表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
H.L.C.E ーヘルスー  作者: 三墨スミス
第二章
9/11

2-5

ツイッターやってます。三墨スミス(@Smith_Misumi)です。

感想、誤字報告など、そちらでもお受けしてます。

ドシドシ絡んで下さると、作者は泣いて喜びます。ホントです。

「これまで話をしてきて気付いたかもしれないが、死んだのは一人だけじゃない。イルカ連合で確認しているのは五人。先に戦っていた天求の死亡者の数は正確に分かっていないが、十人はいると聞いたことがある。つまり、ミミカに話していた話にはもう一つ嘘がある。死んだのは一人じゃなく、もっと多くの人があの一日で死んでいる。ミミカがこの世界に来たのはその一日の数日後だったけど、みんな気丈に振舞っていたから、その後から来た人は気付かなくてもおかしくはない」

「そんなことがあったなんて……みんな凄く元気だったから……私、その話を色んなところで……」

「気に病むことはないよ。あの時に真実を話せなかった、私の責任だ」

「ううん、私ちゃんと謝らなくちゃ。ごめんリリシャ、ちょっと行ってくる!」

「ミミカ!」

 駆け足で家を出ようとしていたミミカを、リリシャは焦って引き留めた。突然呼びとめられたミミカは、こちらを振り返り、

「今じゃなきゃダメな気がするの!」

 リリシャの引き止めを自らの意思で拒んだ。

「いや、そうじゃないんだ。行くのは引き止めない、でもその前に、ミミカの瞬間転送をエスエムさんかエアーロイさんのどちらかにチャージしてくれないかい? 昨日、今週は瞬間転送をまだ使ってないって言ってたよね。もし使ってしまったなら……」

「ううん、この人たちならいいよ! 必要なんだよね!」

「そうなんだ。ありがとう」

「お姉ちゃん、腕についてるリソースバングル見せて!」

 その言葉に応じたミミカは、里宮に近寄ると何やら腕についている、リソースバングルという名前だったらしい腕輪を触り始めた。

「そういえば、あなたには瞬間転送のこと話してなかったはずだけど、どうして知ってるのかしら?」

「ああ、それかい? 調印式の直前に、報告が入ったんだ。君たち二人が使ったことも、ミミカが連れてきたこともね」

「それを知ってて、信用してたなんて……本当に正気とは思えないわね」

 そういえば、闘技場に行く前にミミカが「違反者かと思った」とか、そんなことを言っていた。そんな危険人物を信用するほど、ミミカに対するリリシャの信頼の高さは凄いのだろうか。呆れるのも無理はないな。

「はい、終わったよ! じゃあ、行ってくるね!」

 チャージ作業を終えたミミカは、そう言うと風のように家を出て行った。

「では、私はエアーロイさんに」

 続いて、リリシャは有賀にチャージ作業を開始した。

「確かに、瞬間転送できるようになってるわね」

「だろう? この瞬間転送を来たばかりの君たちが使えたことには驚いたけど、これは自分が使ってない場合は、既に使ってしまった人に対して譲ってあげることができるんだ」

「そんな機能まであるんだなー、このゲーム。ま、俺は里宮に指示されるがまま、使っただけだから、凄いのは里宮だよな」

 確かに、何も説明書も仕様もわからないゲームで、こうも慣れるのが早いのは驚きだが、そう里宮里宮言ってくれるな。俺の気遣いは何だったんだ。

「じゃあ、エスエムさんはこのゲームの感度調整も凄く上手くなるんだろうね」

「私にできないことなんてないわ」

「ふふ、それは心強いね。君たちに手伝ってもらいたいことは、少し危険が伴うかもしれないから」

 爽やか王子様風美少女は、元いた席に戻ると口を緩めた。凄く聞き捨てならない言葉があったのは気のせいだろう。

「さて、話を進めるよ。その瞬間転送の意味も直にわかるはずだ。まず、私がここにいられるのは他でもない、雨ちゃんのおかげだ。その雨ちゃんは、あの日に自分の時間を使って、治せるだけ多くの人に自分の時間を分け与え、前線に飛び出た。その時に雨ちゃんに残っていた時間はちょうど二千時間。月計算にして約三カ月。その日からもう二カ月半以上経過している」

