運命の時
インターネットの掲示板で知り合った少年。
ポラリスと初めて顔を合わせる日。
彼女は少し早めに家を出て、バスに乗り
目的の駅まで向かっていた。
そのバスの中で、過去に何度も味わった
ある種の胸騒ぎが湧き上がってくる。
このままバスに乗り続けていては危険だ。
そう判断した彼女が「次・降ります」ボタンを押す。
停留所に止まった瞬間に乗って来たのは、顔を隠し
皮のライダースーツに身を包んだ怪しいコンビ。
後ろ髪を引かれる思いで足早にバスを離れる。
「待て!」
背後から聞こえる何者かの声。
聞こえないふりをして意識を背中に集中させ、歩みを早める彼女に
「危ない!」
追い打ちをかけるように再び背後から声がする。
弾かれたように前に向かって走り出した彼女
その眼前には、ポラリスを撥ねたトラックが迫っていた。
激痛によって失われゆく意識に中、今回も
結局避ける事は出来なかったな、と思っていた。
そしてこれがこの世界での、彼女の最後の思考となる。
目が覚めた彼女がいた場所は、既に今までいた世界とは違う空間。
ふわふわで安定感の無い場所に横たわっていた。
大きく伸びをして、最初に思った事。
それは、また初めからやり直しか。
と言う感想だった。
幾度となく繰り返してきたこの状況に、今ではもうすっかり慣れてしまった。
「さて、それじゃぁそろそろ行きますか!」
何気なく出たその言葉に、背後から
「行く?
って何処へですか?」
その声に驚き、飛び退く彼女のイメージとは裏腹に
腰が抜けて、へたり込んでしまう。
そんな彼女を心配そうに見つめるポラリス。
そこで初めて顔を見合わせた二人が、互いに驚きの表情をする。
束の間の沈黙に彼女が
「初めまして、宮本由美です」
とりあえず、とって付けたように自己紹介をする。
対するポラリスも
「す・鈴木ポラリスです。
待ち合わせ場所、ってここでしたっけ?」
と答えた。
その後は、しばらく各々の状況などを話し出した。
そしてその話が終わる頃、由美の体も動くようになっていた。
そんな彼女が、もう一歩踏み込んで話したのは
自分が転世界常習者である、と言う事。
しかも今回の転世界にポラリスが巻き込まれ
今までこんな事が無かったので驚いている事などを話す。
「もしかしたら、これから行く世界は
私一人の力では、太刀打ちできないのかもしれない」
今まで巡ってきた世界で、その世界の根幹を揺るがす原因を排除してきた彼女。
前回の世界は、何度かに一度は何もしなくて良いと思われる
一回休みの世界だった。
そう思っていたのだが、実はポラリスを連れ出す事が目的だったのだろうか?
「貴方が嫌でなければ、私と一緒に来て欲しい」
ここに置いておくわけにもいかないだろう。
自分がいれば、いつか彼を元の世界に戻すことができるかもしれない。
その思いが言わせたのだったが
「元々、そのつもりですよ」
というあっさりとした返事が返って来る。
こうして二人は連れ立って、新たな世界へと足を踏み入れていくのだった。




