物語の脇道
ミリアの記憶に潜り込んでいるのは、デティートではなく
彼と共にミリアをこの地に導いた初老の男性。
その名をタニュアと言った。
拠点となるのは、原生林が茂りまくる辺境の地。
そんな場所にあえて拠点を構えたのは、唯一
家賃が安かったからだ。
この世界で魔王を名乗るなら、それなりの雰囲気を醸し出さなければいけない。
魔王を目指す者が一度は通る道。
定番、定石、お約束。
魅力的な条件を全てを兼ね備えた物件が、この格安賃貸魔王城だった。
ただし、未だかつてこの城に長期の定住者がいない。
その理由は、あまりの前人未踏ぶりと
店子の力不足が原因だった。
この城に入った魔王は、訪問者をひたすら待つ。
ところが、これと言った実績が無い魔王である。
そう言ったことに加えて、交通の便が悪い辺境だ
という不幸な要因が重なり、勇者はおろか、神官や
人間の討伐隊が姿を現すことも無い
そればかりか、この地域では危険な魔獣や他の魔王ですら
あまりの立地の悪さに敬遠して、姿すら確認することが出来ない。
このような土地で、初めて一国一城の主(賃貸だが)に憧れた
魔王が夢破れ、挫折するのにさほど期間はかからない。
ミリアが連れ去られたのは、そんな場所だった。




