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エピローグ

俺の名前は大狼(おおがみ) 幸太(こうた)、地元の公立高校2年生。

彼女もいて友達も多い、いわゆるリア充ってやつだ。


今日もホームルームが終わったら、クラスで一番人気の彼女と校門で待ち合わせてデートの約束がある。


ゲームセンターに行って、俺の得意のシューティングゲームを披露するんだ。


俺の勇姿を見届けた彼女は帰りに俺に抱きついてくる。


「・・・おーい。」


そこを通りかかった親友のケンタにいじれながら、照れくさそうな顔をしている彼女と手を繋いで帰る。それから・・・


「・・・コウタ!」


お、親友のケンタが呼んでる。早く行かねーと・・・


バンッ!!!


「おい!フコウタ!何寝てんだよ!日直変わるって言ったよな?早く仕事しろよ!俺が怒られるだろ?!」


良い夢を見ていた気がするのに、クラスメイトの罵声と机を蹴られる音で目が覚めた。


「早く行けよ、フコウタくんw」


目の前に俺をいかにも底辺と見下した顔の、クラスでもリーダー格の鈴木が立っていた。



どうやらこれが現実らしい。


冒頭で言った俺の名前と学年は間違っていない。


ただ、彼女も友達もいない、休み時間は常に教室の片隅の席でゲームをしてる、リア充とはかけ離れたいわゆる根暗ボッチが俺の分類だ。


気が弱い訳ではない。


喧嘩も、むしろ昔から父親に護身用で空手と柔道と合気道は習っていたからクラスメイトの中では確実に強い方だと思う。


だが、それでも言い返せない、立ち向かえない理由がある。


「おい!フコウタ聞いてんのか!」


さっきからこいつが言っている、フコウタが全てを意味している。


そう、俺に関わる奴は全員不幸になる。


正しくは、俺が不幸にしている訳ではないんだが・・・



原因は分かっている。


物心ついた頃から、俺には邪悪な何かが見える。


姿形が見える訳ではないが、黒いモヤがかかった何か。みんなには見えないその何かが見えるのだ。



俺は昔は正義感が強い少年だった。


テレビのヒーローに憧れて、俺にはその力がある!と自分をヒーローの1人だと信じ切っていた。



黒いモヤは大体綿あめくらいの大きさで空中を常に浮遊していて、一見害は無さそうに見えるが、必ず黒いモヤがある所には何か不幸が訪れる。


それを俺は見過ごさずにはいられなかった。




小学校に上がったばかりの頃。


課外授業で校庭で虫取りをしていた。

初恋の相手、隣の席のミウちゃんとペアになって、校舎の脇の植木をかき分けている時だった。




ガシャーーーーンッ




空から植木鉢が落ちてきた。



いや、黒いモヤが彼女目掛けて植木鉢を落とした。

俺には全てが見えていたので、とっさにミウちゃんの手を掴み思い切りこちらに引き寄せた。


だが小学生の力なんて大したことはなく、軽く避ける程度しか引き寄せられなかったので、ミウちゃんは落ちた破片で額に傷が出来てしまった。


それを見ていたみんなは、軽く怪我はしたものの、ミウちゃんを救ったヒーローとして、一旦は俺の事をヒーロー扱いした。


ミウちゃんも感謝してくれていた。



問題はここからだ。



俺は黒いモヤが見える度、いろんな子に近付いて、災難から助けてあげていた。



するとある時、クラスメイトの男子がこんなことを言い出した。


「なんか・・・コウタといるとこわいことになるよね。」


それに続いてクラスメイトたちも


「うん。コウタくんがいつもこわいことしてるんだ!」


「でも、コウタくんおばあちゃんに、コウタのこうはしあわせのコウだよっていわれたって、いってたよ?」


「ぼくしってるー!しあわせのはんたいはふこうなんだよ!」


「じゃあコウタくんはフコウタくんだー!」


なんて、お約束の展開になり・・・



「みんな!コウタくんのことわるくいわないで!!」


なーんて、俺を庇ってくれていたミウちゃんも、両親の仕事の都合で転校になり、俺を庇う者は誰もいなくなった。



それがきっかけで黒いモヤを見てももう何もしないことにした。




現れたとしても、どうやら天変地異や厄災をもたらせる程の力はないらしく、ささいな問題を招く程度だったので、俺の疑いは余計に深まってしまった。



噂は噂を呼び、地元の奴らばかり集まるこの高校でもあっという間に、コウタに近付く奴は不幸になる。という噂が広まってしまったのだ。



ここまで根深く広まった噂を取り除くのは容易ではないし、俺をいじったり茶化してくるやつを力でねじ伏せるのは簡単だ。



でもそれはまた、不幸に繋がるからやらないが・・・



お陰で今まで友達はゼロ。


彼女だって出来たことは無い。


片思いはしているが、絶対に実らない相手なのできっとノーカウントのままだ。



思い出も全然ない。



ただ、小学校の頃初めて買って貰ったゲームの主人公に、ケンタという名前を付けて遊んでいた。


それが俺の親友・・・ということにしていた。


1人でずっと家にいたので、ゲームの腕は上達。


言わばヘルモードも容易にクリア出来る程度になっていた。



・・・俺の人生もヘルモードだよな。


しかも開始早々。


みんなイージーモードからスタートなのにおかしくないか?


その後もハイで、いきなりヘルなんてクソゲーすぎるだろ。


いつもそう思っていた。




昔、唯一ゲームのことで多少会話をしていたクラスメイトに、思い切って黒いモヤの話しをしたことがある。


でも誰も信じてはくれなかったし、フコウタに続き、ゲーマー妄想野郎の危ない称号までついてしまった。



実際調べても何も手がかりは掴めないし、両親も仕事で海外を飛び回ってるので、俺は祖母と暮らしていたし、心配はかけまいと身内には誰にも言えなかった。



1人だけ今信用出来そうな人もいるが、彼女もきっと離れていく。



これからも、きっとひっそり生きて死んでいくんだと思うとゾッとするが、それが俺の人生だと思っていた。



誰にも見えない、災いの元が見えてしまう。


だからってどうすることもできない。


むしろどうにもしなくてもいい。


見て似ぬふりをすれば良いだけ。


それが俺のヘルモードな運命だから仕方ないって、自分に言い聞かせるしかなかった。









そう、今日この日までは。











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