不審者
ミリアが去った事を確認したかのように
その場の空気が変わった。
グリクがいる場所は、一般人の閲覧できる区画。
現れた悪意ある存在、姿は見えないが
確かにそこに存在している。
感知できない敵に対峙して、グリクの全身に鳥肌が立つ。
その正面に突如現れた人物。
敵の姿を見たことで、グリクに少し余裕が生まれた。
彼の前に現れたのは、この図書館で司書をしているペンティアだった。
どうやら敵は傀儡使い。
それが解っただけでも、大きな収穫だ。
後はペンティアの心を操っている本体を拘束すれば
今夜の騒動は、それで終わる。
先程の緊張が嘘のように余裕をもってペンティアに対峙する。
精神攻撃、と呼ばれる攻防に関して自他ともに認める能力を持つ。
その「三花」のグリクに出会ったのが敵の不幸だったな。
内心で、そう思いながら、ゆっくりとペンティアに近づく
その途中で微妙な違和感を感じたが
そのまま距離を詰める。
後から思えば「慢心による注意力の欠如だった」と本人も認めているが
この時は未だ、気が付かない。
ペンティアの正面に立ったグリクがその瞳を見る。
この行動は、そこから傀儡使いの精神の捕縛を行うためだ。
幾度となく繰り返してきたその「作業」ともとれる
グリクの技が、今回に限っては、通用しない。
ここでようやく、ただの図書館の護衛に
自分が選ばれた理由を理解した。