っ!伊鶴先生??!」



いつ帰ってきたんだ、全く気配を感じなかった・・・





「ややこしくなるので私が説明します。


まず始めに・・・今日見た黒いモヤというのは死霊です。」



「え?!今までのモノも全部?!」


「はい。いつから大狼くんが見えてたのかは分かりかねますが、彼らはあの世に行くことも出来ず、自分が何者なのかも忘れ人に危害を被る悪霊なのです。」



「いや、でも俺が今日見たモヤは何か話してました・・・これでやっと・・・とかなんとか・・・。」



「え?!それはまた、今までに聞いたことの無い事例です。大抵は記憶も言葉も失い、この世に彷徨い災いをもたらすモノのみとされています。」



「分かった。いや、まだ理解は出来ないけど、分かった。それはそれとして、こいつが160歳ってのは本当なんですか?」



「うぬぅー!またおぬしは無礼な!!」



「コホン。

はい、この口の悪い金髪美幼女は本当に160歳です。」



「っ!千夜まで!」


幼女は拗ねて部屋の端でいじけ出した。





「この方・・・羽鳥(はとり) 雛菊(ひなぎく)様は、トトというエジプト神の先祖返りであらせられます。」



「うむ!いかにも!」


金髪美幼女はここぞとばかりのドヤ顔と仁王立ちで部屋の端から戻って来た。




「先祖返り・・・?エジプト・・・?」


清水の顔は更に困惑していた。




「はい。簡単に申し上げますと、私は先祖返りや死霊退治などの世界機密を管理する日本支部の者です。


今日本には雛菊様を含め2名先祖返りの方がおられますが、お2人ともエジプト神の先祖返りにあらせられます。」





「・・・???」



更に謎だらけな俺たちをよそに先生は説明を続けた。




「私たち人間は、昔から様々な神を祀ることで人類の繁栄と平和を担ってきました。

もちろんそれぞれの国にそれぞれの神様がいます。


歴史上では知られていませんが、様々な国の神は数百年に1度先祖返りと称し、神であった時の姿、その力の1部を受け継いで生まれ、自身がかつて守った国の平和を更に守り後世に引き継いでゆく。それが言い伝えとこれまでの記録でした。


しかし近年、文明の進化により、祀る神も国によってではなく地域によって、家庭によって、人によってと決まりのないものになっていきました。


そのせいか、1900年を超えた頃から、その土地に関係なく先祖返りをしてしまう現象が増えて来たのです。」



「そう!それがわしなのじゃ!!!」




「んーと・・・先祖返りのシステムについては分かった。いや、分からないが・・・それとその幼女が歳を取らないのは関係あるんですか?」



「それがのぅ、わしも分からんのじゃよぅ。」


「先祖返りのシステムや発生条件については解明されておりません。私たちも結局は機密を守ることだけが義務のようなもので、解明にまでは至ってないのです・・・。」



「なんだよそれ、それじゃあ今回のことに何も繋がらないじゃないか。」




「まあそう焦らないのじゃ少年よ!」



「はい、雛菊様の言う通りです。先程分からないと申し上げましたが、1つだけ過去の文献から明らかになっていることがあります。それは、先祖返りは一斉に起こる。これだけは変わりません。」



「え?って言うことは・・・」



「そうじゃ!わしが先祖返りをしている今、他にも先祖返りが生まれてもおかしくない!っていうことじゃのぅ!!」




「しかし極めて稀なことです。先祖返りをされたお方は、人より成長が早く、160歳はおろか、50年やそこらで命が尽きてしまいます。それなのに雛菊様は幼いままの見た目で成長は止まり、160年という長い時を生きて参られました。そしてその時他に先祖返りをしている方は誰もおりません。・・・これは歴史上初めてのことなのです。」



「そしてそこに現れた、死霊が見えるお2人。しかも清水さんは髪色が変わり、大狼さんは触れただけで死霊を葬った・・・。


これはとても目を逸らせない事実です。

今まで先祖返りは母体から出た瞬間からその身に神の力を宿していました。


しかし、お2人は途中から神の力を宿したかもしれない。それもまた未だかつて無い異例なこと。


そしてまだ何の神か、悪ではないか分からない・・・。なのでお2人を監視対象とし、このマンションで一緒に暮らして頂くことになりました。既に親御さんには大怪我を負ったので政府の極秘治療施設に搬送済み。面会は出来ない。とのことは伝えてあります。」






「はあ・・・」




にわかには信じ難いが、今日の出来事を思い返すと自然と先生の言葉は頭に入っていった。









「これからは一緒にくらすのじゃな!楽しみじゃのぅ!」


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