「もう半月もないじゃんか!」

「ああ、だから我々イルカ連合は来る半月後に備えて、色々な準備をしてきた。それには、西方で密偵をしていた紅葉の情報が必須なんだ。だが、彼女たちがどこにいるか、まだ掴めていない。彼女たちは密偵の精鋭とだけあって、今日まで東方から西方、南方まで情報の網を広げたが全て空振りに終わった。だが、今日その内の二人が姿を現した。名前はふうらいとヒビキ。君たちが聞いた声の主はヒビキだ。そして、もう一人のふうらいという人物は、温厚で背の高い男性だ。私は交流会が開かれた時、彼と会っていた。そこで彼から「イルカ連合は渡してもらう」という趣旨の話をされたんだ。その頃、会場にいる幹部から連絡を受けて、この事態を知った私は、彼にまた後で言っておかなければならない話があると、鍵を渡し、合流場所だけ言付けて戻ってみると、あの様子だった訳だ。そして当の彼は、まだその待ち合わせ場所にいる」

 リリシャはそう言うと、円盤状の機器を懐から取り出して、それを見つめた。

「それは何?」

「これはリアレーダーといって、自分から一キロ圏内にいる、フラッグキーという鍵を持ってる人のいる位置を見ることができる機器なんだ」

 リリシャがこちらに向けたリアレーダーという機器には、この家の周辺の地図とその上を点滅している赤い丸が複数確認できる。

「このリアレーダーが反応するのは、所持者のいるフラッグキーのみ。私が指定した場所はこの家から南にある、共同慰霊牌横の大霊樹の陰。このゲームで亡くなったあらゆる者の集合地とも言われている神聖な場所だ。そこにまだ反応がある。フラッグキーは所持者の体から離れると、リアレーダーから反応が消えるようになっているから、まだいることは確かだ。そして、ここからが君たちに頼みたいことだ」

 そう言い、リリシャはリアレーダーの右下に表示されていた四角いマークをタップすると、その地図は広範囲に広がり、このヘルスゲームの全体図が露わになった。

 ヘルスゲームの全体の地図を見たのはこれが初めてだが、綺麗に四等分されているわけではなく、東方の区域は他の区域に比べて少し広いらしい。西方に指定されているところと比べると、二倍ぐらいはありそうな感じさえする。今さらだが、これだけの領地のほとんどを統率するリリシャの仁徳は、俺が感じている以上なのかもしれない。

「さっき私は一キロ圏内にいる者を表示すると言ったが、フラッグキー所持者がそれ以上外側へ出そうになった時、リアレーダーには青色点滅でそれを知らせてくれる機能がある。もちろん、その青色点滅は三秒後消失し、それ以降の位置は分からなくなってしまう。だが、それが瞬間転送によるものだった場合、瞬間転送された場所に三秒間青色点滅が出ることになる。彼らがより遠い位置から来たなら、より瞬間転送で帰る確率は高くなるだろう。彼ら自身、尾行を撒くにはそれが手っ取り早いからね。そこで私がフラッグキーをふうらいに持たせたまま、帰ってもらうよう図っておくんだ」

「つまり、俺らはその青色点滅と同じ位置に瞬間転送して、そいつらの拠点を見つけてくればいいって訳だな」

「さすが探偵だね。察しが早くて助かるよ。私はこのゲームで色々な人に顔が知られているから、それができなくてね」

 若干一名、不安な奴もいるけどな。

「彼らは常に警戒してるだろうし、そのまま拠点に瞬間転送するのは考えられない。正直、東方以外の可能性を捨てきれない。きっと瞬間転送した後は、徒歩か乗り物か、何らかの移動手段でそこまでいくはずだ。そこが東方以外の区域なら、チャットで話すこともできないようになっている。私がさっき危ないと言ったのは、その道中に何があるかわからないから、用心してほしいということなんだ」

