記憶の濁流
ミリアに問いかけたタミュア。
元々、解っていたことだが、彼女はミリアだ。
彼女がミリアだった時の記憶に用は無い。
やはり浅い記憶ではなく、もっと深層に向かわなければならない。
ここまではタミュアの予定通り進んでいる。
事前の打ち合わせ通り、デティートにサインを送った。
特に変化が現れないまま、様子を見ていると
突然、彼女の記憶の崩壊が始まる。
実際には、ミリアの記憶に入り込んだタミュアの存在の崩壊だったが
彼にとって、そこはあまり重要ではなかった。
歪む空間に状況を把握しようとするが
立て続けに起こる事態に混乱は避けられない。
ミリアの記憶の中で自我を維持している自分に
襲いかかるのは、彼女の防衛本能なのかもしれない。
突然、剥ぎ取られる背景。
最初に青空を失った。
その次に、海が消滅する。
暗黒の背景に輝く太陽は異様な風景だった。
しかも、海が消え去り、漆黒の世界を漂う船上でも
潮の香りと波の体感は失われていない。
このままでは彼女の記憶の中で漂流してしまう。
出口を探さなくては!
なりふり構わず船室の扉を開け、脱出を試みるが
その全てが、彼女への入り口。
ただ、記憶の断片に移動するだけのの扉ばかりだ。
そんな中、かすかに違和感のある記憶を見つける。
ごく新しい記憶。
彼女が図書館にいる時、トッチーが何か力を使ったようだ。
付箋と言うただの印。
こんなことでもなければ気が付かなかっただろう。
自分とミリア以外の能力。
これを楔にして記憶から脱出するため
付箋を剥ぎ取ったその時
膨大な記憶の激流が、タミュアを押し流していった。




