分かれた大陸、砕けた王冠 2 「はじまり」
超大型の台風がペペロン地方を襲う。
あまりの強風に、作物家の影響を危惧したサーナダは
夜間にもかかわらず、雨具を付けて外へ出る。
六十二歳の彼は、人生五十年、と言われている平均年齢をはるかに超えて
未だ現役の農夫だった。
家を出る時には
「畑のが気になるから、様子を見てくる」
とだけ告げて、足早に畑へと向かう。
様子を見て何になる?
何か対策が打てるのか?
おとなしく家にいて、嵐が過ぎるのを待てば良いじゃないか!
家族の静止も聞かず、出ていった彼は
案の定、生死不明になってしまう。
一メートル先も見えない豪雨と、強烈な風が彼を襲う。
(もう少しだ、もう少し行けば畑が見える)
痛みを感じる程の雨を受けながら、心は使命感に燃えていた。
あの角を曲がれば、畑の全貌が見える。
足取りは更に早くなる。
そして、角を曲がると、さっきまでの暴雨風雨がぴたりと止んだ。
台風の目に入ったのか?
そう思って周囲を見回すが、何も見えない。
いや、少し先にほのかな明かりが見えた。
明かりを求めて足早に近づく。
そこには奇妙な生き物がいた。
恐怖を感じて引き返そうとするサーナダに、それは言った。
「ようこそ」
言葉を聞いて、いや、その声の圧力に体が硬直し
身動きが取れないサーナダ。
その様子を見た生き物が少し嬉しそうに、言葉を続ける。