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ツイッターやってます。三墨スミス(@Smith_Misumi)です。
感想、誤字報告など、そちらでもお受けしてます。
ドシドシ絡んで下さると、作者は泣いて喜びます。ホントです。
「君たちをここに招いたのは、他でもない。先ほどあの映像を流していた仲間全員、もといメンバー全員を説得するのを手伝ってほしいんだ」
「なるほどね。でも、一ついいかしら」
「何だい?」
「なぜ、他の組合のメンバーではなく、今日入ったばかりの、その上素性も分からないような私たちに頼むのかしら?」
「確かになー、こんな事態で信用できる人がミミカちゃんや俺たち以外にいないっていうのは、勢力の規模から考えてもおかしいしなー」
まるで盲点を突かれたかのような反応で、腕組みをしながら頷いている有賀を傍目にリリシャは答えた。有賀の能天気具合はここに来て直る気配は一切ない。
「もちろん、私が信用してる人はいるよ。この件が終わったら、君たちにも紹介するつもりだ。でも、出来ることならその子たちをこの件に関わらせたくないんだ」
「その理由を聞いてもいいかしら?」
「ああ。端的に言うなら、ある事件に巻き込まれた当事者だからかな」
「事件?」
「そう、北方と東方間で起こった大規模な領土戦、最も死者を出した《最悪の一日》と呼ぶもの者もいる。これはミミカにも話したことがなかったね。……いや、話したくなかった、が正しいか……」
リリシャは呼吸を一つ置いた。その表情にかつての光はない。
「あれは東方がまだ二大勢力で衝突していた時のことだった。その日も大規模な総当たりの領土戦で、私たちイルカ連合と天求という組合は両者に甚大なダメージがでていた。特に幹部を引き受けていたメンバーは前線で戦っていて、連日の領土戦で消耗した者も出ていた。そんな中、北方の全地域を支配したBLINDという組合が東方へ奇襲を仕掛けてきたんだ。きっと、内部にスパイが潜んでいたのだろうね。北方に隣接していた天求はこの一大事にイルカ連合に救援を出してきた。彼らは敵とはいえ、長く鎬を削りあった仲とだけあって、少なからず情があった。それに、漁夫の利を得ようとする北方にこの土地を占領されるのは癪だった。中には反対の声もあったが、それを説得し、北方を迎え撃つことになった。……だけど、北方の勢力はこちらの予想を遥かに凌いでいたんだ。攻めてきたのが一部戦力とはいえ、こちらに数の利があっても圧倒的なポイントの不利があり、ほどなくして天求は降参した。残った私たちは、それでも必死の抵抗を続けた。負け戦だとわかってはいたが、皆の士気は下がるどころか、上がる一方。もう私だけでは歯止めが利かなかった。そこに現れたのが、戦闘が不得意で治療や後方支援をしていた雨ちゃんだ。君たちがあの映像で聞いただろう、その子だった。迷惑をかけるからと、一切前線に出てこなかった雨ちゃんが出てきたことに驚いた私たちは、再び目を疑った。彼女は何の迷いもなく強制休戦のコマンドを使ったんだ」
「強制休戦なんて機能のコマンドあったかしら?」
里宮の言葉につられて、メニュー画面を開いてみるが、確かにそういったコマンドがある気配はない。
「ないのは当然だよ。このコマンドは組合の幹部以上の地位が必要だからね。それに領土戦しか機能を使えない限定的なものなんだ」
「その強制休戦のコマンドに何かデメリットがあるのか?」
少なくとも、そうして雨ちゃんと呼ばれる子に何かが起きたのは分かるが、目を疑うほどの衝撃となると、最悪のパターンだろう。
「そのコマンドは、破ることのできない絶対的な休戦が約束される代わりに、使用者のヘルスポイントを全て休戦する時間に変換するコマンド。つまり、自分を犠牲にして領土戦を一時的に止めさせるものだ」
――そう、例えば自己犠牲だ。
「じゃ、じゃあ、リリシャが雨ちゃんって子を見捨てたっていうのは嘘なの?」
「……いいや、もしあの時に私が降伏していたら、彼女があんな行動に出ることはなかった。だから、私が見捨てたと言っても過言じゃない。同じくしてその一部始終を見ていた数人の幹部たちもいた。彼らも私と同じように、立ち止まる勇気を出せなかったあの時の自分を悔いている。責められるべきは私なのに、紅葉の言葉を思い出すたびに、みんな胸が張り裂けそうな思いをしているんだ」
