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龍涎堂

古びた木造の街並み。

それは王城から城壁へと向かう大通りを外れ

城壁の高さのせいで日中の数時間しか日の当たらない

そんな場所に、その店はあった。

外観はその建物が過ごしてきた時間を視覚で感じられるほど

古ぼけ、看板の文字は風雨に晒され既にその色を失っている。

それでもそこが目的の店だと分かるのは、文字が僅かに浮き彫りにされ

「龍涎堂」

の文字がかろうじて読み取れるからだった。

その店に急ぎ足で入って来る一人の中年。

名はデティートと言い「六家」に仕事の依頼をした所

フレイブという人物を紹介される、彼にとって

「六家」直属の人員でないのは不満だったが

依頼を断られることを恐れ、指示に従っていた。

ただ、フレイブなる人物は所在不明で、そのの立ち寄り先を

探し回っている最中だった。

尋ねること数十人、訪れること十数件。

もしここにいなければ、他の大陸まで探しに行かなければならない。

最後の希望ともいえるその場所にようやくたどり着いた。

青空と輝く太陽、そして小鳥たちの囀り。

デティートは確信する。

いる!

彼、フレイブはここに必ずいる!!

っていうか、居て!!!

いなければ、過酷な放浪の旅が決まるんです、お願いします!!!!

万感の思いで扉をくぐるとそこには

真っ暗で何も見えない。

店内の薄暗さは、しばし彼の視力を奪う。

次第に目が慣れると、店内に二人の男が座っているのが見える。

あとは、本が数冊置いてある本棚が五つほど置いてあった。

二人の男性の内、一人はガタイの良い中年で

カウンターのようなテーブルの向こう側にいた。

もう一人は小さな老人で、テーブルのこちら側。

店の入り口に近い場所に座っている。

二人?

たった二人しかいない。

デティートは意を決して問いかける。

「フレイブ、という人物を探しているのだが?」

突然の訪問者に、不躾な質問。

この時点でデティートがそういう位置にいる人物とわかる。

「フレイブさんになんの用だい?」

老人が問い返す。

その答えを幾度となく聞いていたデティートが

最後の望みを絶たれ、その顔から生気が失われた。

彼の変化を見て気の毒に思ったのか、もう一人の男性が

言葉をかける。

「仕事の話か?」

思わず頷くデティートに、老人が再び声をかけた。

「良い話なら、伝えといてやる」

僅かな望みをかけて、仕事の内容を話してしまう。

その内容とは

王立図書館に賊が侵入し、かろうじて撃退したものの

賊は目的の達成に、再び訪れるだろう。

それを阻止すべく、チームを編成する指示があった。

と、ここまではよくある話。

さらにこの依頼には、その中に王国の貴族による都合が含まれていた。

デティートに要求された人物。

それは、「六家」もしくはそれと同等の知名度。

仕事の内容は案山子。

この条件で「六家」に仕事の依頼を行った時

対応した六家の人物に、微笑みながらフレイブを紹介された。

全てを話し終えたデティートは我に返り、後悔する。

その表情を見逃さなかった老人が

「大丈夫、儂がフレイブだ」

そう言った後

「話は聞いている、適任者を手配している所だ」

その言葉を待っていたかのように店の扉を開いて入って来る者がいる。

そこには、久しぶりに帰郷したスルクスの姿があった。

三人の視線を浴びて戸惑うスルクスを横目に

龍涎堂の主人、カウンターの対面に座っていたキズヌが

「どうやら丁度来たようだ」

そう言って笑みを浮かべた。

スレイブは状況のわからないまま一人、立ち尽くしていた。

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