撤退
トッチーの攻撃により、賊の一人が行動不能になったようだ。
だが、それだけで満足しないミリアが、追い打ちをかけるように
咳払いをする。
それに反応したスルクスが、短剣を振りかざし
少年に向かう。
正面から迎え撃つルンケア。
互いに正面から対峙し、体の大きなスルクスが圧倒している。
背後から見ているミリアには、そう見えた。
だが実際は、二人による「それらしい」演出。
この場をどう治めるか?
攻防を演じながら、小声で相談する。
「恐らく、貴方たちの求める物は
ここにはないと思います」
少年の風貌だからと言って、見かけ通りの年齢とは限らない。
その時のために、どんな時にも丁寧に話しかけるスルクス。
対するルンケアも、薄々感じていたのだろう。
「そんなことだろう、と思っていました。
しかし、私たちも組織の一員として、無理だった
という報告をする事が出来ません。
ここはあなたたちの顔を立てる為に、一度撤収します。
けれど我々の時間も限られています。
ですから今夜、もう一度ここに現れた時。
その時は、私たちの顔を立ててください」
緊張する空気感を醸し出しながら、お互いの思いを吐き出した二人に
ある種、コラボ的な共感が生まれる。
微かに頷くスルクスを見届けた賊の三人の行動は早かった。
バッファがミリアに対して幻術を使う。
スルクスとトッチーに使わなかったのは、彼女に対して
害意が無いことを証明するためだ。
幻覚の中では激しい攻防が繰り広げられているのだろう。
彼女の握り締めた拳が、ふるふると震えている。
そんな彼女を尻目に、三人の賊は去っていった。
スルクスとトッチーは、彼女が幻覚から覚めるまで
その場で待機するのだった。




