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抑えきれないワクワク感

人里離れた山奥に洞窟がある。

入り口は一つだが、中でいくつにも枝分かれしているその魔窟に

彼らはいた。

周囲には魔獣が生息し、この場所を訪れる者は

ごく限られた人物だけ。

命の危険を顧みず、この場所に来るには訳があった。

「本当にこれで良いんだろうな」

何度この言葉を口にしただろう。

洞窟のかがり火の中、入念に魔方陣を確認する人物に向かって

念を押す。

「間違いございません。

この魔方陣により、私がいた世界で最強の勇者の召喚も可能となります」

答えたのは、他の世界からこの地に召喚された魔王ランザ。

彼は確認を終え、静かに立ち上がった。

そこに依頼主の従者であろう人物が駆け込んでくる。

「あ・あちらの魔窟でも、魔方陣を書き始めています!」

これを聞いた依頼主が、慌てて言う

「はやく、早く儀式を!」

狼狽える姿を横目にランザは内心

(勇者召喚といっても、当たりもあれば外れもある。

くじのような物だというのに・・・。

知らないと言う事は、幸せなことだ)

そんな内心を悟られぬよう、ゆっくりと頷き

いつもより声のトーンを落とし、地の底から響き渡るような重々しい感じで

召喚魔法を唱える。

その様子を見ていた別の魔窟の客の仲間が、自分たちの部屋へと戻っていく。


「大変だ!」

慌てて駆け込んできた声の方を見ると、仲間が顔面血だらけで駆け込んで来る。

「誰にやられた!?」

警戒しながら彼を気遣う姿を見て、バツが悪そうに

「さっき、そこで転んで顔面をヒットした・・・。

だけどそんな事はどうでも良い!

あいつら・・・、魔王ランザが呪文を唱え始めたんだ!」

その言葉に慌てて後ろを振り替えったベイデが、首を抑えて蹲る。

どうやら筋を違えたようだ。

そんな二人にあきれながら、客の最後の一人ウイシュレが

真の魔王ベンザに訴えかける。

「奴らに後れを取るわけにはいかない。

どうにかならないだろうか?」

これに対してベンザが

「奴とは元々同じ世界で生きてきた同郷。

今日の奴の客のシステムもこちらで確認済みです。

あちらは今日、本域の召喚を行っているので術の発動まで

今しばらくの時間を必要とします。

もしお望みなら、手っ取り早く略式召喚と言う事も出来ますが?」

「それそれ!

それで行こう!」

即答したのは、顔面血だらけのザッカバ。

「解りました、では・・・」

そう言って儀式に入ろうとするベンザを制止し、ウイシュレが

「その前に一つ、教えてほしい。

本域と略式、この二つの違いが何なのか?

と言う事を」

この言葉を言った瞬間に、ベンザの恐ろしい眼光が三人を見据える。

息をのむザッカバとウィシュレは硬直し、身動きが出来なくなってしまう。

ただ一人残ったベイデは、それ以前に首が痛くて身動きが出来ない。

そんな三人を見てベンザが声を抑えて

「これは企業秘密のため、他言無用でお願いします。

本域と略式の違い。

それは雰囲気でございます。

せっかく高いお金を払っても、瞬時に召喚された勇者に有難みがありますか?

要はそういう事です。

ただ、この事を他で口外しようとした場合は私の呪いによって

命を失うのでご注意ください」

この言葉と共に、軽く指先を地面に向けた。

すると瞬時に魔方陣が現れる。

そして二言、三言呟くとその魔方陣から何かが浮かび上がってくる。

威圧から解放された二人の目の前に現れたのは

魔王ランザ、そして真の魔王ベンザがいた世界の勇者

その血を引く者の姿だった。

「成功です!」

この言葉に思わず歓声を上げる依頼者の三人。

そして真の魔王ベンザも、何百回ぶりに引いた当たりの勇者に

少し目頭が熱くなる。

この様子を観察していた魔王ランザの所にいる客の従者が

急いでその事を主人に伝えた。

「何故だ?

どういうことだ?

間違いではないのか?」

料金に見合った演出を、というランザの重厚だが中身のない儀式は

引き続き行われていたが、客であるルドアの、もう盛り上がれない感

を察知して、呪文を四割ほど残した状態で切り上げた。

するとそこに書かれた魔方陣が輝きを増し。

二人の人物が召喚される。

召喚失敗と思っていたルドアの瞳に再び希望の光が宿る。

頬を紅潮させ期待に満ちたルドアを横目に

昨日すごい勇者を召喚したから今回は外れだな。

と心の中でルドアを憐れむランザの姿があった。

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