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H.L.C.E ーヘルスー  作者: 三墨スミス
第一章
3/11

1-2

今回は進展少なめですが、ご容赦ください。

次回更新も、数日中に予定してます。

 ――そして来る翌日。

 折角の休みだというのに、HLCEとHLCE-GAMEとやらに必要らしいHLCE-VRLというハードウェアを、紙袋に三人分をぶら下げた里宮と有賀が調子のよい挨拶と共に、朝っぱらから我が家を訪れた。

 HLCE-VRL――ヴァーチャル・リアリティ・リンカーという、ゲーム機らしい――は、里宮が用意したとか。そういえば、こいつは良いところのご令嬢だというのを、すっかり忘れていた。でも忘れるのも仕方がないさ、何せ性格がアレだからな。

 そのお嬢様は、俺の部屋に上がるなり「さあ、早くダウンロードするわよ」と、我が物顔で部屋のど真ん中に紙袋を置くと、HLCE-VRLを俺と有賀に手渡した。そして取扱説明書を俺に渡したかと思うと、設定をするように強要、仕方なく設定を変えること数十分、各々の準備が完了した。

 HLCE-GAMEは、被招待者が招いた二人まで参加を認められ、それぞれに固有の番号が与えられるようになっているらしい。いかにも怪しい文で送られているわけでもなく、こんな事態に遭遇した人でもないと、ありがちなゲームの勧誘か何かかと勘違いして、メールを消してしまうのも無理はない内容しか書かれていなかった。

 メールの放置癖がある俺じゃなかったら、間違いなく消してたね、これ。証拠が出辛くなっている要因の一つに違いない。

 そんな味気のない文章に添付されていたダウンロード先から、HLCE-GAMEをダウンロードすると、ベッドを背もたれに三人並び、ヘッドホンのような形状をしたHLCE-VRLを頭に被せると、HLCE-GAMEを起動させた。



 起動と共に襲ってきた眠気のような感覚に抵抗することなく、VRの世界にすんなりとログインした俺は、機械音声に指示されるまま、キャラクターの作成画面やら注意事項を読み終えた。そして、促されるままHLCE-GAMEの世界に接続すると、幻想的な光に導かれながら東方中央広場という場所に降り立った。ひとまずは傲慢なお嬢様の事前のお申しつけ通り、俺はその場で待機して残りの二人のログインを待つことになった。

 ……にしても、想像以上にだだっ広いし、落ち着こうにも落ち着けない。

 ゲームはどちらかといえば好きな方だが、HLCEと連携したゲームをするのは初めてで、HLCE-GAMEに用意された、必要以上に凝ったキャラクター作成のパターンの多さには驚かされた。

 五感を使ってプレイするゲームだから、5Dとか言ったか? その類のゲームをプレイするのも初めてだが、周囲にある花壇に近寄ってみると、質感も現実とそっくり。葉っぱや土の触感も似ている。そして手が土で汚れるところまで。ご丁寧なことで。

 尚も音沙汰のない彼らを待っている傍ら、ゲームについての情報が殆ど皆無な現状を打開するため、右手首に装着されているメタリックな細い腕輪を調べてみる。

 その腕輪には円形の宝石のようなものが嵌められており、先ほど聞いた注意事項通り、そこを撫でるとメニュー画面のようなものが視界に表示された。どうやら、このメニュー画面にはプレイヤーのプレイ履歴やらHLCE-POINTといわれるポイントが表示されたりするらしい。それに合わせて、レベルの表示やステータス等の表示が見受けられない。つまりは、このゲームにレベリングの概念はないのだろう。となると、このHLCE-POINTとやらを賭けたりして、ゲームをプレイしていくのだろうか。


 他にも何かないか探ってみるが、プレイした実績で解除される称号があるとか、フレンド機能という、HLCEの識別番号を打つことで友達として登録される機能があるとか、ゲームとしては標準の機能が備わっているということがわかったところで、ピコンという軽快な音とともに一通の着信が届いた。

 その着信はフレンド申請のものだったらしく、事前に識別番号を聞いていたことから、里宮のものだとわかった。いや、識別番号を聞いていなくても、身近で自分の名前に〈様〉を付けるような奴は一人しかいないからわかったかもしれないが。

 いざ申請を許可すると視界の左下に現れた小さなアイコンが突如忙しなく光りはじめ、何事かと開いてみれば、里宮がチャット機能を使って物凄いスピードで「どこにいるの」「いま何が見える」「場所の名前は」「ねえ、聞いてる」と捲し立てて来ていた。

 激流のような言葉攻めに、慌てて「東方中央広場」と慣れない手つきで入力し終えると、「そこで待ってて」とだけ返信が来たきり、流れはピタリと止まった。


 それから暫く西洋風の建物や景色をぼんやりと眺めつつ、里宮の忠犬さながらにベンチに寛ぎながら待っていると、突如、広場の中心あたりに二本の光の柱ができたかと思うと、光が消えたところに二つの姿が現れた。

 一方は頭上のキャラクター名が緑色に、一方は白色になっており、「ああ、フレンドになった人は緑色になるのだな」と静かに察した。

 その二つの姿がすぐにこちらの存在に気付くと、ベンチで寛いでいた俺に駆け寄るなり、俺の姿を見て謂れのない誹りを浴びせ始めた。

「SOUって、名前まんまじゃん!」

 まんまって、シンプルイズベストだぞ。AirRoyよりマシだ。

「もしかしてアオ、その冒険者姿って初期スキンじゃない? 何もいじってないの!?」

 調査なんだから、姿にこだわる必要ないだろ……。

「勿体ないなー。このゲームのキャラクター作成割と凄いんだぞ」

 知ってるっての。有賀はさわやか系って感じで、スポーツ系の現実とは程遠いよな。

「いいだろー、ゲームの中くらいよー」

 それに里宮も黒髪ロングの清楚系で来るとは意外だな。何処と無くみど……ないか。

「べ、別にいいでしょ! 私の勝手じゃない。ってか、ないって何よ」


 なんと言うか、容姿に関して別段文句があるわけではないが、二人とも姿が姿だから現実のそれを知っている俺の思考が、目の前の光景に拒絶信号を発している。

 その上、里宮の名前がSM〈様〉だというのは、もう触れない方向でいいだろう。

 有賀はまだ許容範囲だとして、里宮のこの妹に似通った端麗な容姿と強烈な名前から発せられるギャップと言葉に、現実の里宮を知らない人はどう思うのだろうか。

 興味がないことはない。いや、興味しかない。

 きっと、容姿を見て綺麗な人だと感じ、名前を見て不審に感じ、言葉を聞いて絶句するのだろう。

 俺なら、こんな清楚な外見と中身を見て、人間不信になること間違いないね。


「まあ、無事集まれたことだしさ、調査の計画はあるのか?」

「そ、そうね……。まずはこのゲームについて詳細を知らなくちゃいけないから、これに詳しい人と接触するのが一番だけど……」

「俺らは知り合いがいないからなー」

「それに、ここには人がいないようね」

 何せ俺はここで待っている間、誰も見なかったからな。


『──それは当然だねー』


 それは自然に、そして不自然な少女の声。その発生源と思しき後方へ振り返ると、ベンチの後ろの花壇の間からひょっこりと、ショートヘアの金髪の少女が顔を覗かせていた。


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