リリシャもリリシャで、大勢の人に囲まれている時にあったクールな印象やさわやかな印象は、今は欠片も感じさせないほど悔しそうな表情でいると、ここはまた違う世界かと錯覚してしまいそうな自分がいる。
「あの映像のほかにリリシャを責め立てた人はいないのか?」
そんなリリシャに、心の中で憎むにしろ、責任を感じるにしろ、表立って責め立てた人が一人だけというのは不自然。一人現れれば、もう一人や二人ぐらい出る方が自然だが。
「誰もいなかったよ。でも、彼女を悪く言える人も誰もいない。何せ彼女はイルカ連合の初期メンバーで、この組合を信用して雨ちゃんを誘ったのも彼女なんだ。ここでは、紅葉は誰にでも好かれるその性格を武器に密偵部隊の隊長となって、戦闘の不得意な雨ちゃんは医療部隊の幹部となった。ただ、隠密性を高めるために紅葉は幹部には登録しなかったし、もちろん強制休戦のコマンドなんて知ってなくてもおかしくはない。その上、あの《最悪の一日》の日、彼女はある依頼のために西方にいたんだ。彼女がそれを知ったのは、依頼の経過報告で東方に返ってきた二ヶ月後。当時あの場所の近くでそれを見ていた幹部の一人が録画したものを見たことで、彼女はこの地で起きたことを知り、密偵部隊のメンバーと共にこの組合を抜けた」
憂いに満ちた空気が流れる中、大人しかった里宮は立ち上がり、それを換えた。
「あなたが幹部たちに任せたくない理由はわかったわ。話から察するに、あなたがさっき言っていた説得したい仲間というのも、その密偵部隊で間違いないわね?」
ふと里宮の顔を見ると、目の前に真実が転がり込んできたワクワクという顔よりは、不信感丸出しといった不機嫌な時のそれだった。今まで見たことのないぐらいの。
それに口調も心なしか荒っぽい。
「ああ、その通りだよ」
「でも、あの仲間がやったのは、明らかにあなたの組織を壊滅させようと、敵意を持った行動をしていたわ。その仲間が何を考えてその行動を起こしたのかぐらい、考えればすぐわかるわね?」
「……恐らく、乗っ取りや崩壊だろうね」
「その乗っ取りを考えているような連中に、あなたは戦って無理やり取り込むでもなく、一度信頼を失った人に説得しようとしているのよ? その無謀さや難しさを分かった上でなお、あなたにはそれを乗り越える算段があって、ほぼ見ず知らずの私たちにその一端を握らせようとしてるって意味、ちゃんと理解してるのかしら?」
「ああ、君たちに裏切られれば終わりだ」
「それを分かってるのか聞いてるのよ! その仲間は大切な人なんでしょ!? それを一度も関わったことのないような奴に計画も過去も信頼も、全部晒して! 私だったら知らない奴に大切な人の信頼を壊されたらッ!」
初めて聞いた里宮の怒声に委縮していた意識は、いつの間にか里宮の声を遮るようにと切り替えられ、気付けば俺の右手は里宮の左肩を掴んでいた。
「里宮、落ち着け」
俺の手を剥がそうと振り返った里宮の顔には、少し赤みがかった頬と、目元には確かに光るものが見えた。
ゲーム上とはいえ、里宮が周囲の目をまったく気にせず、会ったばかりの人物に感情を露わにし、涙目にまでなっていたその非現実的な景色に圧倒された俺の手は、力が抜けきってあっさりと剥がされた。
俺が現実感を取り戻した頃、里宮はすでに背を向け顔を拭っていた。
「君にも、大切な人がいるんだね。その涙を流せる人が、一時の感情で裏切りを起こすとは、私には到底思えない」
「……ったく、言ってなさい」
「それに、一切私以外と交流を持とうとしなかったミミカが連れてきた人たちなんだ。信用もするさ」
この家に入ってからというもの、ここが現実世界で起きている出来事とは思えないほど、奇妙な現象が多発している。
ミミカが泣き、リリシャが弱り、里宮が怒り、そして今は、膨れている里宮と一連の出来事に気圧され、硬直している有賀とミミカ。そこに、ここに来て見たことのない部類の笑顔をしているリリシャ。交じりっ気のない安堵のそれである。
「まあ、座ってくれ。話には続きがあるんだ」
立ち上がっていた里宮と俺は再び座りなおし、激しい気流に揉まれて途切れた話はまた再開した。
次回第二章完結!
変わらず更新は明日明後日中の予定です!