「私たちにしてほしいことはわかったけど、チャットが使えないなら拠点の場所はどうやって教えればいいのかしら? そのリアレーダーも反応しないんじゃ、もし場所がわかっても教えようがないわよ?」

「それは問題ないよ。組合に入ったら、自分の位置情報を教えるマーキングスポットという機能が使えるようになる。組合専用のチャットもあるけど、それはやはり他の区域からは使えない。でも、この機能はどこの区域にいても自分の位置をメンバーに教えることができる。通常は、密偵部隊との交信に使ったりするんだけど、今回はそれを使って報告してほしい。まずは、使い方の説明をするからメニュー画面を開いてくれ」

 リリシャの指示通り、リソースバングルからメニュー画面を開く。すると、自分のキャラクター名の下に〈イルカ連合〉という文字が表示されていた。このゲームの組合登録はキャラクター名を登録しただけで、メニュー画面を開くことはなかったから、今まで気付かなかった。

「名前の下にイルカ連合と書いてあるだろう? その横に四角いプラスマークが付いているはずだから、それを押してみてくれ」

 言われるがままにその小さなプラスマークをタップすると、小窓がプラスマークの下から出現し、そこにはいくつかのコマンド名と思われる名前が表示された。そして、その中にはマーキングスポットと書かれているものもあった。

「そこにマーキングスポットと書かれているものがあるはずだから、拠点を見つけたらそれを三回押して知らせてほしい。そこまで終われば、一旦ログアウトして、すぐ瞬間転送が使える明日にでも、ここに戻ってきてくれ。その頃には、私はもうそこへ行く準備を済ませて君たちを待ち、帰還が分かり次第、私はそこへ向かおうと思う。先ほども言ったが、探偵をやっていて隠密行動が得意でも、少し危険が伴うかもしれない。それでも頼まれてくれるかい?」

「愚問ね、任せなさい!」

 もう完全に探偵なんですね。里宮さんよ……。

 こんな調子で野放しにしたら何やらかすか、分かったものじゃない。こうなった里宮は手を付けられんからな。

「……でも、ここに戻ってくることはできないわ」

「どうしてだい!? 状況的には敵が目の前にいるのと変わらないんだよ? 場所が悪ければ、どうなるか!」

「アオも、さすがに良輔だって気付いてるんじゃない?」

「ほぼ当人で間違いなさそうだな」

「そ、そうだよな!」

 もう気遣いなんて知らないよ、俺。泣きたくなってくる。

 どいつもこいつも本名言いやがって。

「私たちが調査してるのは、恐らくその紅葉ってプレイヤーよ」

「まさか……本当なのかい?」

「ええ、深い仲という訳ではないけど、今さらあなたに彼女を説得する算段がなくとも、この事実を知った以上、それを見届ける義務があるわ。それに、良輔との賭けもあったしね。当然、私の勝ちだけど」

 ……まあそれに、里宮だけで解決させようなんて、不安要素の一点に尽きる。目先の問題が解決したとしても、この問題は思ったより根深い。そもそもこのゲーム自体、一般には開示されてないものだ。その事実に食いつかない訳がないほど、融通が利かないのが里宮だからな。

「そうだったのか……わかった、では君たちがログインするのに合わせて、私もそちらに向かおう。本来は、問い詰められたときに本当のことを話していれば、こんな手間を取らせることもなかったんだ。本当にすまない」

「もう今さら、引き受けないなんて言わないわよ。さあ、行きましょ!」

 再び目の輝きを灯した里宮ほど怖いものはない。

 今まで探偵と言っても、ごくありふれた日常の中で起きた異変など、刺激が足りなかったのだろう。

 かくいう俺も、こんな異質な状況にどこか期待してしまっている。

 ただただ、悪いことが起きないように祈りながら。


第二章完結!

第三章以降の更新は、隔日か二日おきを目処に考えています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