分かれた大陸、砕けた王冠
この大陸は太古の昔、一つの大きな大陸だった。
その時、そこはプリペアド大陸と呼ばれていた。
大陸で生活していたのは、獣人の種族。
平穏な暮らしに争いのない生活。
あるのは、生命維持の為の食物連鎖だけだった。
ところがそこに、価値観の異なる種が現れた。
彼らは当初、大陸の一部地域
海沿いからその近隣の小さな島にかけて
数年に渡り、同族同士の争いを行っていた。
しかしそれは、ある一人の男の存在によって終わりを告げる。
その鍵となった男性は魅力的で、彼に好感を持つ者たちが
周囲に集まっていった。
そして男性をいつしか、最初の一滴」と呼ぶようになり
彼の周囲に集う者たちを「王冠の滴」と呼ぶようになる。
やがて彼らは大陸を自らの物にする為に、獣人達に戦いを挑む。
長い戦いの末、人間は勝利を収める。
その時すでに初代の王冠たちの姿は無く
彼らの意志だけが受け継がれていた。
受け継がれる意志。
それがただの幻だった、そう気付かされたのは
後に長い年月を経て、大陸に新たな脅威が現れたから。
ただ脅威、と言ってしまうのは大げさなのかもしれない。
簡単に言えば、ただの過ち。
これを幾度となく経験し、後悔し、反省してもなお、再びそれは繰り返される。
平穏な時代、王冠の大陸として統率され、その庇護のを受けての生活。
そんな時代でさえ、人間は自己の満足のために
理性という強靭な枷と、良心という難攻不落の檻を破壊して
信念という何者にも倒す事が出来ない、無敵の存在に取り憑かれる。
最も恐ろしいのは、それを自覚していないと言う事。
そんな狂気が生まれ、影響を与え始めている。
この状況を象徴するかのように
元は一つの大きな大陸が、年月と共に六つに分かれ
その大陸を表すかのように、王冠も崩壊していった。