脱線
場所は再び図書館。
味方の揃った所で、少々わき道に話が反れてしまったが
スルクスとトッチーは特に問題なくスフィアに受け入れられた。
こうなると腰巾着のバ-ネロだけでなく、任務未達成のミリアも
従わざるを得ない。
ただ、ミリアには新人ながらスフィアの力に対する不安を感じていた。
駆け出しの自分はともかく、師匠であるグリクの実力は
広く認められている。
今回の敵は、そんな師匠が相打ちと言う結果になるほど強さを持っている。
ところがその事に対して、スフィアの危機感が感じられない。
そのうえ、六家の名を借りた下請けの伝承者と刺青の怪しい男。
こんなメンバ-でグロリオサの刺客と戦わなければならない。
自分だけは最善の対応をしなければ、全滅もありうる。
彼女は頭の中で可能な限りのシュミレーションを行う。
ところが幾度繰り返しても、今の状況では敵に蹂躙されてしまう。
そんな事を考えている間に、自分以外の者たちは打ち合わせを進めていたようだ。
同じ空間にいながら、彼女の心は別の世界を彷徨っている。
「・・・という段取りでいきたいと思うのですが、何かあればお答えします」
ふと我に返った彼女が認識できたのは、その言葉だけだった。
もう一度、お願いします。
失敗を負い目に感じている彼女にとって、その一言を発することが出来なかった。
そんな彼女の表情を見ていたトッチーが、何かを察したのか
「えっと、すいません。
結局、何がどうすれば良いんでしたっけ?」
付録、という立場で参加した彼にとって
失言でその立場を追われても、特に影響がない。
そんな立場を使っての発言だった。
その言葉を聞いたバーネロがトッチ-に対して
露骨に侮蔑の表情を浮かべる。
それを見たミリアは、招かれざる無能の反応に安堵しながら
「彼には少し、難しい話だったようです。
申し訳ありませんが、もう一度お願いできないでしょか?」
そう言って、スフィアに笑顔を向けるのだった。




