記憶の入り口
何の疑いもなく、デティートに導かれるままこの城に入ったミリア。
彼女に対して、肩書とこそが信頼するに足る証明だ。
そこに待ち受けていたのは意外にも、この国の中枢に近い者の家紋を付けている。
これだけでミリアの鼓動は高鳴り、ようやく自分が認められたと感じていた。
実はこの感覚、勘違いではあったが間違ってはい。
ただ、彼らの求める物が今の彼女ではなく、過去の彼女にあると言う事。
そんな彼女と共にこの城に連れてきたタミュアがデティート共に
案内したのは、豪華だが少し古い感じのする客間だった。
そこでミリアにソファに座るように促す。
彼女が腰を下ろすのを待っていたように、部屋に使用人が現れ
お茶のセットと、怪しげな壺を置いて行った。
壺に心惹かれる彼女に対して、お茶を入れて勧めるタミュア。
気が付けばデティートの姿が見当たらない。
使用人と共に出ていったのだろうか?
そんな事を考えつつ、勧められるままに茶を飲むミリアが
その後、僅かな間に意識を失う。
ただ、彼女の呼吸に異常は無く、眠っているだけのようだ。
そこに何やら小袋を持ったデティートが戻ってきた。
「薬が効いたようですね」
彼の言葉に無言で頷くタミュアは、デティートに手を差し出した。
返事をしないタミュアに少しムっとしながらも、無言で小袋を渡す。
封を解き、袋の中身を壺に一つまみ。
壺からは蒸気のような、もしくは霧のようなモノが湧き上がり
周囲が見えなくなってしまう。
しかし、それはさほど長い時間ではなく
十~十五秒程の短い時間。
やがて視界が開けてくると、そこは客間ではなく
船上だった。
青空と海に照り返す太陽の光で思わず目を細めるタミュア。
「さて、どこにいるのか?」
自覚せず、そんな独り言を呟いた彼は
彼女の記憶の中のミリアを探し始めた。




